第85話 軽い復讐
「脚本できましたー! 校長先生! 『染色魔法』で、この脚本10部刷ってください!」
私は文化祭の脚本を校長先生に渡した。
「おお、ショウさん、一日で書き上げたんですか! どれどれ……あははははは! これ超面白いですね!」
「でしょう!? 私が本気出せばこんなもんです!」
私は胸を叩いた。
「だけど、これ、メインキャストのキャサリンさんとキルルくんが怒りませんか? 扱い酷すぎません!? まあそれが面白いですけどあはははは!」
「いいんですよ! あの二人は去年の文化祭で私を陥れましたから! 軽い復讐です。普段は二人とも仲いいし大丈夫です。なにより、面白さを優先しました!」
「そういえばそうでしたね。これでいっちゃいましょう」
校長先生は愉快そうに10部刷った。
ホームルームで脚本を読んだみんなは、笑っていたが、さすがにキャサリンとキルルは固まっていた。
「ショウ、これ、面白いけど、私の扱いひどくない!? めちゃくちゃ身を削った役じゃない!?」
「でも、キャサリン主役よ!」
「まあ、確かにそうだけど……ショウ、もしかして去年の文化祭、根に持ってるのかしら……」
キャサリンは小さくつぶやいていた。
「ショウ! 僕の役なに!? なんで僕がキャサリンに倒される魔王役なの!?」
キルルも抗議してきた。
「そう? キルルにぴったりだと思うんだけど……」
私がそう言うと、キルルはしばらく黙った後、
「まあ、ショウには去年の文化祭ひどいことしちゃったもんなあ。まあ、しょうがないか……」
と、キャサリンと同じように納得していた。
というわけで、キャサリンと僕はなかなか身を削った役をやることになった。練習の段階でも結構辛かったので、次回の演劇の回は是非見て欲しい。
文化祭当日まで、僕たちは、衣装に使える服を借りに行ったり、舞台装置を作ったり、音楽担当のカランドを助けたり、一般的な文化祭の準備に走り回った。演劇というのは見たことはあっても、やるのは初めてだったが、やる方は大変なのだと知った。
「いいなあ。リリイ、女王様役なんて……」
この日、造形魔道士ツクルさんに作ってもらった小道具を受け取りに、リリイと街に出ていた。
「セリフが少ない役だから当たっただけよ。キルルは大事な場面で出るから大変ね。頑張ってね」
「うん。……ねえ、リリイ、劇中の僕のセリフはあくまでショウの創作だからね、僕あんなこと普段思っているわけじゃないからね」
リリイは笑ったあと、
「わかってるから、大丈夫よ」
僕はこう言ったが、劇中の僕のセリフは結構僕の本質をついていて、先回りしてフォローしておかないとまずいやつだった。
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