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第92話 白い僕

「白い……」

「キルルが白い……」

 ロビーにやってきた僕を見て、みんなはざわついた。

「一体どうしたの?」

 トイが尋ねて来た。

「校長先生に染色魔法いたずらされちゃって」

「いたずらって、校長先生に何かしたの?」

「な、なにも……」

 校長先生がどうしていきなり僕の体と服を真っ白にしたのか。校長先生に聞くと「しばらくその白い姿で学校をうろうろすればわかりますよ」と返された。なので僕はそのまま校長室から出てロビーに来た。そしてこの騒ぎである。

「なんだか、キルル白いとかわいいわ!」

 ショウが楽しそうに僕に近づいてきた。

「うん、かわいい……」

 普段あまり僕に興味なさげなネルも寄ってきた。

 いきなりかわいいかわいい言われて、こそばゆい気持ちになる。僕は男なので「かわいい」と言われるのは嬉しいとはさほど思わないが、好意的な反応は単純に嬉しい。

「ま、魔王じゃなくなってる……」

 前々から僕のことを怖がっていた、特殊クラスの一年の縮小魔道士プチまで警戒を解いてこちらを見ていた。

「なるほど、色変えるだけでも別人ねえ」

 変身魔道士のキャサリンは関心しながら僕を眺めていた。

 キャサリンの言うとおり、髪色や服の色一つでここまで印象が変わるのか、と僕も驚いていた。たしかに、こんなにいろいろな反応が見れるのなら、「染色魔法」を使ってコロコロイメチェンしたくなる校長先生の気持ちもわかる気がしてきた。

 そして、接する相手が好みそうな色に自分の色を変えよう、と考えてしまう気持ちも、今回の縮小魔道士プチの反応を見ているとわかる気がする。

 さらに、校長先生は、どんな色でもしっくり来そうな綺麗な容姿をしている。これだと、各所で恋愛沙汰だらけになるのも仕方ないのかもしれなかった。

 これが、校長先生の言っていた「染色魔道士の性」か……


 僕はこの白い姿も悪くないかな、とは思ったが、僕自身は黒色が好きなので、しばらくすると、黒ずくめに戻りたくなった。しかし、ロビーに帰ってきたリリイが僕を見るなり、

「まあ、キルル、とってもかわいい!」

 と言ったので、もう少しこのままでいたくなってしまった。僕ってなんて単純なんだろう。

「リリイだって白いじゃない」

「私より似合っていてよ」

 さすがにそんなことはないと思った。リリイの白い肌と白い髪、白いまつ毛より、魅力的なものなんてないと思う。

 その白い髪のリリイが、僕をまじまじと眺めている。嬉しくて、体が熱くなった。

「リリイ、お母さんは、もう帰っちゃったの?」

「ええ、結局何か目的なのか教えてくださらなかったわ。まあ、機嫌は良さそうだったから、そんなに悪い意味の用事ではなかったみたい」

「そう……ならいいけど……」

 僕は、さっきのリリイのお母さんの暗い表情を思い出して少し不安になったが、考えても仕方がなかったので、この不安はひとまず置いておくことにした。


 この、僕にかけられた染色魔法、なんと軽く一ヶ月はもつらしい。染色魔法レベル100の威力はすごいものだ。せっかくなのでスーやアレンの反応も見てみたいと思った僕は、白ずくめで王都の街中に出た。

 



 



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