第8話 僕が見る世界と他人が見る世界
「こうやってみると、みんな使える魔法と性格にそこそこ関連性があるんだなあ」
ロビーにて、音楽魔道士カランドが特殊魔道士名簿を見ながら言う。
「たしかに……カランドは音楽好き、ネルは怠惰、リャは言葉を略したがる、ワープマンはせっかちだしな」
複合魔道士ポールトーマスは相槌を打った。
「この関連性って先天的なものなのかな? それとも逆? 僕を例に出すと、音楽魔道士の素質を持ってたから音楽好きなのか、音楽が好きだから音楽魔道士の素質が出たのかどっちなんだろう?」
「ああ、それな。前者の方らしいよ。『音楽魔道士の素質があるから音楽好き』が正解らしい」
クイズ作成魔道士トイが答えた。以前気になって校長先生に聞いたことがあったそうだ。
「どの魔法に適性があるかは生まれ持ったものなんだと。だから適性検査があるんだし」
「なるほど」
カランドは、トイの説明に納得がいったようだ。
「あと、もう一つ……疑問があるんだけど……うちのクラスでキルルだけ、素質と性格に関連性が見えないよねえ」
カランドが首を傾げながら言う。
「え? 僕?」
急に僕の話になりびっくりする。
「俺もそれ、思ってた。『即死魔道士』っていうから猟奇殺人犯みたいなやつなのかと思ってたけど、いい意味で普通でびっくりしてるよ。親御さんも普通だったし。なんで?」
トイも一緒に首を傾げた。
「なんでって言われても……」
僕にもわからない。
「その、トイの『即死魔道士=猟奇殺人犯』のイメージが間違ってるか、キルルが実はものすごく闇深いタイプとか……?」
ポールトーマスがそう言うと、カランドとトイも僕を見つめた。
「ええ? や、やだなあ。僕、ほんとに、普通だし」
僕は一生懸命弁明した。
「……もしかして、診断が間違ってるなんてこと……」
僕は急に不安になった。もしかして、僕が即死魔道士なんてなにかの間違いだったりしないだろうか。
「そりゃないよ。特殊クラスに関する書類はみんな、特殊魔道士にしか見えないインクで書いてあるから。この名簿もだし」
「あ、そっか……そういえば、校長のピエロ姿もそうだっけ」
「知ってた? あの校長のピエロの服、人によって微妙に柄が違って見えてるんだぜ」
トイはそう言ったあと、唐突に指を鳴らした。
すると、いきなり空中から大きな紙がか降ってきた。トイが上手くキャッチする。
「うわあ!? なに!?」
「俺の持ち魔法だよ」
「え? なんで魔法使えるの?」
「俺去年からここで勉強してっから! 留年してるとはいえ多少は使えるって!」
「ああ、そうだった! ごめん!」
僕は謝った。そうか、留年組はすでに多少の魔法は使えるのか。
トイは今魔法で出した大きな紙を机に広げた。「校長先生どーれだ?」と文字が書いてある。その文字の下に、校長の絵が横並びで十個ぐらい描いてある。しかし、一つ一つ校長の顔のペイントと服の柄が微妙に違う。
「校長先生がどれに見えるか、指差してみて」
トイに言われ、ロビーにいたメンバー、ポールトーマスとカランドと僕は机を覗き込んだ。僕は、一番左端の絵を指差した。被ってる帽子の先に付いてる飾りの形が骸骨になっている。すると、全員違う絵を指差したのだ。ポールトーマスが選んだ校長先生は左半身と右半身で色違いの服を着ている。カランドが選んだ校長先生は顔に大きな音符ペイントがある。トイの選んだ校長先生は全身クエスチョン柄だった。
「こんなに、みんな違って見えてたのか……」
僕たちは驚愕した。
「ま、校長先生から骸骨が見えるのは即死魔道士だけだよ。適性検査に間違いはないから安心しなよ」
僕はホッとした。
「ふふ、世界は、自分が見てるものと、他人に見えてるものは、全然違うんだよ。この校内と、王都は特に仕掛けが多いから、思わぬ発見があるかも、ね?」
トイはそう言ったあと、指を鳴らして紙を消した。
しかし、僕自身も、即死魔道士の素質が性格のどこかに出ているとは思えない。これはどういうことなんだろうと思っていたが、とある出来事で僕の疑問は解決し始める。
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