第69話 謁見へ
僕たちは、王宮の一室に通された。広くて天井には豪華なシャンデリアがあり、僕たちが座らされたソファーは体が沈みそうなほど柔らかく、調度品は全て綺麗に磨かれ光っていた。さすが王宮、という感じの荘厳な空間だ。
「では、順番に女王様の部屋に呼びますからね。まずはクイズ作成魔道士トイくん」
校長先生が呼んだ。
「え!? 女王様との謁見って一人ずつなんですか!? しかも俺からですか!?」
トイがびっくりしている。
「ええ、一人ずつです。トイくんを最初に持ってきたのは、トイくんは過去も謁見したことあるのでサラッと済むからです」
「えー!? そんな理由!?」
「過去に謁見って何があったんだ?」
ポールトーマスが聞いたところ、トイは国内のチェス選手権で優勝してそのときに謁見したらしい。トイが14歳のころの話で、まだクイズ作成魔道士になる前のことだそうだ。
校長先生と王宮の戦士に連れられ、トイは女王様が待つ部屋に向かった。
僕たちはトイを待つ間大きな机を囲みながら雑談した。
「それにしても、机大きすぎないか?王族会議じゃないんだから」
ポールトーマスが言った。
「多分、本当の王族会議もここで行っているんじゃない?」
とキャサリンが返した。
「ちょっとすごい人になった気分ね」
ショウはのんきな感想を言った。だけどたしかに大きな机を取り囲む僕たちは秘密結社のようだった。
「うー。机大きすぎて、お菓子に手が届かない……」
ネルが机に手を伸しながらしょんぼりしている。机には美味しそうな焼き菓子が入った籠が真ん中に置いてあったが、小柄なネルの手が届かない状態だった。ネルの正面にいたリリイが風魔法を使ってネルの元にお菓子を滑らせた。
「リリイ、ありがとう」
「ネル、一個取ったら隣に渡して」
ポールトーマスの言うとおり、ネルは一個お菓子を取ると隣に回し、みんなで食べた。今まで食べた中で一番美味しいお菓子だった。
「あー! みんなだけお菓子食べちゃって!」
戻ってきたトイが言った。
「今から食べればいいだろ。ほら」
ポールトーマスがトイにお菓子を手渡した。
「あ、次ポールトーマスだよ」
トイに言われたポールトーマスは、部屋を出た。
「謁見ってどんな感じなの!?」
席についてお菓子を頬張るトイに、ショウが聞いた。
「別に、ふつーだったよ」
「ふつーって言われても、ふつーの謁見知らないから」
ショウの言うとおり、トイ以外は謁見の機会なんてなかったから、普通の謁見なんて知らない。僕も、多分みんなも、結構緊張していた。
呼ぶ順番はどういう意味があるのかはわからなかったが、順番に呼び出されて謁見が行われた。残すは僕とリリイになった。
「次はリリイさんですよ」
校長先生に呼ばれたリリイが部屋を出ていく。つまり謁見の最後は僕らしい。
リリイの謁見は、他の生徒より長かった。そして、僕の番が来た。校長先生と警備の戦士に連れられ、長い廊下を渡り、突き当たりの巨大な扉の前に来た。
「キルルくん、あなたが女王様の目の前に立つのは今日が最初で最後です。理由は、君ならわかるでしょう。今日のこと、よく覚えていてください」
校長先生が言った。理由は……僕が即死魔法で人を殺せるようになれば、女王様に近づけることができないから、で間違いないだろう。
「はい」
「よい返事です。では、行きましょう」
大きな扉が開かれ、僕は中に入った。
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