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第66話 対話

 果てしなく長く見える一本道のダンジョンを進んだ。時々モンスターが出てくるがたいした強さではなく、僕以外のみんなが手分けして倒していく。一本道をしばらく進むと曲がり道が見つかった。やはりダンジョンなので一本道ではなく、いくつか道が分岐しているようだ。

「先代の校長先生、出口までのヒントもないんですか?」

 トイが尋ねた。

「ヒントは、そうじゃな、出口の場所は決まっておる。わしが出口の場所は決めた上でダンジョンを作ったからの。ただ、どの道をたどれば出口に辿り着けるのかは、わしにもわからん」

「じゃあ、どの道に行けばいいのか誰もわからないのか……トイ、どうする? なにか策はない?」

 ポールトーマスがトイに尋ねる。

「まず、このダンジョンが北に伸びてる点から見て、出口は王都のどこかだと思う。学校に出口が繋がってる可能性もあるけど、それじゃつまらないから、違う気がするな。先代の校長が出口を決めたっていうなら、先代の校長が何考えてるか探るしかないな……みんな、なんでもいいから先代の校長に話しかけろ」

 闇雲にダンジョンを歩き回るより、先代の校長先生の考えを探って出口の目星をつける方針のようだ。

「ワープマンとリャは移動する方が得意だから、ダンジョンを探ってもらった方がいいな」

 トイの発言を受けてワープマンが早速動き出そうとした。

「あ、二人一緒に行ってくれよ、何かあったら危ないから。危険なことにあたったらすぐ引き返して」

「わかった」

 ワープマンとリャが一番近くの細い曲がり道に進んでいった。

「さて、俺らはこの先代の校長と話すか」

 トイは歩くのを止めて、一番後ろにいる先代の校長先生に向き直った。


「うーん。どうせ話すなら嬢ちゃんがいいなあ」

 先代の校長が渋ると、

「先代の校長先生は女好き」と、トイがメモを取った。その情報いるのか、とポールトーマスが聞いたら、トイは頷いたあと、

「リャは残した方がよかったかなあ……」

 と呟いた。

「先代の校長先生、おやつ食べませんか?」

 ショウが話しかけると、先代の校長は嬉しそうににこにこしたが、差し出された虫モンスターの佃煮を見て悲しそうな顔をした。それを見たショウが笑わせ魔法を使って強引に笑わせた。

「ちょっと、ショウ、それじゃ可哀想よ。リリイ、柔らかいお菓子持ってたわよね? 分けてもらっていいかしら?」

 キャサリンが聞いた。キャサリンはいつの間にか美少女に変身していた。

「ええ、どうぞ」

 リリイが白くて柔らかいお菓子を差し出すと、先代の校長先生は笑わせ魔法の効果ではなく本当にご機嫌になった。

 いつの間にか、皆で先代の校長を取り囲んで地面に座り、おやつの時間になっていた。クラスの中で一番おしゃべりであろうショウを中心に他愛のない会話が繰り広げられる。トイはそれを注意深く見ていた。

「ここの特殊クラスはかわいくて優しい娘がこんなに……ええのお。わしも現役の時に君たちの担任をしたかったぞよ。嬢ちゃん達、近う寄れ。少しおまけしてやろう」 

「おまけ?」

 ネルが首を傾げて聞いた。

「じゃーん。レベルが1上がる飴じゃ」

「ええー!? すごい!」

 ショウ達は喜んだが、トイが黙っていなかった。

「女子だけっすか!?」

「女子だけじゃ」

「まじかよ!」

 というわけで、ショウ、キャサリン、ネル、リリイはレベルが1上がった。今ここにいないリャの分はキャサリンが預かった。

「ところで、そこの緑髪の子は、嬢ちゃんなのか坊っちゃんなのかどっちじゃ」

 カランドのことだった。カランドは髪は肩ぐらいあるうえ、柔和な顔立ちなので、中性的だからわかりにくかったようだ。

「僕は、男です」

「カランド、そこは女子つって飴貰えばいいのに」

 トイが言ったが、

「嘘はよくないよ」

 カランドは笑いながら返した。 

「ほほ、正直でよろしい。よし、坊っちゃんには少しヒントをやろう。出口の先には、君たちが会って損はない、いや、会うべき人が待っとるぞ」

「せ、先生、序盤から結構大きなヒントを出されますね」

 ピエロの現校長が驚いている。というか若干うろたえている。


「ん? ということはあれですか?校長先生の方も出口知ってるんですか?」

 トイが尋ねた。

「ええ。出口の場所は打ち合わせて決めてあります」

 それを聞いたトイは神妙な顔で考え始めた。

「ん? 何やってるんだ? みんな」

 ワープマンの声がした。偵察から戻ってきたようだ。リャも一緒に戻ってきている。

「ああ、悪いな、僕らだけ寛いじゃって。何かあったかい?」

 ポールトーマスが聞いた。

「別に寛いでくれるのはいいけど。さっき行った曲がり道は全て行き詰まった。出口はなかったぞ。これ、地図だ」

 トイが地図を見た。

「ふむ。王都の東側に出口なないか。やっぱり学校が出口はないな」 

 トイがメモった。うちの学校は王都の東の端にある。

「もう東側を潰したか。さっきの戦闘といい、その坊主はかなり有能じゃな。モンスターもトラップもそこそこあったはずじゃが」

 先代の校長先生はワープマンを見て言った。

「いえ、地図はリャが書いたし、トラップを解いたのもリャです。俺は移動だけです。モンスターは戦わずやり過ごしました」

「ふむ、その金髪のリャちゃんが地図担当か。この娘もかわいらしい譲ちゃんじゃ。ここの生徒は素晴らしいな」

「うん、わかったぞ」

 トイが突然言った。

「何が?」

 みんなが聞くと、トイは答えた。

「この遠足の目的。要するにこのダンジョンの出口だよ」


 



 




 

 

 




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