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30歳童貞は魔法使いとなって異世界で無双する~10年元の世界に帰れないと言われたのでひっそりと生きて行くつもりが何故かいける伝説に~  作者: まんじ(榊与一)
建国編

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第25童 デート失敗

「こりゃ酷いな」


エルフの里を離れ、ルーリに連れられ森に入っていく。

少し進んだところで異常な光景を目の当たりにし、思わずつぶやいた。

目の前には黒く不気味に変色した枯れ木が立ち並び、朽木からは禍々しい瘴気の様な物が漂っている。


こんなのが家に迫ってきたら、そら引っ越しするわ。

エルフ達が森を捨てるのも納得できる。


「とんでもない事になってるな。てかこの瘴気みたいなのは吸っても大丈夫なんですか?」


思わず手で口を覆って、ルーリに尋ねる。

だが彼女は言葉の意味が分からないかの様に、キョトンとしていた。

リピを見ると、同様に訳が分からないと言った表情をしている。


あれ?ひょっとして見えてない?

見えてるの俺だけ?


「神様?何を言ってるんですか?」


「あの?勇人さんには何か見えてらっしゃるんですか?」


「ああ、まあ。ちょっと瘴気みたいな黒い靄が、枯れた木から立ち昇ってるのが」


「「ええ!?そうなんですか」」


2人の声がハモった。

リピはその場から飛んで逃げ、遠くの樹の幹からこそっと顔を出して声を上げる。


「それって大丈夫なんですか!?私、死んじゃいませんよね!?」


知らん。

見ただけでどんな影響が出るかなど分かる筈も無い。

だからこそ、ルーリさんに尋ねたのだ。


「森の異変に近づいて、命を落としたエルフってのは居るんですか?」


「い、いえ。私達エルフで亡くなったものは居ません」


ならば命に別条はない。

もしくは短時間ならそこまでの影響はないという事だろう。

だがリピは小さいから、その分影響を受けやすい可能性が高い。

俺は彼女に離れている様大声で伝え、魔法を発動させる。


「サーチ」


これは名前そのままの魔法だ。

辺りの状況を調査し、通常では考えられない現象があればそれを見つけ出してその原因を探り出す。


まあ目の前に広がる状況を考えると、何もかもが異常なので、何も見つからないという事は無いだろう。案の定、大量の異常報告が俺の脳内に流れ込んできた。


「この異常の原因は、どうも地面にあるみたいだな」


頭に入って来た情報を総合して考え、森がこうなっているのは何らかの汚染が地中で広がっている為だと俺は結論付ける。

どうやら枯れ木から上がる黒い瘴気は、地中から木の根によって養分と一緒に吸い上げられたもので、枯れているのもそれが影響の様だ。


「わかったんですか?」


「根本的な理由はまだですが、取り敢えず土壌が原因なのは分かりました」


「かみさまー!ちゃっちゃと片付けちゃってください!」


かなり距離が離れているのだが、リピの地獄耳には俺の言葉が届いていた様だ。

だが声は聞こえていても、意味は脳にまで到達していない様だ。

取り敢えずの原因しか分かっていないのに、リピはさっさとなんとしろと俺を急かしてくる。


「根本的な原因を探る為、空から見て見ましょう」


俺はリピの言葉を無視し、ルーリと二人エアフライで飛び上がる。

瘴気が届いていない上空まで昇り辺り一帯を眺めていると、リピが俺の方に向かって高速で飛んできた。


「ちょっと神様!私を置いて行かないでくださいよ!!」


「ちっ」


調査とはいえ、折角ルーリさんと二人っきりになれると思ったのに本当に邪魔な奴だ。

木にしがみ付いて怯えてればいい物を。


「あ!なんですかその舌打ちは!?私は神様係なんですよ!!神様とはいついかなる時も一緒じゃないといけないんです!私を置いて行こうなんて、そうは問屋が卸しませんから!!」


だからその神様係って何だよ?

見張りか?

妖精共は俺の事を見張ってんのか?


まあ奴らにそんな知能があるとは思えないから、単にリピが適当に口にしてるだけだろうけど。


「はいはい、わかったわかった。この辺り一帯を調べる為に飛び回るから、しっかり掴まっとけよ」


ちらりと横を見ると、ルーリが楽しげに笑っている。

何度見ても天使の様な笑顔だ。

ま、二人っきりにはなれなかったがこの笑顔が見れただけ良しとしよう。

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