ソロは労働者となる その2
次の日、昨日と同じくらいの時間に起きて新聞を待つ。
「あ、お兄さん」
「ああ、良かった。新聞を頼むよ」
「まだ定期契約されないんですか?」
「昨日行こうと思ったけど色々あってね、はい20Z」
「そうでしたか、では」
「ああ、新聞ありがとう」
少年は駆け足で新聞配りの仕事に戻って行った。
俺も自分の部屋に戻って新聞を開く。
[ウラミツサーカス開演のお知らせ]
開催期間:5月17日〜5月23日
入園料:大人400Z 子供200Z
大人も子供も楽しめる不思議な世界へご招待!
皆さん是非お越しください!!
[盗賊団出現!情報求む!]
王都近辺に盗賊の被害数件
被害拡大を防ぐため情報求む
何か知っていることがあればお近くの衛兵まで
[ノーディシス帝国の神殿にて神託が]
前回大会優勝国であるノーディシス帝国の神殿より戦の神から神託があり、内容は「プレイヤー達よ!次の祭り事は帝国のコロシアムにて最強決定戦を開催することをここに宣言する!」とのことである。
ふむ、最後のはどう考えてもイベントの告知だろうが、まだプレイヤーのお知らせには届いてないか…まあ、興味ないから良いか。
さてと少し早いがさっさと仕事にでも行くとしよう。
ついでに朝昼の食料を買っておくか。
昨日と同じ露店がないか探しているとちょうど仕込みをしているようだ。
「おはようございます」
「ん?ああ、兄ちゃんか、ちょっと待っててな」
「分かりました」
そう言って奥に行って少しすると昨日言っておいた量持ってきてくれた。
「はい、これで良いかい?」
「…そうですね、朝早くからすみません」
「良いんだよ、少し多めに貰ってんだからこんぐらいサービスだよ。じゃあ、お仕事がんばんだよ!」
「はい、頑張ってきます」
食料をアイテム欄に入れてから、ミダロス山へ向かう。
昨日より早く来れたおかげで、朝礼の時間より少し早めに着いた。
小屋を覗くと親方が作業していた。
「おはようございます、親方」
「お?おお!今日も来てくれたか!」
「はい、それよりそれは?」
「これか?これはな、昨日オメェさんがオオカミが居たって聞いたからなちょっくら獣避けの守りを作ったんだよ」
「獣避けですか…臭いとかないんですね」
「まあな、流石に臭いがあるとオメェのような獣人種にはキツイからな…そういやぁ、オメェさん昨日商業組合に給料取りに行ってねぇだろ?」
「え?」
「え?じゃねぇよったく、オメェさんが取りに来ねぇから預かってきたんだよ、ホレ」
「おっと…あ、ありがとうございます」
「おう、これからは気をつけろよな……っとそろそろ朝礼始めっから行くぞ」
そう言ってお守りを片手に小屋を出る。
商業組合に取りにいかないといけないのか…商業組合ってどこだろうか?とりあえずウルカレに聞くか。
「知らなかったのか…すまんな昨日連れて行きゃぁ良かったぜ」
「いえ、聞かなかった俺が悪いんで」
「まあいい、とりあえずそう言うことなら今日の風呂屋行った後にでも教えといてやるよ」
「ありがとうございます………後ついでに聞きたかったんですが」
「?なんだ」
「これってなんで掘ってるんですかね?」
「………( ゜д゜)」
ウルカレが作業の音が聞こえなかったので見てみると、唖然とした顔でこっちをみて居た。
「…は!いやいやいや、お前なぁ…」
「なんかすみません」
「…いやまあ、お前はプレイヤーだったな。
良いか今やってるのはノーディシス帝国への商業路用トンネル作ってんだ」
「ノーディシス帝国…確かなんかの大会で優勝した国ですよね?」
「ああって言ってもお前らプレイヤー同士が競い合って所属していた国がノーディシス帝国だったってだけだがな。
まあ、前から山を迂回するか直進するかしか商業路がなかったし、どっちの道も危険が多かったのもあって商業組合が重い腰を持ち上げたってところだ」
「なるほど」
「まあ、これが完成すれば、ノーディシスまでの道のりも楽になるしな」
「そうなんですね」
相槌を打ちながら、つるはしで岩を掘る。
にしても単純な作業だが結構いいトレーニングになる。
主に腕と腰、そして脚に負担が掛かり体力をつけるのにもうってつけだ。
そんなことを考えながら仕事に打ち込む。
