第84話 文化祭の演劇
夏休みが終わり、みんなが学校に帰ってきた。リリイもちゃんと夏休みが終わる前日に帰ってきていた。二年生の後期が始まる。
新学期最初のホームルームの内容は、文化祭についてだった。
「一年生はバトルロワイヤルですが、二年生は演劇になります。文化祭はまだ先ですが、ホームルームで、演目やキャストなど、ぼちぼち決めていきましょう」
二年生か各クラス演劇をする決まりらしい。校内のホールで発表するそうだ。
早速、ポールトーマスが黒板の前に立ち、話し合いが始まった。
「せっかく、これだけの特殊魔道士がいるんだ。みんなの魔法が、演出に役立つような演目がいいと思うんだけど、何がいいだろう?」
「みんなの魔法が役に立つ演目、かあ……」
みんな、沈黙して考える。みんなの魔法を役に立てるとなると、殺しあり、蘇生あり、瞬間移動あり、変身あり、笑いあり、若返りあり、音楽あり……等々盛りだくさん過ぎてかえってなにをするのがいいかわからなくなってくる。
「なんだか、下手するととっちからった内容になりそうだな……いろいろできることありすぎて……」
トイが呟いた。みんなも同じように感じていたようだ。
「はい、はい! 私、脚本書きます!」
手を上げたのは、ショウだった。
「私、『王都新喜劇』とかよく見るし、面白い脚本書けると思うの!」
クラス全員、一抹の不安を感じた。ショウの「面白い」を皆信用していない。ショウは笑いに関することが好きだが、笑いのセンスはない。それをカバーするかのように「笑わせ魔法」を授かったとしか思えないのだ。
「まあ、みんな、言いたいことはわかるけど、有名な演目じゃみんなの良さを出せるものはないと思うし、ここは、みんなの能力を把握しているショウに何か話を書いてもらって、それをベースに演目を考えてみようよ」
ポールトーマスが言った。
「よし! まかせて! みんな、劇でやりたいことがあったら今のうちに言って!」
「あ、それなら、僕、二役やりたいな」
ポールトーマスがサラッと言った。ショウはオッケーと言ってメモしたが、なんでポールトーマスは二役やりたいのか僕はわからなかった。ポールトーマスって二役やるほど目立ちたがりやなのだろうか。なんだか意外だ。
それから、「あたしのセリフは短くして!」とリャが言い、「僕は、演劇に出るより裏で音楽流したいな」とカランドが言い、「私も、目立つのはちょっと……」とリリイが言い、「俺は、目立ちたい!」と、トイが言う。
「そうだ、校長先生の『染色魔法』も使ってくれていいですよ。一瞬で衣装の色変えるとか余裕で出来ますよ!」
さらには校長先生まで乗り込んできた。みんな好き勝手言っているけど大丈夫だろうか。
「よし! 早速書くわよ! 超面白いのが出来上がる予感!」
ショウはいつにも増して張り切っていた。一体何が出来上がるやら……
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