ソロは驚かれる
朝が来る前にはハンダロに着いたが、門が閉じており道を避けていくつかテントが建てられていた。
俺もテントを建てても良かったがもう月も沈み、あと1時間で門が開きそうだったのでテントを建てずそこら辺の木の下で荷物を置いて、仮眠する事にした。
幸い門周辺では魔物や動物が寄ってくる事は滅多にない。
人の気配が多ければ魔除けの道具を使わずとも除けていくようだ。
門が開きテントに入っていた旅人や商人が列を作り出したので、俺は一番後ろに並ぶことにした。
急ぎの用も眠気もないのでゆっくりするとしよう。
前の方が徐々に進む中、俺の前にいる大きなバックを背負った如何にも商人らしいが話しかけてきた。
「なあ、兄さん」
「…俺か?」
「そう兄さんよ、少し前くらいに急いで来たみたいやけど、なんか急ぎの用でもあったんかいな?順番くらい譲るぞ?」
「ああ、すまない、起こしてしまったか?」
「いんや、これでも農村育ちでね、習慣で早く起きちまうんだ」
「そうか、まあ、夜のうちにここまで着いておきたかったからな、特に用はない」
「そうかい…兄さんは冒険者かい?」
藪から棒に話を変えて来る商人に少し間を置いて応える。
「…いや、俺は冒険者じゃない、強いて言えば旅人だな」
「ありゃ、冒険者じゃなかったか…まあ、旅人でも良いか。
そう言えば俺はマンダナ、兄さんの名を聞いて良いか?」
「ん?ああ、俺はエイン、プレイヤーで旅人だ」
ほぉー、プレイヤーなら尚更ウチの店で旅の準備をすると良いさ、食器から簡易的な武器まで取り揃えて居る「カンカラ商店」どうぞよしなにってね」
「ふむ…」
そう言われても一応王都で野外活動用の物はある程度揃えて置いてテントから食器まで今のところ新品に近いし………あ
「マンダナ、1つ良いか?」
「なんでもどうぞ、大抵のものなら王都くらいにはあるぞ」
「なら釣り竿を買いたい、前に良さそうな場所があったは良いものの物がなく諦めていてな」
「釣り竿…なるほど、良いね良いね、エインは釣り好きか、俺も息抜きにやってるからなぁ…っと、もちろんありますとも」
「それは良かった…であれば店は何処だ?」
「店なら中央広場から東の通りを真っ直ぐ行けば看板がデカデカとあるから分かるが、どうせここで会ったのも縁だ、一緒に来るか?」
「そうだな……あ、いやすまない、その前に商業組合で狩ってきたモノを下さなければならなくてな」
アイテム欄が(デーモンベアとミソパエスベアで)一杯なせいで野外セットを手持ちにしなくてはならないほどだったのを忘れるところだった。
後でアイテム欄を課金するか、ゲーム内でアイテムバックを買うか考えなくては…まあ、アイテムバックは王都で(小(アイテム欄5))ですら20万Zもしたし、プレイヤー内部のアイテム欄であれば1枠1000円だしなぁ…。
「そうか…まあ、それなら店で待ってるから、いつでも来てくれよ…と言っても明後日にはまたここを出るがな」
「…忙しいようだな」
「はは、商人が忙しいのは繁盛の証拠ってな…っと俺の番か、来てくれよなエイン!」
「ああ、ではなマンダナ」
別れを告げて、少しして俺も荷物検査を受ける…が、
「?どうした?」
「…………」
手荷物を見せて水晶玉(どうやらこれに手をかざすとプレイヤーの内部アイテム欄が参照できるそうだ)に手をかざし、門番に聞くが、まるでとんでもないモノを見たかのような驚きようで俺と水晶玉を見る。
「…通って良いか?」
「え、あ、ははい!っどどどっっどどうぞおはははお入りくだださい!!」
「?ああ、ありがとう」
とりあえず手荷物を持って商業組合に向かう。
途中でいつもの出店があったので3つ買って朝ごはんにした。
商業組合はいつものように人でそこそこ溢れていた。
と言っても俺の並ぶプレイヤー専用レーンはいつも通り空いており、すぐにレイアさんに会えた。
「おはようございますエイン様」
「おはようございます、素材の買い取りお願いします」
「かしこまりました、それではこちらにどうぞ」
と言われていつもの少し広いカウンターにデーモンベアとミソパエスベアの素材を乗せる。
少しミソパエスベアの素材が大きいがギリギリ入って一安心したところで急に視線が集まるのを感じる振り返ると何故か全員こちらを見ていた。
「?」
「え、エイン様、こ、こちらの素材を、何処で…?」
「これですか?場所はウィロー村の近くの森ですかね、それがどうかしましたか?」
「………(゜ω゜)」
なんだろうか…この既視感は……そういえばヘッジザラゲストの時もあったような。
「しょ、少々お待ち下さい、私では判断しづらいので組合長を呼んで参ります」
「分かりました…組合長?」
疑問に思いながら、奥に行ったレイアさんを見送り、2分程で小柄な男性を連れて戻ってきた。
「申し訳ございませんシージ組合長、こちらの素材です」
そう言ってレイアさんがシージ組合長?に見えやすいように移動して行くと、シージ組合長が背伸びしてカウンターの上の素材に触る。
「エイン様、こちらはハンダロ支部商業組合組合長のシージ=マイケットです、シージ組合長、今回の素材を持ってきてくださったエイン様です」
「ほほーん、こりゃまたすごいの取ってきたねチミ」
「そうですか?まあ、それなら良かったですが…いくらくらいですか?」
「ったっはー、良いね良いねチミ、すぐに商談するのとっても良いね、そうだねー状態良いしあまり市場に出ないからねぇ、こっちの素材はすぐに出せるけど、こっちはすぐには無理かなぁー」
そう言ってデーモンベアを指さした後にミソパエスベアの素材を指さす。どういうことだろうか?