いつもの親方の号令で今日の仕事を終えて、ウルカレと共に行動する。
風呂屋に行った後、中央の方まで歩くとそこそこ大きな噴水と時計があった。
「んで、あれが商業組合の建て物だ。
今やってる仕事とかの求人もあの中にあるから、今の仕事が終わったら探すといい」
「なるほど、ありがとうございます」
毎回新聞に載っているわけじゃないから知っておいて損どころか得しかない。
中に入ると様々な人が列を成していたり、ボードの前で何かを見ている。
「んでだ、今あそこに並んでる列が求人での報酬受け取りの場所で、あっちのボード近くにある受付が求人用の受付だ。
他に知りたいことは?」
「特にないですね」
「よし、じゃあ行くとするか」
ウルカレの後ろに並んで少し経つと列がどんどん前に進みウルカレの番になる。
ウルカレはポケットからカードを出すと職員が確認して袋を渡された。
そして自分の番となる。
「おつかれ様です」
「すみません、新聞の求人から来て昨日から働いているものです」
「あ、でしたらあちらの相談受付へ」
「分かりました」
職員が手で指す方に向かって受付の人に同じことを言うと
「ああ、昨日ヤカタさんの言っていたプレイヤーの方ですね」
「はい、エインと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。
私はプレイヤーの方々の対応をしているレイアと申します」
「よろしくお願いします」
「はい、それでですね、エインさんはプレイヤーの方では珍しく新聞からの求人でしたので対応が遅れましたことを初めに謝らせていただきます」
そう言って椅子に座ってだが頭を下げて少しして頭を戻す。
「いえいえ、親方から報酬は貰いましたので」
「はいそれにつきましてはヤカタさんから報告を受けてすぐに用意しましたので、今回の報酬を先にお渡ししておきますね」
そういうとウルカレが受け取っていた袋を俺も貰う。
すぐに入れると報酬額通りの金額を手に入れた。
「そう言えば、プレイヤーがこう言う求人を取るのは珍しいんですか?」
「そうですね、私が聞いた話ではありますが殆どのプレイヤーの方々は主に傭兵組合か産業組合の方に登録する方が多く、商業組合登録する方もいらっしゃいますがこう言った求人で働く方は私が知る限りだとエインさんだけですね」
「そうだったんですか、ちなみに俺も商業組合に登録しておいた方がいいんですか?」
「そうですね…エインさんが今後露店又は店舗の方を持つので有れば登録することをお勧めします」
「なるほど、まあ、多分ないですかね」
「そうですか…」
「ああ、そう言えば新聞の定期契約?をしたいのですが」
「あ、そちらでしたらこちらの契約書にサインを
ちなみに年額払いだと5000Zで月額払いであれば毎月500Zとなります」
「あー、じゃあとりあえず月額で、サインはここで良いんですよね?」
「はい」
契約書にはよくある罰則について書かれているが、特に恐ろしいものはなかったのでサインをする。
「はい、それではこちらのカードを無くさず持っておいてください。プレイヤーの方だと〔身分証〕と合わせると統合されます」
言われた通りカード同士をくっつけてみるとカード同士が一瞬光って〔身分証〕だけが残った。
『称号:商業誌購読者を取得しました』
頭にそう響いたのと同時に〔称号〕の欄に
[身分証]
〔名前〕エイン
〔種族〕半獣人種(半平人種)
〔職業〕
〔称号〕商業誌購読者
と書かれていた。
最初の称号が新聞読者ってなんだかなぁ。
「ちなみにですが、商業組合がない村などにはシラセドリが毎朝届けに行きますのでご安心ください」
「分かりました、色々教えて頂きありがとうございます」
「いえいえ、何かお困りの際はお呼びください」
「はい、ありがとうございます」
席から立って商業組合を出る。
今日はお金に余裕があるし、前に見た料理店にでも行くとしよう。
食事を終えて宿に戻って横になる。
そこそこ混んでいたが、それに見合う美味しい料理だった。
さて、明日に備えて寝るとしよう。
だいたいこのくらいの長さになります。
次回は少しだけ時間を進めていきます。
最後までありがとうございました。