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ウサギはソロでも生きている  作者: ハズカシダリア
episode 1 ソロであってボッチではない
2/68

ソロは労働者となる

 鳥と人の生活音で目が覚める。

 そこそこ固いベッドだったが、他のゲームでここより酷い環境で良く寝ていたから普通に寝れてしまった。


 外はまだ少し暗く、窓の外からは新聞の束を背負った少年が居るくらいだった。

 …ふむ、新聞か……少し見てみたいな。


 慎重に床に足を乗せて玄関まで行き、店員さんが居ないから宿の入り口でキョロキョロ見渡して先ほどの少年を小声と手招きで呼ぶ。


「はい、なんですか?新聞であれば20Zです」

「新聞を、はい20Z」

「ちょうどですね、はい新聞です。明日も買いますか?」

「あー…そうだな、頼めるか?」

「であれば商人組合の方で定期契約されると少し安く買えるので、商人組合まで行ってください、それでは」

「分かりました、ありがとう」


 お礼を聞いているかは分からなかったが、少年はまた走り出していった。

 …朝から新聞配達とは…まあ、どうでも良いか。

 自分の部屋で読もうと振り返ると、宿の奥から足音が聞こえる。


「おはようございます」

「ん…ああ、あんたかい…なんだい新聞なんか買って」

「興味本位ですよ、それより部屋の掃除道具ってありますか?」

「あるにはあるが、貸し出しはしてないよ。

 やるなら自分で買いな」

「なるほど、分かりました」


 返事をして新聞を片手に部屋に戻る。

 ベッドに座って新聞を読んでみる。



 [東商業区で小火騒ぎ、連続放火魔の可能性が]

 昨日昼に東商業区の薬屋裏手に火の手が上がった。

 幸いなことに買い出しから戻った店主が気付きすぐさま鎮火された。

 東商業区での一昨日から3件目となる小火騒ぎ、これにより自警団が警戒をさらに高めるようだ。


 [東の商業路にオオカミの群れが]

 昨日夕方前に東の商業路に10頭以上のオオカミの群れが目撃された。

 幸いなことに近くに居た商人達は襲われなかった。

 その場に居た護衛の人の証言では、

「まるで何かから逃げていくようだった。

 こちらには目も暮れず、通り過ぎて行った」

 とのことだ。

 この報告を聞いて、領主ハンダロ氏は近々、調査隊を編成する模様


 [作業員募集]

 ミダロス山の作業員募集中

 内容:朝から夕方前まで掘削作業

 定員:なし

 資格:なし(ただし親方の命令は従うように)

 報酬:950Z(働きによって多少の変化あり)

 体力に自信のある方はミダロス山近くの小屋まで



 ふむ、色々と面白い記事もあったけど、ミダロス山か…多分昨日見たあの山だろう。

 どうせやる事もないし、行ってみるか。


 ベッドから慎重に立ち上がり、鍵を返して、とりあえず山まで真っ直ぐ向かう。

 途中で早めにやっていた屋台で少し多めに食料を買って向かう。










 門から出て結構走ってきたが、そろそろ山の麓に着くが小屋が見当たらない。

 ……ふむ、少し聞き耳をたてるか…。



 周りの安全を確認して、目を閉じて耳を澄ませ………。



「あ……っす……………」

「お…………じゃ……」


 聞こえた。

 どうやら小屋はもう少し先にあるようだ。

 少し早足で駈ける。




 少しすると小屋に大きな山穴、それと人影がかなりいる。


「今日の作業も気をつけるように!以上!」


 大きな声で大人数に声を出している人が親方かな?

