ソロは下山する
帰り際にヤマビコディアもついでに狩って下山し、街に着いた頃には門がギリギリ閉まる前だった。
とりあえず少し魚臭いから風呂屋にでも行ってから組合に買い取ってもらいとしよう。
門が閉まるギリギリの時間帯だったからか人が少なくのんびりと入ることができてつい長風呂になったしまったが、今度リアルで温泉にでも行ってみたくなった。
そういえばこの世界にも観光名所とかあるのだろうか…王都では長く滞在しなかったせいでそう言った場所に行けていなかったなぁ。
と考えていたら商業組合に着いていた。
いつも通り受付に行ったがレイアさんではなく男性が居た。
「こんばんは、エインさんですよね?」
「ああ、そうだが、レイアさんは?」
「レイアは帰りました、私は深夜帯を担当しておりますマイクと申します」
「なるほど、俺はエインよろしくお願いします」
「はいこちらこそよろしくお願いします、して本日は何を?」
「昨日から釣りで釣れた…って言うか狩った奴の買い取りとヤマビコディアの素材も買い取ってもらいたくて」
「?かしこまりました、もしクーラーボックスに入れているのでしたら、そのままで構いませんのでお出しいただけますか?」
「分かりました、っと」
とりあえずクーラーボックスとヴァノガレイクの鱗と牙、そして魔石を出して、ヤマビコディアの素材も出して査定を待つ。
鱗などを出した時少し驚き、小さく「なるほど」と納得して手に取って見ていた。
「…はい、これでしたら全部で92400Zになります」
「分かりました、それでお願いします」
「かしこまりました」
「おや、エイン君ではないかー」
「こんばんは、シージ組合長」
気配から降りてきているのが分かって居たので、とりあえず金を受け取ってからシージ組合長と対面する。
「うむ、こんばんはだ、あと組合長なんて名前より長い肩書きは付けなくていいよー」
「では、シージさんで」
「うんうん、短くて良いねー、そうだちょうど良いから君の服のサイズを聞いておきたいんだが今大丈夫かなー?」
「はい、丁度用事も済んだので構いません」
「それは良かった、ある程度サンプルがあるから見ていってくれ」
そう言って奥にある階段から上がっていくのでそれに着いて行く。
2階にいって、すぐ右手の部屋に入るといくつか着物が掛かっていた。
「これらが獣人種用の礼服で、ズボンはこのタイプだねー」
「ほぉ、これはすごいですね」
「良い生地使ってるからねー、少し触ってみると良いよ」
そう言われて一つ触ってみると今着ているのとは段違いの肌触りだった。
「…いくらするんですか、これは」
「上下合わせて、30はするねー」
「30…そんな物を借りて良いんですか?」
「一応出品者だし、出るのであれば場にあった服が常識だからねー、もちろん気に入ったら、お金さえもらえれば買い取っても良いよー」
「…とりあえずオークション後にでも考えます」
「うんうん、それが良いねー」
とりあえず動きやすそうな物を選んで、試しに着てみたが、サイズはもう少し大きくても問題ないくらいではあったが、着心地は今まできた服の中の5着には入るレベルだった。
「うんうん、やっぱり男前だねー」
「ありがとうございます、とりあえずこれで」
「了解ー、サイズもピッタリだしーそれで良いかなー」
「はい、今日はありがとうございます」
「いいよー、君の狩ってくる素材で潤ってるからねー」
「それは良かった、ではこれで」
「それじゃあ、オークション楽しみにしててねー」
部屋を後にして組合を出て、宿に帰る。
すっかり暗くなってしまったが、今日も星が綺麗だ。
良い着物も着れたし、オークションが少し楽しみだ。
「よーやっと、見つけたわ」
そういえばまだ夕食食べてないが開いている店はあるだろうか?
確かオークのところは冒険者とか傭兵向けの店で遅くまでやっているっぽいし、まだ食べてない料理
後ろから近づいて肩を叩かれる前に軽く避けて少し間合いをあける。
「っと、よお兄さんそんな警戒せんでもええやろ?」
「知らない奴に警戒するなと言う馬鹿は居らん、俺は今から食事をしなくてはならないのだが、用があるなら出直せ」
「そないな冷たいこと言わずに〜また奢るからええやろ?
うちのボスももう待ってくれてんねん、な?」
「………………良いだろう」
「よっしゃ、それじゃ行きましょか」
非常に、非常に腹立たしいが、どうせ断ってもこう言う阿呆は何度でも絡んでくる。
とてつもなく面倒くさいがとりあえず阿呆の上司の下らない話でも聞くとしよう…はぁ……。
着いた店は様々な人種で賑わっており、深夜だと言うのに少し喧しいくらいだが、ここら辺は住居が少ない地域なのだろうか?
まあ、どうでも良い事を流して阿呆に着いていく。
「お!ジェスじゃねぇか!!こっちで飲もうぜ!」
「ムカカやんけ!こっち来っとたんか」
「おうよ!しばらくこっちでゆっくりすることにしてな!」
「そうやったんか、今は無理やが後でな」
「おうよ!」
店に入って数秒おきに阿呆は呼び止められ、俺も止まり、目的の席に着いた頃には入って10分くらいしたように感じた。
はぁ…少し軽率に行動してしまったことに後悔している。
「ボス待たせてしまったか?」
「……お前ちょっと席外せ」
阿呆にボスと呼ばれた筋骨隆々な男がチラリとこちらをみて、すぐに阿呆を下がらせようとした…が、
「そなご無体な〜ワイこいt」
「はよどっか行け!!!」
そこそこ分厚い机にヒビが入るほどの勢いで叩き大きな音を立てて下がらせる。
周りが野次馬の様にこちらを観察してくる。
流石にそれをされてか、少し不満げながらも他の奴らの席に紛れていった。
「…ふぅ、すまんな、座ってくれ、飯食った後か?」
「いや、丁度食べに行く所で呼び止められたからな、まだだ」
「そうか、それはすまんかった、タマカ」
「ご注文ですかニャ?」
「とりあえず今日のおすすめと…飲み物は酒でいいか?」
「水で良い、酒は好きではない」
「そうか…じゃあそれで、それとこれ机の修理代」
「はいニャ、かしこまりましニャニャ」
そう言って店員さんが厨房に知らせに行く。
それと入れ違う様に水が運ばれてくる。
「…あー、まあ、とりあえず自己紹介させてもらうぞ、俺はユガン、冒険組合のハンダロ支部支部長をやっている、さっきのバカはジェスだ、組合員が迷惑をかけて申し訳ない」
「…俺はエイン、プレイヤーだ……その謝罪は一応受け取っておこう」
「そりゃあ、ありがたい、アンタみたいな人種にキレられたら止めようがない」
「…まあ、キレても良かったが、万が一店の物を壊したら面倒が重なるだけだ」
「なるほど、確かに…気遣いに感謝する」
そう言って頭を下げて礼を言われる。
普通のことだが、それがわかる上司にで少しホッとした。
もしこのままこの場に阿呆が同席してたら反射で良くて瀕死にさせるレベルくらい腹立てていたからな………。
ちなみに阿呆 があの場で「こいつ」と主人公を指した場合は四肢の骨を折って二度と冒険者として働けない状態にするくらいには阿呆にキレ気味でした。
次回もゆっくりお待ちください。




