表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/138

第72話 凪

 校長先生は他の仕事があるので、僕の部屋を後にした。

「ワープマンは、授業ないの?」

 僕の部屋に残ったワープマンに聞いた。

「次の授業まで、少し時間があるから大丈夫。そうだ、リリイも心配してたぞ」

「リリイが……」

「キルルはリリイの話をしてるときは表情が明るいな」

 ワープマンは僕の顔を見ながら目を細めた。

「そうかな」

「ああ」

 そうか、ということは僕は普段暗い顔してるんだろうか。

「リリイも部屋に呼んでやりたいところだけど、この部屋は見せたらまずいよな」

「うん、だけど隣の部屋なら大丈夫、隣の部屋ならリリイも入ったことあるし」

「へえ? 案外仲良くしてたんだな。まあよかったよ。キルル、リリイとくっついた方がいいよ。リリイがいなかったら殺し一辺倒になりそうで心配だ」

 殺し一辺倒って。そんなこと……と思ったけど、これだけ剥製と白骨と死体を並べていたらそう思われても仕方ないか……

 ちょっと待って、と言ってワープマンは消えた。そしてすぐ戻ってきた。

「リリイ、すぐそこにいたぞ。呼ぶか?」

「うん、隣の部屋に……」 

 僕がベッドから出ようとすると、頭がくらくらした。ワープマンに肩を貸してもらい、隣の部屋に移動した。隣の部屋にあるソファーに横になる。

「なるほど、こっちの手前の部屋を来客用にしてるんだな」

「うん」

 ワープマンは普通にドアから僕の部屋を出たあと、リリイを連れてきた。


「キルル! 大丈夫!?」

 僕の部屋にやってきたリリイはソファーの前にしゃがみこんで僕の顔を覗き込む。とても近いところにリリイのかわいい顔が来て、体に反して心は踊った。

「やっぱり、よくわからない物は食べちゃだめよ」

「ふふ、そうだね」

 レベルが上がった上にリリイがこうやって見舞いに来てくれたら、得している気がするけど、それは言えなかった。

「俺は、用事があるから、消えるぞ。リリイ、あとはよろしく」

「ええ」

 ワープマンはすぐに消えた。用事というのは口実で、気を利かせてくれたのだろう。そういえば前も、こんなことあったな。あのときは、リリイが乗り物酔いしてあまり進展しなかったけど……今も僕が具合悪いから進展させようにも限度がある気がする。

「リリイ、授業はいいの?」

「大丈夫よ。数学は聞いても意味がわからないから」

「それ、大丈夫って言わないよ」

 僕もリリイもお互い笑った。

 リリイは僕の手を取った。僕の右手がリリイの細くて白い両手に包まれる。リリイは呪文を唱えた。

「水魔法も効かないみたい……」  

 多分、魔力の影響で具合を悪くしているため、魔法で解決しないのだろう。

「先生が時間薬だって」

「そう。早く良くなってね」

 リリイが心配しなくても、僕はすぐに良くなるだろう。リリイがこうしてくれるだけで僕は十分だった。

 ワープマンの言うとおりだ。リリイの側にいると、心が柔らかくなり、殺意が凪いでいく。

 昔いじめられていたことも、即死魔法のレベル上げに対する執着も、色んなものに対する殺意も今は忘れられる。リリイがいてくれれば……


 


 


読んでくださってありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