 とりあえずちょうど話が終わったようだし、


「すみません、少し良いですか?」

「ああ?なんだ?」

「新聞を読んで来たんですが」


 と言ってアイテム欄から新聞を取り出して見せる。


「ん?おお、そういや出してたな」

「はい、雇っていただけますか?」

「おうよ!だがちょい待て」


 そう言うと急に体を触りだす。

 少し驚いたが、多分体格で仕事を割り振るのだろう…多分だが。

 触り終わると少し悩んでから


「テメェは何が得意だ?」

「そうですね…体を動かす事が得意です」

「そうか、んー…よし、ウルカレ!ちょっとこっちこい!」


 親方が準備していた作業員の一人を呼ぶとウルカレと呼ばれたクマの男性が近づいてくる。


「はいはい、親方なんでやんしょう?」

「テメェは今からコイツの教育係だ、以上!」

「え、あー、分かりやした、あーっと、オレぁはウルカレだよろしく」

「はい、エインですよろしくお願いします」

「エインか、それじゃあここでの作業を教えるからついて来い」


 ついて行くと先ほどまでいた場所で手袋と獣人用のヘルメット、そして採掘用のつるはしを渡された。


「それで掘るんだが、指示された場所を周りを見て気をつけて掘るんだ」

「はい」

「よし、じゃあ作業しに行くとしよう」




 山の穴の中に入ってそこそこ歩くとだんだん他の作業員の作業音が聞こえる。

 トンネル自体結構大きく昨日見た荷馬車が余裕で通れるサイズだ。


「んじゃあ、まず俺がお手本を見せるからな…っほ!」


 ウルカレ左右と背後を分かりやすく確認してが持っていたつるはしで岩肌を削る。

 俺より大きいだが削るサイズは思っていたより少し小さい。


「っと!…ふぅ、とまあ、こんな感じだ。コツとしては無理して大きく削るより自分に合った大きさを削るのがミソだ」

「なるほど、やってみてもいいですか?」

「おう!見せてみろ、ちなみに掘ってもらうのはここだ。

 あまり多く掘るなよ?疲れるからな」

「はい」


 注意された通り、左右、背後を確認して振りかぶる。

 少しずつ大きさを調整して、自分に合った大きさを見つける。


「よしとまれ」

「……っ、はい」

「今の振り方じゃ腕が疲れちまうから、もう少し体を使って掘ってみろ」

「体使って…やってみます」


 たしかにさっきまで肩から先しか意識していなかった。

 戦う時も全身を使って威力を上げていたし、こう言う獲物を持ったことがなかったから失念していた。


 同じように左右と背後を確認して、踏み込みやすいように足幅を調整し、全身で掘ると先ほどの大きさだとまだ余裕があるのに気づく。


「おお、そういう感じだ。中々様になってたぞ」

「ありがとうございます」

「よし、じゃあその調子で掘って行ってくれ、何かあれば隣に居るから聞いてくれよな」

「はい」


 そう言うとウルカレは自分の作業をはじめたので、俺もさっきの要領で作業を進める。










「おし!テメェら!休憩の時間だ!休め!」


 そこそこお腹が減ってきた頃、入り口から親方の声が穴の中に響く。


「エイン、道具は入り口に置いて、外で昼だ。

 飯は持ってきてるのか?」

「はい、朝多めに買ったので」

「そうか、じゃあ戻るぞ」

「はい」





 道具を元に戻し、適当な場所で食事する。

 少し冷めているが食えないことはないので食べていると、

 不意に森の奥から誰かに見られているのを感じる。


 食事もそこそこに視線の方に耳を集中して音を拾う。

 ……少しだけ荒い息遣い…それでいて人では出せない唸り声……。

 後ろから誰かが迫ってくる足音で集中を解く。


「おう!新人!寝てんのか?」

「…ああ、親方…いえ、ただ森の奥からこちらを見ている何かがいたんで気になって調べてただけです」

「森の奥から?…で、なんだったんだ?」

「そうですね…おそらくオオカミの群れ…ですかね?」

「オオカミか、こっちに来なけりゃいいが…」

「そうですね…少し追っ払って来ましょうか?」

「いや、やめとけやめとけ、オオカミは群れると必ずそれを率いる奴がいるんだ、碌なことにならん」

