表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/25

きっと青色の世界。

好きという言葉がとにかく嫌いだった。


これほどまでに嘘っぽい言葉を俺は他に知らない。


この言葉を平気で言うやつも当然嫌いだ。


でも、


その子の言う好きという言葉だけは・・・・終ぞ、嫌いになることができなかったんだ・・・。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




―ー画面の中―ー




眠りについたその夜、少年が認識できたもの、それはやはり




――始める――




――リセット――




この二つの概念だけでした。




少年は今日も始めるの選択肢を選びます。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






少年が目覚めたのは、なんの偶然でしょうか、遠くに湖の見える小高い丘の上でした。

今日もまたその世界には心地の良い風が吹いております。



「・・・。」



そんな風が少年のもとを通り抜けていきました。

遠方にある湖が太陽の光を受けてキラキラと輝いております。



あの青髪の少女の別れ際の言葉がふっと頭をよぎります・・・



が、


「・・・。」


少年は、何をするでもなくその場所に寝そべっては、ただその青色を、無機質な目で眺め続けているのでした。


その世界の青色は・・・・歪なほど・・・綺麗な青色でした。


―と、―


小高い丘の下から、何やらトントンと何かを打ち付けるような音が聞こえてきます。

 気になった少年は、体を起こすと、ふっとその方に顔を向けます。

 向けたその先には、黒色のワンピースに身を包んだ一人の少女が必死に何かの作業をしている姿がありました。


―トントン トントン―


どうやらその少女は板にくぎ打ちつけているようです。


―トントン トントン―


少女曰く、頑丈な柵を作っているのだそうですが、第3者から見たそれは、ただの瓦礫の山でしかありませんでした。


―トントン トントン―


少女は汗を額に浮かばせながら真剣に釘を打ち続けていきます。


―ガラガラガラガラ―


ところがガラクタの塊にしか思えないそれは、打ち付けたその部分からたちどころに崩れ落ちてゆきました。


 少女は、それをとても悲しげな目で見ております。


静かに、その板を拾い上げると、


―トントン トントン―


少女はまた一人柵作りを再開していくのでした。


「・・・何をやっているんですか?」


「!?」


少女は驚きにぶるっと肩を震わせて後ろを振り向きます。



 そこにいたのは、一人の少年。



 その時の少女の顔は、嬉しそうでもあり・・・そして、どことなく悲しそうでもありました。


「柵を・・・作っていたんです・・・。」

「・・・柵?」

「・・・はい。」

少年の顔には、ありありとこんな柵があるのだろうか?という疑問符が浮かんでいるのですが、

「・・・どうして、柵を・・・作ってたんですか?」

そう聞き返します。

「冒険者を・・・」

一拍

「通さないようにするためです。」

「冒険者?」

「・・・はい。」

「・・・どうして?」

「だって・・・。」

悲し気に・・・


「仲間を・・・殺してしまうから・・・。」


 きっと、仲間とはあのゴブリンたちの事でしょう。

 ゴブリンという言葉に対して、苦虫をかみつぶさざるをえない少年は、やっぱりそんな顔をしておりました。

 風が二人の横を通り抜けていきます。


「「・・・。」」


少年の表情を見ていた少女は、


「お家に・・・来ますか?」


そう言ってきました。


―数分後―


「・・・・・。」

そこにあったのは、家というにはあまりにも・・・・お粗末な・・・それ。

「・・・家?」

「・・・。」

大きな一本の木と、いくつかの木箱が並べてあるだけのように私の目には見えるのですが、少女はそれが恐れ多くも家なんかじゃないんだという悲しい事実を頑なに認めようとはしないことでしょう。


「家です。」


ほら、やっぱりこう言った。


 3匹の子豚さんでさえもあざ笑ってしまうような・・・されど、その定義をちゃんと知っているわけでもないそれは、目の前の少女にとって、やはり大切な家なのかもしれません。


「家?」


されど、目の前の少年にとってはただの木箱。


「・・・家です!」


若干間があったものの、最後にビックリマークをつけることで、その存在をことさらに強調しました!


少女の周りにゴブリンたちが集まってきます。少女は優しい目つきで、その子たちの頭を撫でていきます。


 大小さまざまなゴブリン。ゴブリンなんて、みんな同じだろと、私は思っていたのですが、どうやらそれは違うようで、一匹一匹が全て違う生を授かっておりました。

 


 ただ・・・



あのゴブリンの姿は見受けられません。


「・・・あのゴブリンは?」

少女は、少年に向き直って・・・



「消去されてしまいました。」



「・・・・?」


少女はゴブリンたちを優しくなでます。


「本当は・・・あんな墓・・・作っても意味なんてないんです。」


「・・・?」


「だって・・・・中には遺体なんて・・・入ってなどいないんですから・・・。」


「・・・。」



―と、その時―


「うぎィッ!!」


どこからか、ゴブリンの叫び声が聞こえてきました!そちらを向くと、遠方に血を流すゴブリンが一匹。


ゴブリンはたどたどしい足取りでこちらにかけてきますが、体力の限界だったのでしょう、途中でこけて、地面に伏せました。


近寄る影一つ。


血に染まる剣を持った冒険者風の男一人。

 その男は、まるでこれから攻撃するかのように大きく剣を振り上げる・・・


「・・・!」


血まみれのゴブリンが助けを求めるように顔を上げて・・・・


そして・・・




―バシュッ―



そこに残っているのは・・・数秒前までゴブリンだった・・・・血みどろの・・・・


何か。



そして・・・



それすらも・・・光の粒子となって・・・消えていきます。



―カランッ―


残っていたのは・・・透明の石・・・。


冒険者は、それに気を止めることなく、一匹のゴブリンを殺したという事実を背に・・・踵を返していきました。


 その一部始終を・・・青ざめた・・・されど・・・どこか諦めた目で・・・・見つめている・・・



その少女の表情は・・・どこか・・・



怒っているようであり



悲しんでいるようでもありました。


「・・・。」


少女は、無言でゴブリンがいたその場所に行くと・・・


「また・・・お墓を作ることだけ・・・・上手になってしまいますね・・・。」


そう・・・自嘲気味に呟いた。





―そして―




少年の周りを・・・またあの砂嵐が覆っていきます。


「・・・・。」


少年には・・・少女にかける言葉が・・・見つかりませんでした。


大切なものを失ってしまった少年と・・・今なお大切なものを失い続ける少女。


何も言えないまま・・・少年は砂嵐身に飲み込まれてしまいました。


―to be continued―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