表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30歳童貞は魔法使いとなって異世界で無双する~10年元の世界に帰れないと言われたのでひっそりと生きて行くつもりが何故かいける伝説に~  作者: まんじ(榊与一)
建国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/61

第11童 狩り

ガサガサと音を立てながら、先頭を歩くカイルが鉈で藪を切り払い進む。

俺は彼の後ろに付いて歩いているのだが、顔や体に草や枝が当たって不快極まりない。

流石に鉈で軽く払った程度では、快適に進むとはいかない様だ。


これで虫がいたら地獄だったに違いない。

今が冬近くで本当に良かった。


「おっと……」


急にカイルが立ち止まったため、俺は危うくぶつかりそうになり声を上げた。

すると振り返ったカイルが口元に人差し指を立てて、静かにしろのジェスチャーを俺に向ける。


「少し先に熊がいます。見えますか」


小声で呟くカイルの指さす方を見ると、確かに熊の様な獣の姿が木々の合間から垣間見えた。

かなり大きい。

体長は3メートル近くあるのではないだろうか?


「でか……」


「ええ、大人ですね。本来なら武器を使って10人以上で狩りを仕掛ける相手ですが」


あんな巨大な熊に槍や斧で仕掛けるなど、俺から見たら自殺行為でしかないのだが。

彼らの村では毎年数頭、その方法で熊を狩っているらしい。

村人恐るべしだ。


「勇人さん、お願いします」


ここには俺とカイルしかいない。

当然あれを狩るのは俺の仕事だ。


「分かりました。パラライズ!」


俺の手からバチバチと雷光を纏う光の玉が放たれ、高速で飛んでいく。

それは熊へ触れた瞬間弾けて眩い閃光へと変わり、腹の底に響く様な重低音と振動を辺りへと撒き散らす。


直撃した熊は少しふらついたかと思うと、ゆっくりとその場で横倒しに崩れ落ちた。

だが死んではいない。

麻痺させただけだ。


今使ったのは麻痺の魔法。

出来うる限り新鮮な状態を保つため、殺さず生け捕りにしたのだ。


普通に狩りをすると傷口から菌が入り込み、血は直ぐに腐ってしまう。

血液中の塩分が主目的なのに腐らせてしまっては元も子も無い。

その場で調理加工する訳にもいかない以上、新鮮なまま持ち帰るには生け捕りが一番だった。

これなら腐る事は絶対ない。


「お見事!流石です!」


カイルの口調は、本当に凄いと言った感じなのだが……

30年間純潔だった証だと考えると、素直に喜べない自分がいた。

まあ熊を狩るという目的は果たしたし、さっさと帰るとしよう。


「獲物も手に入りましたし、帰るとしましょうか」


「そうですね。では勇人さん、お願いします」


「……へ?」


「ん?」


お互い不思議そうに顔を見合わす。

一瞬何のことか分からなかったが、カイルのお願いしますは熊の運搬についてだと気づいて狼狽える。


「あー、いや。その……」


熊を狩る事で頭いっぱいで、その後の事まで考えていなかった。


目の前に寝転がる熊を見る。

軽く数百キロはありそうだ。

こんな巨体を二人で持ち帰る等まず無理だろう。

勿体ないが、この場で熊を解体し持てる分だけ持って帰るしか……


「申し訳ないんですけど、運ぶ手段がなくてですね……」


「ん?飛行魔法を使われるとサラから聞いていますが?それで運ばれるとばかり思っていたのですが、駄目なのですか?」


おお!

飛行魔法か!


カイルに言われて思い出した。

確かにあれなら熊でも運べるかもしれない。

少々寒いが、熊に包まる様にすればそれだってきっとそれ程酷くは無いはずだ。


「確かに。少し寒いですが、飛行魔法なら運べるかもしれませんね」


俺は早速、エアフライで熊とカイルを連れて上空へと飛翔する。

熊の重さは特に気にならない。

これなら余裕だ。


「凄いですね。体がふわふわとしてて……」


カイルはおっかなびっくりと言った表情で周囲を見渡す。

サラに聞いたとは言っていたが、聞くのと体感するのでは別物だからこの反応も頷ける。


俺は彼が落ち着いた所で、熊が空気の壁となる様に前方に配置して村へと舵を取る。

寒いには寒いが、やはり大きな風よけがあると全然違う物だ。


次から飛行魔法を使う時は、この手で行くとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