「なるほど、分かりました」


 そう言って立ち上がったその時、先ほどまで感じていた視線が消えた。

 足音が遠のいて行くのを少しだけ聞き取れたから、きっと逃げて行ったのだろう。

 まあ、こっちの方が人数多いしな。


「それより、そろそろ作業再開すっから戻んぞ」

「分かりました」


 少し気になったが、まあ、どうでも良いか。

 仕事道具を持って持ち場に戻った。







 ある程度掘っていると幾つか小さな鉱石が埋まっていて、錫や銅がもっぱらだがたまに鉄も出てくる。

 そういうのが勝手にアイテム欄に入ってくる。


 一応ウルカレに聞いてみたが別に持っていて問題ないようで、どうせ売ったところで小銭稼ぎくらいのしか売れないようだ。


 と言っても、チラッとアイテム欄を見ると


 オオカミの毛皮(中)×1

 オオカミの牙×2

 鉄鉱石(小)×19

 銅鉱石(小)×28

 錫鉱石(小)×29

 石×99

 石×99

 石×99

 石×99

 石×99


 10スロットしかないアイテム欄一杯だが結構集まっている。

 ちりも積もれば山となるって言うことわざもあるし馬鹿にできないだろう。


「よし!テメェら!今日の作業は終われ!各人片付けてから解散!以上!」

「おっし、おつかれさん。

 どうだ?きつかったか?きつかったろ?」

「そうですね、慣れるのに結構時間がかかって疲れました」

「だろ?まあ、今日はさっさと食って疲れでも癒せ」

「分かりました」


 ウルカレと一緒に道具を片付けて、アイテム欄にあった石を然るべきところに捨てて街まで帰ることになった。

 帰る際に親方にまた明日も頼むと言われたからしばらくは稼ぎに困らないはずだ。


「そういや、エインはこっちに住んでんのか?」

「いえ、俺はプレイヤーなんで宿住みです」

「はー、オメェさんがプレイヤーか…宿住みってこったぁ風呂とか付いてんのか?」

「いえ、食事も風呂も別ですね」

「なるほどなぁ、それじゃあ風呂なら風呂屋に行っとけよ?じゃなきゃどこの食堂も入れてくんねぇぞ?」

「なるほど、そうなんですね、知らなかったので助かります」

「知らなかったって…まあ、仕方ないか…まあ、俺も俺で出稼ぎで来てっから風呂屋まで案内してやんよ」

「度々、助かります」

「良いってことよ」




 そんこんなで街まで着いて、風呂屋に案内される。

 風呂屋は銭湯のことだが、どうやらそこそこ街に点在していて、なおかつ街の出入り口や宿区の近くに多いようだ。


 内装は普通の銭湯と同じくらいで、水とお湯の風呂があるくらいだった。

 ちなみにここの料金は150Zでウルカレによると平均より少し安い所のようだ。

 お金はあまり使いたくないから助かる。


 なお、高いところだと様々な効能や風呂があって、サウナもあり、さらに食事もうまいらしい。


「んじゃあ、オレァ宿で食うからここでお別れだ、またな」

「はい、おつかれ様でした」


 さて、今日の夕飯はなんにするか…と言っても街に詳しくないからどうしたものか…………仕方がない、昨日みたくそこらの露店で買って帰るか……。






「ただいま戻りました」

「…はいよ…それで、明日も泊まんのかい?」

「はい、追加で5泊ほど」

「250Zだよ」


 言われた金額ぴったり渡してから、昨日と同じ部屋の鍵を受け取り部屋に戻る。

 あいも変わらず埃まみれだったがたまたま見かけた中古品売りの露店で雑巾がわりの布とバケツを買っておいたからまだ寝るにも早いので掃除する。


「すみません、バケツに水を汲みたいのですが…」

「ん…宿の裏手に井戸があるからそこから汲みな」

「分かりました、ありがとうございます」





 とりあえずよく使うベッド周辺と、窓を重点的に掃除して汚れた水を教えてもらった所に流してベッドに横になる。

 結構疲れたし、今日はこれで眠るとしよう………。

話の長さはマチマチです。

最後までありがとうございます。

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