「このミソパエスベアの素材はねぇーここら辺じゃ珍しいから殆どが買い手が値段を決めるオークションに掛けちゃってからじゃないと色々とややこしくなっちゃうんだよねぇー」
「はぁ、オークションですか」
「そうそう、オークション。
ちょっと話長くなるけど良いかな?」
「そうですね…まあ、昼までに済むなら」
「あっはっはー、流石にそこまで長くないさー、さてあそこの個室で話すとしようかー」
そう言って個室の方に移動する。
初めてここの個室に入ったが中は10人くらいが入れるくらいには大きかった。
「さてと、オークションの話だけど、まず君が出した素材について話しておくね」
「?分かりました、お願いします」
「うんうん、礼儀が良くて気持ちいいね。
おほん、エイン君が出した素材のミソパエスベアなんだけどね、僕くらいになると魔物の中でも特殊な個体であることが素材を見て分かるんだ。
で、エイン君の持ってきたミソパエスベアがそれだった訳」
「特殊な個体だと何が良いんですか?」
「その疑問はとても簡単だね。
通常のミソパエスベアであれば、まあ、ここの近くにはないけどダンジョンにでも行けば出るけど、デーモンベアから変異したミソパエスベア、つまりは自然発生したミソパエスベアだとかなりの魔素を有していてね、放っておくとそれこそ周辺の魔物を支配して近隣の村々、場合によっては街、国ごと壊滅する程の被害を出す凶暴性があった訳だね」
なるほど、俺はそこまで強いと感じなかったが、実際の所ウィロー村の防衛力ではプレイヤーの助けがあっても厳しいそうだ…。
「でね、それほどの魔物の素材ってなるとそれ自体に付加価値が出て通常より高値で取引する様になっちゃうんだなー」
「そうですか、それでオークションですか」
「そういう事、まー僕の見立てでは安くても100はくだらないかなー」
「100」
「そうそう100…もちろん万って後ろにつくけどね、それにーこれくらいだとお偉いさんに褒賞金が出るんじゃないかなー」
「お偉いさん、ですか…」
「まーあー、僕の見立てだと領主のハンダロ公爵かなー。
まあ、そんな顔しなくても堅苦しい人だけど良い人だし、チミが望めば領主館に呼ばれて渡されるだけで済むんじゃないかなー」
少し顔を強張らせてしまったが、その言葉で少しだけ安堵はしたが、それでもお偉いさんに関わるのは億劫だ。
「…まーあー、今日の所はデーモンベアの素材分だけかなー、オークションは1週間後にあるから1週間後にここに来てくれてば一緒にオークション会場に行けるけど来るかい?」
行ってみたい気はするが、それは珍しい物が見たいだけであって特にそこに行けるドレスコードがないのだが、一応聞くとしよう。
「あー、オークションとかに合う服がないんですが」
「あっはっはー、それくらいならこちらでタダで貸し出すよー、チミみたいな礼節ある人ならこっちも歓迎するよー」
「ありがとうございます」
「良いって事ー、というわけでまた1週間後に来てね。
それとデーモンベアの買い取り金はレイアから貰ってねー」
それじゃあと言っても席を立ったので俺もそれに続いて個室を出て、レイアさんからお金を受け取る…。
「デーモンベアの素材ですが、前回と同じく魔石は通常より高くなって437600Zになります」
「ありがとうございます」
と言って少し重い音のする袋を受け取って財布に入れた。
ふむ…これならアイテムバックを買った方が良いか?
と考えながら商業組合を出て【カンカラ商店】に足を進めるのだった………。
筆 (じゃないけど)乗ったので連続 (で読んでいる人にはどうでもいい)投稿。
アイテム欄について
アイテムバックを収納するとプレイヤー内部アイテム欄 (以下インベントリ(にするかどうか未定))(小)なら4つ増えます。
もちろん取り外し可能ですが、課金の場合は永続的に1枠増えます。もちろん取り外し不可能です。
なお、最大スタック数は全アイテム99個までです。
次回も不定期ですがゆっくりお待ちください




