第4話 国立魔道士養成学校案内
その学校は、灰色の石壁で出来ていた。各部屋に四角い窓がついており、五階建てのようだ。
校舎の横の長さも、縦の長さとほぼ同じぐらいの長さで、立方体のような形の校舎だと思われた。僕が今まで通っていた学校は木造の一階建てだったから、規模の違いにおののいてしまった。校舎の周りは高い塀に囲われ、僕と校長の前に大きな校門がある。校門の横に大きな文字で「国立魔道士養成学校」という看板があった。
「ここがあなたの学び屋ですよ。さて、中に入りましょう」
校長が校門を開けて、正面玄関であろう大きな扉に向かう。その玄関に入ると、なんと五角形の部屋だった。部屋の五つの角に、一つずつ石像が立っていた。僕の目の前の角には校長先生そっくりのピエロの石像がある。その石像の近くの壁に、
「校長先生を選んでください」
という言葉が書いてある。校長先生は、目の前の石像だと思ったが、他の四つの石像も見た。
一つは、髪の長い若い女性だった。ローブを着ていて、先端に丸い水晶がついた杖を持っている。
もう一つは、髪が逆立っている若い男性で、鎧のようなものを着ていて、トゲトゲした杖を持っている。
もう一つは、髪が長く、草の冠を被った女性だった。ワンピースを着ていて、木の枝を持っている。
最後の一つは、恰幅のいい男性だった。オーバーオールを着ていて農夫のようだ。右手にクワ、左手にスコップを持っている。
「校長先生の姿をした石像の前に立ってください」
校長先生に言われた通り、目の前のピエロの石像の前に立った。すると、石像が後ろに動いた。石像があった場所の床に魔法陣がある。
「乗ってください」
魔法陣に乗ると、またしてもどこかに瞬間移動した。
移動先は、暗い廊下だった。天井にある小さなランプだけが明かりで窓もない。
「校長先生、ここは?」
「特殊クラスの寮になります。校舎の地下になります。キルルくんの部屋に案内しますね」
校長先生の後に続いて廊下を歩く。床はつるつるしてランプの光が反射している。いくつかの部屋のドアを通り過ぎる。
「実はね、わたくしの姿がピエロに見えるのは、特殊魔道士だけなんですよ」
「ええ!? 他の人は違うんですか?」
「ええ。玄関に他の石像があったでしょう。特殊魔道士以外の人はピエロ以外のあと四つのどれかに見えます」
「ということは、僕の両親には校長先生はピエロに見えてなかったんですか?」
「そうなります。明日ご両親に会ったら聞いてみてください」
「あの、なぜそうなるんですか?」
「わたくしは、『染色魔道士』なんです。これも特殊魔道士です。人によって見え方が違う染料が作れます。診断士が着ていたローブも同じです」
「なるほど……」
「着きました。ここがキルルさんの部屋です」
木製の扉を開く。思ってたよりも広い部屋だった。学校の教室ぐらいある。窓はなかった。四方の壁の一つは大きな本棚で埋まっていたが、本は一冊も入っていなかった。本棚の向かいに簡素なベッドが一つあり、隣に勉強机とクローゼットがある。それ以外は何もないため、かなり空きスペースがある。
「広いですけど、一人部屋ですか?」
「ええ。家具は、校内のカタログからなら経費で買えるので、またカタログ見てください。この部屋に荷物を置いてください。次に特殊魔道士が交流できるロビーに案内します」
廊下の突き当たりの部屋に案内された。中は窓もないのにとても明るい。飲食店みたいに大きな机と椅子のセットがいくつか並んでいた。奥の壁に本がたくさん詰まった本棚と、近くにソファーがある。
そして、その奥のソファーに男の子が二人座って会話していた。
「あの二人も、今週の適性検査で特殊魔道士と判定された新入生です。紹介しましょう」
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