エピローグ
王城にてミロ大臣は部下から急ぎの報告を受けていた。
「それでは、あの厄介者のアジトは綺麗さっぱりなくなったと?」
「は、はい!現場に居合わせた巡回兵によると、半獣人種と見られる男が中から出てきて、数分後に建物が倒壊したとのことです」
「…ふむ、他に被害報告は?」
「建物が倒壊する数十分前に冒険者ギルドにて、その災害王と名乗っていた男と件の男が争い、幸いな事に住民には被害は出ており「なら良い、下がれ」はい!失礼します!」
敬礼をし、部屋から去っていく部下を後目に少しため息を吐いて、仕事に戻ろうとした時に、扉がノックされる。
「誰だ?」
「【調査団体】のヘルメースですよ、ミロ大臣」
「……入りたまえ」
その声を聞いて、手慣れた感じで扉を開け、わざとらしい礼をして、椅子に腰掛ける。
少し間を開けてミロ大臣が口を開ける。
「…何がどうなっているか説明を求める」
「そうですね、その前にあの件ですが、もう必要がなくなりましたので、誠に申し訳ないのですが兵はもういいです」
「…良いだろう、どうせそうなると思って用意などしておらん」
「そうでしょね、それで説明ですが…端的に言えば、我が王が全て終わらせました」
「王?確か貴様が前から言っていた災害王なる者の事か?」
「ええ、と言ってもミロ大臣が知っている偽物の災害王ではなく、正真正銘の災害王ですのでお間違えなく」
そう言って、勝手に出した紅茶を一人優雅に飲みながら、こちらにも勧める。
ミロ大臣は、気になって流して聞いていたのをやめ、ヘルメースに向き直る。
「それで、わざわざ私に何を言いに来たのかね?」
「話が早くて助かります、用件は2つです。
1つは今回倒壊した敷地を買い取りたいというのと、もう1つは我が王について注意喚起を」
「…どういう事だ」
ミロ大臣の眉間が深くなり、少し空気が重くなる。
しかし、それをものともせず平然とした振る舞いで
「一応、土地を管理しているミロ大臣に言った方がスムーズにことが運びますからね「そうではない!」おっと」
「そんな事は私ではなく、しっかりと手続きでもしていろ!
私は注意喚起とはなんだと聞いているのだ!」
「まあ、そうですね、言ってないですがそうでしょうね」
わざとらしく戯けているヘルメースにミロ大臣は苛立ちを隠さなかった。
「注意喚起ですけど、先に言っときますが、私、この国はかなり好きですし、それだから拠点を置いていますが、それとこれとは別なのでご了承を」
「訳の分からんことを前置きするでない!」
「では、単刀直入に言いますが、
我が王、災害王に関わるなとは言いませんが事は起こさない方が良いですよ、絶対に」
巫山戯た態度が一変し、真剣な眼差しでヘルメースがこちらを見る。
しかし、それで少し冷静になったミロ大臣はふと前々から疑問に思ったことを言う。
「………災害王とは、何なのだ?」
「まあ、そうなりますか…そうですね。
分かりやすく言うのであればプレイヤー全員が徒党を組んでも負けるであろうまさに自然災害のような止めようのない者ですね」
「…そのような者が…」
「へー、面白そうじゃん」
「「!」」
扉をノックせずに入ってきた騎士がヘルメースの前まで歩いてくる。
少し驚きながらもミロ大臣は騎士を咎める。
「ニル近衛騎士団長殿、いつも言ってますが勝手に入るのは」
「分かってる、分かってるって、あまり硬いこと言うとまた姫様から嫌われますよ〜」
「これはこれは、近衛騎士団長のニル様ですか。
お初にお目にかかります、私「ヘルメース、だろ?部下から何度か聞いたことあるよ」それはそれは…それでミロ大臣に何か御用でしたら私はこの辺りで」
「いや、あんたにさっきの話を詳しく聞きたくてね」
「…一応理由をお聞かせ願えますか?」
「理由?簡単だろ、国に仇成しそうな輩が居るんなら、さっさと排除しておきたいからな」
「…………申し訳ありませんが、今の言葉は聞かなかったことにしましょう」
そう言ってヘルメースは紅茶を飲み干し、立ち上がって帰ろうとする、が
「おいおい、何不貞腐れて帰ろうとしてんだよ」
と、ニル近衛騎士団長が立ち塞がり、肩を掴まれる。
少しだけ力の篭った手に、ヘルメースは顔を歪める。
「…ミロ大臣、もう1度言いますが、こういう事は絶対、絶対に我が王にしないよう、部下…いえ、貴方の王にも伝えておいて下さい…死にたくなければ…ね」
「正体見たりって奴だな、ミロ大臣、此奴は二度と王城に入れない方が良いぜ」
「……2人ともここから出て行け、王城で勝手な事はするな」
「はいはい、行くぞ」
と言って手を離し、部屋から出る。
ミロ大臣は深いため息をして、仕事に戻る。
建物が倒壊して時間が経ち、ヘルメースにわざわざ迎えをしてもらうのも面d…申し訳ないのでとりあえず王都を散策しながらどこかで夕食を取って、一泊してから帰ろうかと計画しながら辺りを見回すと見覚えのある者たちと目が合う。
「あ、災g…エイン様!」
「あ、え、エイン様!?」
「貴様らは、確かミレとタイチョウだったか」
「はい!改めて自己紹介させてもらいます!ミレ=オーガストです!【調査団体】の支援班長しています!」
「あ、えっと、どうもすみません」
「会って早々、何もしていないのに謝るでない、外套のお陰で顔を見られずに済んだ助かった、ありがとう」
「いえいえ、気に入って貰えてよかったです。そうだ!これから夕食食べようと思ってたのですが、一緒にどうですか?」
「お、おい、そんな忙しいかもしれんだろ、すみませんエイン様」
「いや、俺も夕食にしようと思ったが王都は初めてでな、すまないが一緒に良いか?」
「!もちろんですよ!良いよねタイチョ!」
「え、ええ!も、もちろんですよ!」
「ありがとう、それとあまり持ち合わせてがないのでな、安い所で頼む」
「いえいえ、ギルマスと食べる約束もありますので、ぜひ一緒に」
「そうか、では、お言葉に甘えるとしよう」
「では、こちらです!」
と言って前を興奮気味で先導するミレを見ながら、申し訳なさそうなタイチョウと一緒について行く。
これにて第1章は幕を閉じ、第2章へ…
この作品は今の所、第4章までは構想しているのですが、全体的にそれに沿って行けるかはモチベーション次第なので頑張っていきます。
それでは次回もゆっくりお待ち下さい




