ソロは荒事を起こす
あの後何事もなく属性スライムを狩り続け作業も終わり、この調子で行けば2、3日で向こう岸まで橋を渡せるそうだ。
「つっても、そのあとにまた掘削作業だからな、また募集をかけるが来るか?」
「…そうですね、やりたい事がまだ見つけれていないので行きますよ」
「そりゃあ、良かったぜ!ウルカレが急に後輩が居なくなって寂しがってたからよ!」
そういえばウルカレにも何も言わずに王都に行ったからな、変な心配させてしまったかな。
「そうでしたか、そう言えばウルカレは?」
「あいつなら確か今は街で教会の屋根の修理してるってのは聞いたな」
「教会ですか?」
「ああ、俺も詳しくは知らんから聞きたけりゃ、また仕事ん時にでも聞いとけ」
「そうします」
帰り道をヤカタ親方と他の従業員、そしてプレイヤーで固まって帰っている。
…が、昼に感じた視線が減ってはいるがまだ1人残っている。
木を上手く乗り渡り、気配から足音、呼吸まで静かに動いているが、それでもまだ分かりやすく視線が残っていたのですぐに分かった。
位置までは完全に特定できていないが、それでも奇襲されても確実にカウンターを決めれるようには動いている。
相手はそれを分かっているのか、それとも俺以外が標的なのか姿を出してこない。
ふと、後ろのプレイヤーの動向を伺うと話し声が聞こえてきた。
「スライムも楽勝だったな」
「そうだねーこの依頼でランクアップもできそうだねー」
「もー、まだ依頼期間中なんだから油断しないでよね」
「油断じゃない油断じゃないって、これは余裕を作っていざって時に」
「余裕って、あんたバカじゃないの?余裕を作る暇がありなら効率よく戦ってよね、わざわざカッコつけて攻撃してもカッコよくないんですけどー」
「な、」
「あははー確かにねー」
「マオマオまで!?」
などと話し声が聞こえたが、もしかするとどっかの組合の監視役って奴なのか?
だとしても、こっちに視線が来る理由が分からん。
そうこうしながらも街の門が見えてきた。
いつも通りに門で確認をとってから風呂屋に行って体を洗い、商業組合で報酬とドロップ品を売った。
そうだ、ついでに聞いておくか。
「レイヤさん、今日来てたプレイヤーの中にどっかの組合から依頼を受けてきた奴らって居ますか?」
「え?そうですね…今日は冒険者組合から2グループ受けてますね…それがどうかしましたか?」
「いえ、ただ昼からこちらをずっと見ていた人が居てその冒険者組合のプレイヤーがランクアップ?って言っていたのを聞いてもしかしてその監視役かと考えまして。ただ、そうでないとすると面倒だなと」
「そうでしたか…なるほど確かに今日来ていただいたグループの中にランクアップ間近のプレイヤーが居ますね。エインさんの仰った通り監視役の方が同伴していらしたようです」
そう聞いて少しだけほっとした。
違っていたらヤカタ親方や他の人を危険に晒していたと思うと少し肝が冷えた。
「それにしてもよく分かりましたね、監視役は冒険者ランク上位の方と聞いていましたが」
「そうだったんですね、まあ勘ですかね、なんとなく見られてる気がしたので」
「そうでしたか」
「はい、わざわざお時間ありがとうございました、それでは」
「はい、またのご利用お待ちしております」
疑問を無くしてスッキリしたので席を立ち礼を言ってから商業組合を後にする。
外は夕日もなくなり月が登り始めてきた。
今日は何となく飯屋でゆっくり座って食べることにする。
昨日の帰りに良さそうな店を見つけていたので少しウキウキしながら店に行く。
店について中を見るとそこそこ席は埋まっているが他の店より落ち着いた雰囲気の定食屋だ。
店員さんがこちらに気づいて近寄ってくる。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「ああ」
「カウンター席かテーブル席がありますがどちらになさいますか?」
「…カウンター席で」
「かしこまりました、お好きな席へどうぞ」
適当に店の奥のカウンター席に座って注文表を見る。
[オーク肉の野菜炒め 790Z][焼オーク肉定食 700Z][オーク肉のステーキ 990Z]他にもあったがどうやらオーク肉の専門店のようだ。
どれにするか迷って、[焼オーク肉定食]を注文した。
オーク肉と言うのがどう言うのか分からない内は冒険せず、安い値段で味を知るのが一番いいと思う。
料理を待っているとわざわざ俺の隣のカウンター席に人が座る。
どう見ても空けるであろう場所に来るデリカシーのない奴が居るとはと内心ため息を吐きたくなるが、さらにため息を吐きたくなることが起きた。
「兄さん、この店初めてか?」
思わず舌打ちすらしたくなるが、店の雰囲気を壊したくないから適当に返事を返す。
「そうだ」
「やっぱりな、そうや、お勧め紹介しよか?奢るで〜」
「もう注文は済ませた」
「そうなんか?でもあんちゃんもしかして定食だけ頼んだんちゃう?」
正直言って店を出たくなった。
ヘルメースみたいな奴がこの世に2人と居るとは…。
こう言う類の阿呆は相手したくないが、生憎料理を頼んでしまったし、かと言って応えなくても喋る雰囲気を出している。
「…はぁ…」
「なんや、図星かいな、兄さんみたいな「黙ってくれないか?」えー、そな付き合い悪い事言わんといてーなー、ワイと兄さんの付き合いやろー」
完全に変な阿呆に絡まれた。
面倒この上ない性格で、さらに昼からずっとこっちを見てくる。
