第57話 後輩
今年の適性検査では3人特殊魔道士が見つかり、僕たちには後輩ができた。
一応後輩達とは教室もクラスも別になるが、寮の部屋は同じ階にあるし、ロビーも共用なので、接触する機会は割とある。
一人目の後輩、「計測魔道士ミリ」は、ポールトーマスの女版のような真面目でしっかりした子で、僕達特殊クラスの二年生全員の部屋を訪問し挨拶して回っていた。特殊クラスの一年生のまとめ役をしているようだ。「計測魔法」というのは、身の回りのものを魔法を使って数値測ることができる魔法だそうだ。
二人目の後輩、「天気変更魔道士サン」は、おとなしそうな女の子だが、どうも式典期にリャと接触しているらしく、かなりリャを慕っているようだ。リャと話したいがためによくロビーに訪れている。「天気変更魔法」は、名の通り天気を変更できる魔法だそうだ。
三人目の後輩、「縮小魔道士プチ」は、とても小柄で怖がりの男の子だ。「縮小魔道士」は、これも名の通りで物を小さくできる魔法らしい。
小柄の男の子ということで、親近感が湧いて話しかけたのだが、「即死魔道士」という肩書を聞くなり怖がって逃げるように去ってしまった。最初はショックを受けたが、笑わせ魔道士ショウにも怯え、(むやみに笑わされてトラウマになってしまった)クイズ作成魔道士トイにも怯えているそうで、(クイズ出されて答えられずにトラップにかかりこれもトラウマ)いろいろな要因からほとんどロビーに顔を出さずに寮の自室に籠もっている状態だ。
「おいみんな、せっかくの後輩をびびらせてどうする、いきなり魔法をお見舞いするなよ」
ポールトーマスが注意したが、
「キルルを怖がってたから笑わされてあげようと思ったんだもん」
とショウは反論し、
「クイズを出したら馴染めるかなって思ったんだよ」
トイも反論した。
「な、なんかごめん」
怖がらせた元凶の僕は肩身が狭くなり、謝るしかなかった。
「ま、まあ、慣れてくるのに時間がかかる子もいるわ。寮の部屋が落ち着くならそうさせてあげましょうよ。ロビーに集まらなきゃいけない決まりはないのだし」
リリイが珍しくみんなの会話に割って入って意見を言った。自身も学校に馴染むまでに時間がかかっているので、思うところがあるのだろう。
「そうね。一年生はまだ魔法も使えないし、『魔法をばんばん使ってくる先輩』なんて得体のしれない怖さがあるのかもしれないわ。そっとしておいた方がいいんじゃない」
キャサリンが冷静に言った。
「よく考えたら、僕達『先輩の特殊魔道士』が学校にいないんだよな……余計に対応がわからないな……ネルが入学したころはまだ上の学年に特殊魔道士いただろ。どんな感じだったの?」
ポールトーマスが、横のソファーで寛いでいたネルに聞いたが、
「いや、ネルが先輩の特殊魔道士と交流するわけないか……」
と、ネルの返事を聞く前に結論を出した。
「そうだ、トイが入学したときは?」
「そういや俺も強制入学に気持ちがついていけてなくて、先輩魔道士と交流なんてしてねーや……」
「そうか……」
僕達二年生一同は黙って考えこんでしまった。
「まあまあ先輩方、私とサンはよくして頂いてるのですから、先輩方に問題はありませんわ。プチは私達のクラスメイトですから、私達でなんとかいたしますわ」
と計測魔道士ミリが言ったので、そっとしておこう……という結論になった。なんとも頼りない先輩である。
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