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消えていく言葉

作者: 糸井翼

私は小さな頃作家になりたかった。裏が白い紙に物語を書いて、両親に見せてみたり。誉められていい気分だった。私には才能がある。そう思っていたあの頃。

今も机の奥に眠るその紙を見てみる。当時は頭を必死に回して、自分の想像の世界を言葉にしたつもりだったはずだ。でも、A4一枚に大きな字で書かれていたのは物語とは言い難いよくわからない文章。オチをつけたのであろう何かが書かれているが全く面白くない。これを自慢げに親に見せていたと思うと恥ずかしすぎる。きっと、親はかわいいなあと思っていてくれた、ということにしておきたい。

そんな恥ずかしいものが書かれてから10年以上経った今も残っているというのは、ものを捨てられない私の性格のせいだ。何か捨ててしまうと、恥ずかしい文章だけではなく、その頃の思い出や気持ちが失われてしまう気がして。もちろん、もう覚えてない子どもの頃のことだが、失われてしまうのは悲しい気がする。

スマホを手に入れてから、自分の書いた恥ずかしい文章を人に見せるのは簡単になった。私の恥ずかしい文章や詩も、探せば出てくる。

ネット上に投稿サイトは調べ出すと本当にたくさんある…でも開いてみると、稼働しておらず、そこに投稿された文章は誰にも見られていない。そんなサイトが結構多い。段々投稿する人が減っていき、更新がなくなるものもあった。稼働している人気サイトも、上位にピックアップされたものか、知り合いの多い影響力のある人の作品以外は、誰の目にも留まらず埋もれている。もちろん、才能ある人が書いた面白い文章はピックアップされて当然だし、私も読みたい。でも、埋もれている作品は面白くないのか。無価値なのか。

私は川柳の投稿サイトにお邪魔することがある。大量に投稿される川柳の中、ピックアップされたものにはたくさんコメントが入れられ、そうでないものは何もなし。私は時々思う。いいね!って言ってほしいのはその川柳じゃない。こっちの方が自信作です!

私は評論家ではないから、偉そうにこれにはこういう価値があるとか、こっちの方が良いとか言うつもりはないし、できない。ただ、埋もれていく文章、サイトを見るのは、仕方ないのかもしれないが、少し悲しい。忘れられた文章や言葉の後ろにある人の気持ちや思い。消えていくのが定めだろうか。気持ち、思い、そんなぼんやりしたものでも残せたらいいのに。机の奥底に残っている昔の物語のように、恥ずかしいけれども時々思い出すことができたら良い。

小説や詩や、色々な投稿サイトがあるけれども、色々な人の思いを残せるように、ずっと動いていてほしいと思う。インターネットが普及しているためなのか、小説や詩なんてものもTwitterなどと同じように一瞬で流れていく。でも探して掘り返せば、何かが蘇る。運営している人はこちらが想像するよりずっと大変なんだろうけれども。

ただ才能がなくて、入選などもできないやつが、自分の文章を見てくれる人と場所がほしい、と言っているだけ。そうかもしれない。才能も自信もないけれど、私の文章では、私の表現では、私の存在では、何かを動かす力にはなれないのだろうか。こういう思いを持ったアマチュア文筆家は他にもいるのではないか。

ここまで書いておいて、私は自分のナルシスト的な考え方に恥ずかしくなってきた。いわゆる中二病である。誰かには見てほしい、読んでほしい思いもあるが、中二病患者の独り言として、この文章はネットに埋もれていってほしい。



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― 新着の感想 ―
[一言] 読んで欲しいのも当然の事ながら、読む相手の事を想って文章を綴るのも必要ですね(*'▽') ”小説家になろう” 様には色んな方がいらっしゃいますけど、PickUpされる作品は一部ですから、交…
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