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第51話 補講期

 学校に帰ってきた僕は、コール先生にあずけていたクロの亡骸を受け取り、剥製屋に剥製にしてもらった。クロは、僕が寝ているベッドのすぐ側の棚に置いた。本当にただ眠っているかのようだ。

 リリイにはクロが死んだことをまだ知らせていない。

「リリイ……どうしてるかな……また学校に帰りたくない病にかかってないかな……」

 僕は、クロに話しかけるように独り言を言った。

「学校に帰りたくない病にかかってたら、また迎えに行ってあげよう」

 また馬車の旅も悪くないよね、なんて思っていたが、以外にもリリイは冬休み終了の前日に帰ってきた。

「リリイ! ちゃんと帰ってきたんだね!」

 ロビーに入って来たリリイに話しかけると、リリイは笑っていた。

「ええ、夏休みのときはいろいろ迷惑かけちゃったから」

「そっか」

 僕も笑って返した。

「キルル、クロは元気にしていて? 終業式の日にも顔が見れなくて、気になっていたの」

「あ……クロは、死んだんだ」

 リリイは目を見開いた。

「え? いつ!?」

「リリイが帰省してしばらくしてから」

「あのまま衰弱してしまったの?」

「……うん」

 本当は僕が殺したのだけど、言えなかった。

「そう……可哀想に……」

 リリイは涙ぐんでいた。

「うん、僕も間違ってた。扱いのわからないモンスターなんて、飼っちゃいけなかったんだ。退治されるより、苦しい思いをさせてしまった」

 僕も涙がこみ上げてきた。

「キルル……」

 リリイは気の毒そうな表情で僕を見つめた。僕はリリイにこんな目で見てもらう資格なんてない。彼女には、僕がただペットを悼んでいるように見えているだろう。

「大丈夫だよ、もう死んでからだいぶ時間が経ってるし、そんなに心配そうにしないで」

「そう……」

「そうだ、リリイは補講期は何するの?」

 リリイに同情されるのが心苦しくなって、僕は話をそらした。


 冬休みが終わると、補講期に入る。補講期というのは、前期と後期に取りそこねた単位を取ったり、魔法のレベルを上げたりする補習期間である。僕は特殊魔法のレベル上げも進級レベルになっていたし、一般教養の単位も取れていたから、実は補講期は特にやることがない。

「私は、一般教養の単位をもう少し取らないと」

「そっか。頑張ってね」

「キルルは?」

「僕は、特にやることないんだ。だから即死魔法のレベル上げでもしておくよ」

「あら、一般教養の単位も全部取ったの? すごい」

「いや、僕は一般魔法の授業ほとんど受けないから、一般教養の授業を人よりも多く入れられただけだよ」

 そう、他のみんなは特殊魔法に一般魔法に一般教養と忙しいため補講期に帳尻を合わせることになるが、僕はその必要がなかったのだ。すごいというよりできることが少ないのである。


「資格職の方の講義は取らないの?」

 補講期は、資格職の資格を取るための講義がある。資格職になると、魔道士だけではなく、他の職業も名乗れるようになるのだ。例えば、僕達の適性検査をしてくれた『診断士』も、魔道士とは別の職種だが魔道士が兼任している職業だ。コール先生の『モンスター情報士』もそれにあたる。いくつかの職業資格の取得講座が補講期には行われる。ただ、資格職の資格を取れるかどうかも素質によるものが大きく、素質がないものは取ることができない。

「ああ、僕は一般魔法使えないから、資格職も取れないんだ」

 ほとんどの資格職は一般魔法が使えるのが大前提のものばかりだ。それ以外だと「ずば抜けて頭がいい」とか、「ずば抜けて身体能力が高い」とかが前提になってて、どれも取れないものばかりだった。

 僕は結局、「即死魔道士」以外の肩書は名乗れそうにないらしい。

 逆にリリイは取れる資格はかなりありそうだったが、今の状態に加えて取れる資格をすべて取るのはきついだろう。世の中うまくいかないものである。

「そう……じゃあキルル、一般教養でわからないことばかりだから、助けて頂戴」

「え? 僕もたいしてできないけど……」

「単位落としてばかりの私に喧嘩売っているの?」

「いやいや、違うってば!」

 リリイは一般教養の話になると一気に機嫌が悪くなるタイプだということにようやく気がついた。リリイも案外得手不得手激しい……というか、実は感情の起伏が案外激しいんじゃないだろうか。そういえば、リリイのお母さんも、激しい性格だって校長先生言ってたっけ……






 

 

 


 


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