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第60話 休日

 週末、早速僕とスーとアレンの三人で遊びに出かけた。王都ならどこを歩いても楽しめるので、街中を散策することにした。適当に歩いて、アレンの興味を引くものが見つかるのが一番いいだろうと思った。

 王都が一番賑わう式典期が過ぎたとはいえ、春の過ごしやすい気候も手伝って、街中は十分に賑わっていた。人通りも多かったし、珍しい露店も沢山出ている。

 僕とスーは楽しく過ごしていたが、アレンは何を見てもちっとも楽しそうじゃなかった。何もかもを冷めた眼差しで見ている。

 そういえば僕も、式典と適性検査のために王都にやってきた時、適性検査が終わるまでは王都の街に興味も持てず、塞いで過ごしていたことを思い出した。僕は、王都が好きだけれど、そう思えるようになったのは、適性検査で即死魔法の適性が見つかった後に、明るい気持ちで王都を歩いていたからである。

 アレンは、適性検査を受ける前の僕の状態が今もずっと続いているのだろう。いや、適性検査を受ける前の僕じゃない。適性検査の時に「一般魔法の素質がない」と言われ、魔法の素質がないと思い込んだ瞬間の、あの絶望が続いているのだ。そう思うと気の毒でならなかった。

「アレン、何か興味のあるものがあったらなんでも言ってよ。お金なら、年上のスーと僕が出すからさ」

「はい」

 アレンは気のない返事をした。

「賑やかなところは、過ごし辛い……もう少し、静かなところはないですか」

 アレンがそう言い出したため、近くにある公園に向かうことになった。


 公園の入口には「モンスター出没注意」という看板がある。

「ここ、モンスター出るんですか?」

 アレンが不安そうな顔で聞いてきた。

「たまに、モンスターが公園内に巣を作るらしいよ。でもそれはめったにないらしいし、僕も時々来るけど、モンスターはまだ見たことないよ。公園内にも警備の魔法使いと戦士がいるから大丈夫。この看板のおかげでここは人少ないし穴場なんだ」

 僕が説明した。しかし、大丈夫と言ったときに限って、モンスターというものは出てくるものだ。

 公園の隅の草むらの影から、なにか飛び出して来た。野犬のようで、それでいて野犬をさらに凶暴にした感じのモンスターだ。すごい勢いで地面を蹴ってこちら走ってくる。

「うわあああ」

 アレンが悲鳴をあげた。アレンは立ち尽くしてしまっていて逃げる余裕がない。スーも同じ感じだ。警備の戦士が気がついてこっちに向かってくるのが見えたが、今すぐモンスターに太刀打ちしないとアレンとスーが危ない。

 僕は即死魔法を唱えた。アレンまであと数歩のところまで来ていたモンスターは、唐突に息絶え、地面に転がった。

「え?」

 アレンは目の前で起こったことにまだついていけていなかった。眠るように転がるモンスターの亡骸をしばらく見つめたあと、横にいた僕を見つめた。

「キルルさん、今、魔法使いましたよね? だけど、こんな魔法見たことない……一体なんの魔法を使ったんですか?」

「即死魔法だよ」

 もう隠しようがなかったので、素直に答えた。


 警備の戦士がモンスターの亡骸を回収しにこちらにやってきたため、僕達はその場から離れ、公園の隅のベンチに座った。

「即死魔法……聞いたことがない魔法ですね」

「ああ、あまりこの魔法のことは口外しない決まりだから」

「即死魔法って、どんなものでも今みたいに殺せるんですか?」

「僕はまだレベル38だから、なんでも殺せるわけじゃないけど、レベルが上がればいずれそうなるよ」

「な……すごい……」

 アレンは驚愕していた。アレンは、即死魔法にとても興味を示しているように見えたが、それ以上は何も質問してこなかった。口外しない決まり、というのを配慮してくれたのかと思っていたが、そうではなかったことを後で知ることになる。


 


 

 

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