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きっと灰色の日々。

きっと俺は、知る由もなかったのだ・・・。

もう、そのゲームオーバーから逃げることなんてできないこと・・・。

何かが始まり、何かが壊れるように。

何かが終わることでしか、何かが始まることができないように。。

その結末から逃れることなんできやしない。


つまり・・・


この物語が始まりを告げたということは、もう・・・あの結末だけが待っているのだということなのだ。






___________________________________________________________________________________________






 バイトが終わり今日は一段と疲れた顔をしていた俺を待っていたのは、何故かすでに開いているアパートのドアのカギと、何故かあかりが灯されている俺の部屋と・・・・、そして何故かまるで、その部屋の主であるかのように部屋でくつろいでいる、先ほど出会った、白衣の狂人・・・だった。


「やあ奇遇だな、また出会うなんて。」


その人は、まるで何十年もそこに住んでいる土地のヌシみたいに言うのだけれど、まったくもって、それはでたらめであったことは言うまでもない。


「ようこそ、君の家へ、さてさて、御主人のおもてなしをしなくてはな・・・。」


「・・・・・。」

「確か、二日前に君は、紅茶の葉を買っていたね。ええっと、ちょっと待っ」

「警察に――」

「無駄だよ。」

そいつは、遮った。

「・・・・何で?」


――気だるげにこちらを見る瞳――


やっぱりゆがんだ笑顔で、

「たとえ君が、海外に逃げようと、山の中に身を隠そうと、警察を呼ぼうと凄腕のエージェントを雇おうと、まったくもって私には通用しないのさ。」

その人はそう言う。

「どうして?」

ふふんと鼻で笑って、何をバカなことを聞くんだい?そう言いたげに、


「どうしてって、そりゃ、私が天才だからさ!」


当たり前みたくそういうその人を提灯みたいな電灯が、妖しそうな影で彩っている。

「・・・・。」

分かってる・・・どうせハッタリなはずだ・・・


でも、


ならどうして・・・この人は俺の住所を・・・。


そいつは狂ったように笑って、


「私はもう、全部知っているんだよ?


君が朝何を食べたのかも、

君がどの学校に通っていたのかも、

君が昨日何時に風呂に入ったのかも、

君の明日のシフトがどうなっているのかも、

君の太もものどこに大きなあざがあることも、

君がさっきコンビニで何を買ったのかも、

君の家族が今どこに住んでいるのかも、

君が過去何をしてきたのかも

全部、全部 全部・・・・・・・・・


・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

全部・・・・知ってるんだよ?」


怖気が走る。


「あなたは・・・一体・・・?」

白衣の人は、にやにや笑うばかりでその質問には答えない。

「・・・どうやって調べたんですか?」

ただただ笑いながら、

「天才だからね・・・・・、何でもわかっちゃうのさ。」

俺は、おもむろにスマホを取り出す。こんな不審者、とっとと、警察に引き渡してしまえばいいのだ。



 そいつは、おもむろにため息をつくと、分っていないなと、ジェスチャーを送る。

 そして、口を開いた。


「・・・いいかい?君は今、とほうもないチャンスを逃そうとしている。」


手が止まった。

「・・・チャンス?」

「そう、チャンスさ。ひとつは物語の中心に入ることもなく、ただ真実にたどり着かぬまま死にゆく有象無象の道、

そうだね、

                    三

                    年

                    前

                    の

                    あ

                    の

                    日

                    の

                    君

                    の

                    よ

                    う

                    に

                    ・

                    ・

                    ・

                     」



ハッとさせられ、俺はそいつを見る。

コイツはもう、あの事件のことまで・・・

俺は、目の前のそいつを思いっきり睨みつけた。

そいつはでも、やっぱりへなへなと笑うだけだった。

「・・・・。」

「・・・・。」

「・・・もう一つは?」

そいつは、また笑う。



              「この物語の主人公になる道さ。」



白衣の人は、ポケットに手を突っ込んでおもむろに立ち上がる。かと思うと、ぐいっとごちらに身を乗り出してきた。


その

    目

        は やっぱり 狂気に歪んでいて。。。。。。。


「答えてやろう!君は三年前のあの日、ただの傍観者であるべきではなかった。」


直感が騒ぐ、


――俺は、再度スマートホンを取り出した。――



 「君の物語は、

           まだ

                 始まってさえいない!」



――素早くスマホを操作する。――


  「君の見せる、  エンディング   は何だい?」


――110、その番号は押せた。――



   「私に見せてくれ!」



――あとは・・・――


        「君の導き出す答えを!」


――通話のボタンを・・・――


             「人間が人間であるという証明を!」


――押すだけなのに・・・――


                 「この世界が、現実であるという証明を!」


――押せなかった・・・――


               ――瞬間――


                 バ

                 シ

                 ッ

                   

            何かがはじける音・・・


                          何

                         故

                        か

                       暗

                      転

                     す

                    る視界の中・・・


白衣のそいつが  スタンガン  で俺を攻撃したのだと認識できたのと、俺の意識がまどろみの中に落ちたのは、まったくもって同時だった。


最後に見たその笑顔は・・・





――どこか・・・悲しそうだった――








―――――――—-―――――――—-―――――――—-―――――――—-―――――――—-―――――――

その人は、おもむろにスマートフォンを取り出しました。そばには、今しがたスタンガンで眠らされた主人公君が横たわっています。

白衣の狂人はしkし、あのゆがんだ笑顔は、もう浮かべておりませんでした。


数コールの後、誰かが電話に出ます。


「ああ、・・・君。お久しぶりだね。」


・・・


「喜んでくれ・・・あの世界への、適合者が見つかったよ。」


・・・


「ああ、これでやっと、あの子は、一人じゃなくなる。」


・・・


電話の先で、誰かが涙する声が聞こえました。

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