ソロは後始末を任せる
非常につまらん時間を過ごしてしまった。
前のゲームであれば属性や形ごとに弾き方や流し方が多く楽しめたが、まだそこの知識がなく、なんとなく弾き返そうとすると本能的に避けてしまう。
最初の光線や先程の火球がまだ弾けないと体がそう応えたのだ。
であれば、弾く方法、流す方法を探すか、最初から無視するしかない。
などと考えていると何処かに隠れていた火の精霊が死体に近寄り、胸から出た魔石を触ると光り始めた。
「“封じし力を解き放ち 元のあるべき姿へ 我は望みし彼の者の名は ■■■■■■■”!」
最後の方がノイズが入って聞き取れなかったが、どうやら火の精霊が閉じ込められているのを解放する呪文?のようだ。
光が強くなり、しばらくするとその光の中から人型の姿が現れ、光が収まっていった。
「…ふぅ…」
「■■■■■様!」
「…その声は■■?■■■なのね?」
「■■■■■■様…良かった……良かった………」
「ごめんなさいね…でも、ありがとう…」
羽根の生えた100cmくらいの子供が手のひらサイズの精霊を大事に受け止めて体を寄せ合った。
そしてアナウンス音が入る。
『パーティ名[災害王と自称右腕]がワールドクエスト[火の精霊姫の奪還]をクリアしました。』
『今後、ボス[合体種:欲炎のギレイ=マルサス]の再戦時は規定のエリアで再戦チケットをご使用下さい』
『今後ともサムスタフの世界をお楽しみ下さい』
「感動しますねぇー、ハンカチ入りますか?」
「ボスドロップはそっちにやるから阿呆な事言ってないでさっさと仕事しろ」
「これは失礼致しました、コホン…あー、感動の再会の途中ですが宜しいでしょうか?」
「え?」「あ!■■■■■■様!この方達が■■■■様を助ける手伝いをしてくれたんです!」
「そうだったのですね…真名は明かせませんがカラッカ湖の精霊姫です、今回は助けていただいて心より感謝致します」
「本当にありがとね!」
そう言って2人?がお辞儀をして感謝を示した。
種族間での変な感謝じゃないだけ良かったと思った。
「いえいえ、精霊姫様がご無事で何よりです。
申し遅れました、私はヘルメースと申します、以後お見知り置きを」
「俺はプレイヤーのエイン、すまないが帰って寝るから後のことはヘルメースにでも聞いてくれ、ではな」
「え、あの「お疲れ様でした、我が王、申し訳ございませんがお気になさらず」で、ですが」
「我が王は貴方様のその配下に寝ている所を突然起こされ、無理矢理協力させられたため十分な睡眠を得られず虫の居所が悪いのです、これ以上我が王を留めるなどと言う愚行はなさらぬよう…もちろん報酬などは後ほど私がお届け致しますので安心してください」
後ろから聞こえるヘルメースと精霊姫の話が徐々に小さくなり、完全に聞こえなくなったのはトンネルを抜けた頃だった。
門は閉まっているから、前に課金しておいた〔転移石〕を使用する。
インターフェイスから選択して行く場所を選択し、確認ボタンを押すと一瞬で景色が変わり教会の長椅子の間にいた。
誰も居らず、出口に向かい外に出ると月はもう真上を越えていた。
ゲームだから昼夜問わず、そして大小様々なクエストがあって今回のような重要度が高い緊急クエストはこなしたが何度も経験したくないものだ。
まあ、他のプレイヤーが先程の戦いに万が一負けて、阿保の計画が実行されるよりマシか…。
まだ他のプレイヤーの戦いをじっくり観察する事がなかったし、この際、北に行くついでにPvPイベントで観戦するのも良いだろう。
宿に戻るが誰も起きて居なかったので静かに部屋に戻って、ベッドに入る。
……少し外で戦闘したのもあって血が少し臭う…。
そういえば、課金アイテムの中に下着からコスチュームまであったし、寝巻きや普段着を買っても良いが…そうなるとアイテム欄も課金するか……まあ、あまり急がずゆっくり考えるとして今は寝よう………。
精霊について少し補足
■の部分はプレイヤーごとにノイズの長さや精霊の口の動きが変わります。
ゲームの設定上、精霊は精霊の意思で契約するのですが、名前さえ知っていれば強制的に契約できてしまうため、神(運営)が精霊を悪意ある者から守るための措置です。
なお、契約後につけた名前では強制的な契約は出来ないので一般的な名前の効力では、真名>契約時の名前となります。
課金アイテムについて
消耗品から見た目装備、そして家具など様々なモノがあり、もちろん強力な効果があるものはない。
なんならゲーム内でドロップする物や職人に頼めば届くモノなのだが、殆どが買ってから2週間後に届く仕様。
見た目装備や家具はほぼ現実と変わらないような値段で売っている。
なお、転移石は10個セットで100円である。
感想、評価などありがとうございます。
次回もゆっくりお待ち下さい。




