第63話 遠足準備
「それにしても、おやつ代500ゴールドで経費から支給って、うちの学校太っ腹だなあ」
トイが呟いた。僕たちは今王都の菓子屋に来ている。せっかくクラス全員での遠足なので、遠足準備もクラス全員で行うことになったのだが、一番最初に向かったのは菓子屋だった。「恐怖の」とついた遠足とはいえ、普段と違う学校行事に浮き足だっているのは事実だった。
やっぱり、遠足といえばお菓子である。
「やっぱり魔力回復できる飴とか買うべきじゃないか? おやつ代が学校支給ってなんか試されてない?」
ポールトーマスは遠足のおやつでも真面目に実用性を考えていた。
「えー? 魔力回復系のお菓子ってまずいからやだなあ」
ポールトーマスの横にいるネルが答える。
「うーん? 『恐怖』を紛らわすためのおやつじゃないの? 好きなもの食べたほうが元気でない?」
ショウが答えた。
「なるほどなあ。それもそうだな。うん、これだけ個性が別れてるんだし、各自の判断で好きなものを買おう。それから、おやつが身を助けるようなことがあった場合はみんなで分け合おう」
とポールトーマスがまとめた。みんな納得してそれぞれ好きなお菓子を物色した。
「虫モンスターの佃煮かあ。おやつに入るかなあ」
ショウが虫モンスターの佃煮を手に取り悩んでいる。
「おやつ以前に、食いたくねえ……」
と、トイが答えた。
「だけど、虫モンスターの佃煮、魔力増大効果とかあるみたいだし、買う価値はあるんじゃないかしら」
キャサリンが言った。
「一人500ゴールドだから十人だと5000ゴールドあるんだし、手分けして魔力の効果のあるやつは一通り買っとく?」
リャが提案した。
「いいね、そうしよう」
ポールトーマスが賛同した。
「俺は甘いもの苦手だから、おやつは何でもいいし、魔力効果のあるやつにしとくよ」
ワープマンは、効能で選ぶようだ。
「僕も、魔力回復できるやつにするよ。恐怖の遠足だからできる限り対策はしないとね」
カランドが言った。
「荷物多いのは大変そうだから、できるだけ軽いお菓子にしようかしら」
リリイはリリイの肌と同じような白くてやわらかい豆のお菓子を買っている。
おやつ一つでも結構考えることは違うものである。
「キルルは、何買うの?」
リリイが訪ねてきた。僕が気になって手に取ったのは、黒い飴が詰まった袋だった。袋には
「闇飴」と書いてある。
「『闇飴』? ってなあに?」
リリイが聞くと、
「ああ、それはいろいろな効果の飴がごちゃまぜに入ってるんだよ。黒い着色料が塗ってあるから食べるまで効果がわからないんだ」
トイが説明した。
「なるほど……」
僕はこれを買っておいた。
「キルル、遠足のお菓子で博打打つのか、意外だなあ」
トイが驚いていたが、
「いや、なにが起こるかわからない遠足なんだからこういうのも役に立つかもだし」
と、僕は答えた。そう、遠足のしおりには、行き先は書かれていなかった。どこに行くのか当日のお楽しみらしい。
「まあ、そうだな、俺は自分が監修したお菓子にしとくよ」
トイは袋の表面にクイズが書かれたお菓子を手に取った。トイがこんなものを監修しているとは、驚きである。
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