ソロは食事を優先する
とりあえずそこらに倒れているのをヘルメースの部下たちに任せ、イエウオーナーに話をする。
「一応発見した範囲で倒したが、まだ居る可能性もある。
あまり動かないように起きている他の従業員に伝えておいてくれ」
「そうね…まさかこんな事態になるなんて…」
「落ち込むより他の従業員に元気を分けてやれ、主人の感情は不調だろうと好調だろうと部下に響きやすい」
「…そうね!アドバイス感謝するよ!」
拳を握り、先程までの弱々しい雰囲気をなんとか立ち直って他の従業員の介抱をする。
「我が王、隅々まで調べた結果、残党及び援軍の来る気配はありませんでした」
「そうか、であればさっさと帰るとしよう、少々腹が減ったせいか動きが鈍ってしまってな」
「であれば、ついたと同時に食事ができるよう伝えて「少しよろしいか?」」
ヘルメースとの会話を遮るように、先程の兄とその後ろに騎士が割って入ってくる。
「なんのようだ?」
「!お前!この方を!「貴様に聞いていない、黙れ」ッ!?」
「これはこれは、スーディス王国の第二王子のマティ様ですね、私は【調査団体】のヘルメースと申します」
「…え、あ、ああ」
「そしてこちらは私が敬愛、いえ崇拝している災害王エイン様にございます」
「え、災害、え」
「紛らわしい事を言うな、すまんなそう言う呼び名と言うだけだ。それで…マティでいいか?」
「あ、は、はい」
「マティよ、俺に何用があって止めた?」
「あ、わ私の妹であるハレアを助けていただいてありがとうございます!」
「そうか、感謝は受け取った。行くぞヘルメース」
「はい、それでは…皆、撤収して後のことは衛兵に引き継いでくださいね!」
「分かりました〜」
「腹減った〜、ギルマス〜今日の飯何〜」
「え、あの…」
「今日はチャーハンさんの得意料理のビビンバのようですよ」
「うはー、旨辛ビビンバー」
「ほぉ、既に米はあるのか」
「他のゲームと違い市販で売られていましたが、輸入品で少々値が最初は高かったですが、既に輸出国の場所は特定しておりますが、少々厄介な障害がありまして…」
「そうか、まあ、頑張れ」
「ははは…できればお力をお借りしたいと考えておりまして…」
「味次第、とでも言っておこう」
「!料理担当に言っておきますね!」
「勝手にしろ」
店を後にして、ヘルメースのギルドハウスに来たが…ここは確か、
「隣だったのか」
「ええ、まあ、先に私が買い上げた土地の横を買われたので、嫌がらせだったのでしょう…さて、既に支度は出来ておりますので、どうぞ」
「ああ、失礼する」
中に入ると一階は商業組合とほぼ同じ構造をしていた。
「一階はプレイヤーから情報を売買する場所にしていまして、食事などは2階からになります」
そう言って『スタッフ以外立ち入り禁止』と書かれた板がある扉に入っていくのでついて行くと一瞬で景色が変わる。
どうやら2階のようだが階段でないことには少し驚いた。
「最初は階段だったんですが、行き来するには狭かったのでテレポーターを購入して見たのですが、値段に合った代物でしたね」
「ギルマス〜自慢より飯にしましょうよぉ〜」
「それもそうですね、食堂に案内します」
と言って『食処』と書かれた暖簾をくぐると30人以上入れそうな空間に長机が綺麗に並んでいた。
「広いな」
「これも魔法道具の効果ですが、まあ、詳細はまたいつか。
我が王よ、席にご案内します」
そう言うと御誕生日席に案内され、他より少し材質が違う椅子に勧められた。
少し特別扱いが過ぎるが、あまり気にせず座ると、ヘルメースが手を叩いて、すぐに料理が運ばれて来る。
「失礼します」
「ありがとう…おぉ、いい匂いだ…では、いただきます」
「どうぞお召し上がりくださいな」
ゲームにて初めて現実と同じ名前で同じ姿をした料理。
再現するために要した時間や試行錯誤の苦労もあっただろう。
こうして再現された料理は料理人の腕次第で再現度が変わる。
が、ヘルメースの所の料理人はおそらく現実でも料理をする系統のプレイヤーだったのか、かなり美味い。
辛さも食べるのに丁度良いくらいに調整された素晴らしいモノだと思う。
「美味いな、おかわりを頂けるか?」
「!ええ、もちろんです!」
「…少し良いか?」
嬉しい表情を表に出し、皿を下げ厨房へ向かう途中で少し呼び止める。
「ヘルメースに指示されたのか、それとも君が独断でやったかはどっちでも良いのだが、次からは君の最高だと思う味で頼む」
「え…」
「………………」
今食べたビビンバはかなり美味しいモノだったが、それは俺の好みに合わせたモノだと言うのはヘルメースの視線と料理人の緊張具合でなんとなくそんな気がしただけではある。
「別段食えないほど辛いのが君の最高だと言うのであれば遠慮するが、君のギルドメンバーが言うには旨辛と言う…ヘルメースそこの所どうだ?」
「………流石に隠せませんでしたか、失礼しました。
チャーハンさんに我が王の好みに合わせるよう指示をしたのは私です…なんなりと罰を」
「構わん、貴様の勝手の好意を受け取らんだけだ…が、あまり他のプレイヤーを俺に合わせようとするな、それは貴様如きが縛るものではないと知れ」
「心に刻み、今後このような事が無い様に努めます…チャーハンさんも無理を言って申し訳ない」
「あはは、良いよ良いよ、でも驚いたなぁ、僕の料理を初めて食べて違いが分かるなんて」
「いや、俺でなくてもそんなにジロジロみて来たり、明らかに緊張した顔で見られれば何かあるのは予想がつくと思う」
「あらら、これでも緊張しない方だと自負してたけど、慣れない事はするものじゃ無いね」
「なるほど、だからいつも我が王に合わせているのがバレてしまう訳ですか…これからはその辺りも「ヘルメース」…ええ勿論、今後はやりませんとも、ええ!」
此奴の言う事はあまり信用できないがその辺りが期待しないでおく。
ちなみにおかわりで出てきた味の方が料理人の腕の良さが出て先ほどより美味しかった、やはり自身のベストが最も美味いと思う。
次回『旅支度』
次回もゆっくりお待ち下さい