仕方ないからカウンターの向こうに居る店員さんにどうにかしてくれと目配せしたがどうやら無理のようだ……仕方ない。
「ワイのお勧めはなこの[オーク肉のス「死にたくなければ、用件を済ませるか、黙って食事しろ」…」
軽く脅して、相手の出方を伺う。
出来るだけ小さな声で他の客に迷惑をかけないよう努めた。
できれば荒事を避けて行きたいが…どうやらダメだった。
「なにゆーてんねん、用件はさっきから言ってるやんけ、この[オーク肉のステーキ]奢っちゃるって言ってるやろ?騙されたとおもて「店員さん、済まないが少し席を空けるがすぐに戻る」え、あ、ちょ、なんやねんいきなり引っ張っ…ッ!」
席を立って阿呆の頭を耳で掴んで引きずりながら外に放り込む。
さすが冒険者の上位?なのか着地はできていた。
「警告を無視するなら実行する」
「な!?ここ街中やぞ!?」
「そうだな、自分の招いた不幸は自ら受けろ」
「なんやと!せっかく奢って冒険者推薦しちゃろと思たけど、まあ、ええわ実力を見せたる!」
「そうか、失せろ」
「はうあ!?」
とりあえず顔面に膝を入れて押し倒して、腹を2、3度殴って蹴り飛ばす。
人通りが多い大通り出なかったので障害物が少なく結構吹っ飛んだ。
「ゲホッゲホ…ごっつう速いなぁ…全然見えんかったわ…」
「まだ元気そうだな?引くか?大人しく退くなら追わんが、二度はないからな?」
と軽く睨みつけて、また相手の出方を待つ。
できればさっさと終わらせて食事がしたい。
「ッ!………はは、なら有り難く逃げさせてもらうわ…退き際を見極めるのが得意やからな…」
「………そうか、ではそこに隠れて居る奴らも連れ帰るようにな」
「!?……気付いとったんかいな…」
応えずに店に帰ると店の全員がこちらを見た。
店員さんも心配そうな顔をしていたので店の全員に聞こえるように言う。
「申し訳ない、迷惑をかけてしまったな」
「…あ、いえいえ、こちらこそ止められなく申し訳ございません」
「いえいえ、荒事にしていしまい申し訳ない」
「いえ本当に申し訳ですが、ジェスさんは毎回ああやって揉め事の発端を起こすので、いくら冒険者の上位であっても看過できないものでしたのでお灸を据えてもらって申し訳ございません」
なるほど毎日迷惑をかける阿呆だったのか…。
やはり、阿呆だと思った奴らは大抵は阿呆ばかりなのはどこも共通か…。
「それでなんですが、お料理の方の代金は迷惑代としてこちらが「いえ、他愛もない事なので、と言うより迷惑代と言うのであれば俺も客の皆さんにかけましたので」」
そう言って客の方を見たが、何故か全員首を横に振ったり、小さいが「いい気味だ」や「今日のツマミは豪華だな」などと言っており、店員さんも少し困った顔でこっちを見ていた。
「…まあ、俺は料理代は払えますので迷惑代の相殺と考えてもいいですかね?」
「…そうですね、ありがとうございます」
そう言って話をつけて席に戻ると、すぐに料理が運ばれて来た、焼オーク肉とパンに付け合わせのスープが少量あり、美味しそうだ。
手を拭いてから肉を一口食べると歯応えと味は豚肉に近いが前に他のゲームで食べたそこそこレア度の高い豚肉と同じ味がした。
パンは少し硬いがどうやらスープに少しつけるのが主流のようだ。
食べ終えて会計を済ませて店を出る。
「ありがとうございました」
「ごちそうさまでした、また来ます」
「はい!是非来てください!」
手を後ろ手にして振り応えて店を後にする。
視線も完全になくなり、やっとリラックスしながら宿に帰れる。
ここから宿までかなり近いし、味も文句なしで美味しかった。
宿に帰り、鍵を貰って部屋に戻る。
丁度よく隣の人も帰ってきたようで会釈を軽く交わして部屋に入る。
ベッドに座って少しストレッチしてから眠りにつこうとしたが、ヘルメースからメールが届いていた、どうやら昼飯の後に来ている。
to エイン
from ヘルメース
件名:ハンダロへ着いたであろう我が王へ
無事にハンダロに着いているのであれば宜しいのですが、もしハンダロ周辺にいらしたらウィロー村で落ち合いたいのですが宜しいでしょうか?
とあったが理由を省くほど緊急性のある用でもあるのか分からないので仕方なく〔通信〕を押してヘルメースに繋ぐ。
『はい!こちらヘルメースです!お呼びでしょうか我が王よ!』
「ああ、メールを今し方見たが何かあったのか?」
『はい!新聞にてウィロー村にデーモンベアの上位種の情報が届いたので、出会ったプレイヤーに情報を聞いて今ウィロー村にて作戦会議をしておりまして』
「そうだったのか、用件はそれだけだったがそれならば良い、わざわざ作戦会議中にすまんかったな」
『いえいえ、私は貴方様の忠実なる配下ですので』
「そうか、では」
『少々お待ちを、お聞きしたいことが』
「?…俺はそっちには行かんぞ?今は依頼を受けてハンダロを離れられんからな」
『そうでしたか、依頼であるのであれば仕方ありません、
我が王であればすぐに済むと思いましたので、つい』
「わざわざ俺が行かなくともお前であれば既に他の腕の立つプレイヤーを呼んでいるのであろう?」
『さすがは我が王、その通りでございます』
「まあ、あまり無理せず、頑張れ」
『ありがたきお言葉に応えれるよう最大限努力し、素晴らしき報告をお持ちします』
「そうか、では切るぞ」
『はい、わざわざありがとうございます』
新聞にあったウィロー村の件はヘルメースがどうにかするっぽいし、俺は俺の仕事をしっかりやるとして、さっさと寝るとしよう………。
次回もゆっくりお待ち下さい。




