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番外編4

「あー、私も恋人が欲しい!」


 幸せそうなエリカを見ながらマリアは叫んだ。

 マリアが叫びたくなるのも分かる。

 エリカの愛し愛される幸せなオーラは見ている者に感染する。

 年齢に合わない見た目ながら、どこか女らしくなった気もする。

 親友ともいえる仲のマリアにとっては、エリカが何だか先を行ってしまい少し寂しい気持ちもあった。


「まぁ、言いたいことは分かるけどさ。でもマリアは婚約者いたよな?伯爵家の何とかってヤツ」


 もう一人の親友、ユーリがマリアに尋ねる。

 名前は覚えていないが確かマリアより上の身分だったと記憶していた。

 するとマリアはキッと目をつり上げて、今生の敵かのようにユーリに対して叫んだ。


「とっくの昔に解消されちゃってるわよ!」

「は?」

「何だか知らないけど、私が魔法団に入団したら『おめでとう。そんな素晴らしい魔法能力に長けた君に僕では釣り合いがとれない』とか何とか言っちゃってさ、魔力が少なくて大人しくて儚げな伯爵令嬢と新たに婚約してさっさと結婚しちゃったわよ!身分も対等だからって。別に親が勝手に決めた相手だったから解消されるのはどうぞご勝手にって感じだけどさ」


 ユーリが思うに、それは単に男の嫉妬ではなかろうか。

 貴族社会ではいまだに魔力重視の家もあると聞く。事実、庶民であるユーリに養子縁組の話がいくつか届いている。貴族のしがらみが面倒だと思うユーリはその話をすべて蹴っているのだが。

 その男も魔法団を目指していたと聞いたことがある気がする。しかし、入団出来なかったのだろう。そうでなければ釣り合いがとれないなどと言うだろうか。

 それにしても『魔力が少なくて大人しくて儚げな女性』とは…マリアと真逆の女性を選んだものだ。

 そもそも、もし魔力重視だったならば魔力量の少ない女性で良かったのだろうか?

 やはり自分よりも魔法に長けた女性というのはその男性のプライドを傷つけたのだろうと推測する。それも身分が下ならば余計に。


 マリアはハワード男爵家の令嬢である。見た目は…美人である。

 髪は緩くウェーブのかかったブリュネット。長い髪を高めの位置でひとつにしており、目はやや猫目だが大きく、比較的ハッキリとした顔をしている。

 無駄のないすっとした体つきではあるが出るところは出ている。

 おそらくきちんと着飾ればモテるはずだ。きちんと着飾れば、というのは、マリアはいつもパンツスタイルで剣を携えれば女性騎士といった格好だ。実際は魔法騎士団だから剣は携えないが。

 そのためか、実は男性よりも女性に人気の女性である。

 魔法能力もエリカと同時期に魔法団に入団しただけあって、四属性は最高レベルの持ち主。反対にエリカの得意な補助系は苦手である。

 ちなみにユーリも補助系が苦手で、そのことがきっかけでエリカと仲良くなった経緯がある。


「ねえ!私の話聞いてる?」

「あ、ああ…聞いてる聞いてる。好きでもない相手だったんだろ?解消されて良かったと思えば?」

「そうだけど…」

「それに今の方が選り取りみどりだろ。それこそ魔法団内にもたくさんいるし」

「そうだけどそうじゃないの!」

「何が?」


 ユーリにはマリアが言いたいことがさっぱり分からなかった。複雑な女性心である。


「もういいわ」

「ふーん。ま、マリアならすぐにでも求婚されるだろ。美人だし」

「っ…」


 マリアの顔がさっと赤く染まる。

 何でだろうと思う気持ちと、可愛いなと思う気持ちがユーリの心に生まれる。

 それが恋心に変わるのはだいぶ先の話。

 マリアもマリアでユーリが一番心を許せる相手だと気付くまで時間が必要である。


 実は魔法団内でユーリとマリアがお似合いの美男美女だと言われていることを二人は知らない。


 ユーリは本人だけが気付いていないが、何気に見た目が良い。

 魔法団はどちらかというと貴族が多いが、魔力重視という点では魔法団に入団している時点でクリアしているため身分差別というのはあまりない。そのためユーリが庶民であろうと特に人気への影響は、ない。


 普段からエリカと一緒に過ごすことが多いため、やや規格外ともいえるエリカの兄ルーファスや副団長ケイン、騎士団長テオドールといった様々な美形を取り揃えましたという面々と接することが多い。

 そのため気付いていなかったのだ。

 明るめの茶の髪で鼻筋が通っておりやや細い目。細身だが割としっかりとした体つきで男らしさがあるユーリは人気があることに。

 ただ、マリアはユーリの見た目の良さには気付いている。


「あんたもでしょ」

「?」


 どういう意味か分からずきょとんとするユーリを見てマリアはくすくすと笑った。


 外堀が埋まるのが先か二人の恋の進展が先か。それはまだ誰にも分からない。

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