第37話 花鳥園
「さあ、スー、食べて食べて」
僕はバトルロワイヤルの賞金でスーにご飯を奢っていた。
「いいの?奢って貰っちゃって」
「いいんだよ。賞金で何か外食したかったけど僕じゃいいお店わかんないし」
「そっか。とにかく優勝おめでとう!」
「ありがとう!」
スーが教えてくれた少し高級な料理店で、僕も自分を祝うべく好物をたくさん食べた。普段は寮の食堂で食べてるから、外食は新鮮で楽しい。
「スーは、最近学校はどう?」
「勉強難しいよ。単位取るの精一杯。僕勉強もたいしてできないし」
「わかる。僕も勉強難しいよ……一般教養辛い」
僕も、一般教養でちゃんと単位を取って高校卒業資格も取ってくれとお母さんもお父さんも言うので、なんとか頑張っているが、本当にギリギリで単位を取っていた。バトルロワイヤルの副賞、ロッドより一般教養の単位が良かったかも……。
「あ、あと彼女できたよ」
スーはサラッと言ったが僕はフォークを落とした。
「ええええー!?」
「そんな驚かなくても……僕そんなに彼女できなさそう?」
「ううん、そうじゃなくて、羨ましくてつい」
「え? キルルって彼女欲しいの? 女に興味ないかと思ってた」
「そんなわけないじゃん」
思わず僕は笑った。
「そうなんだ? 僕の周り、彼氏欲しがってる女の子結構いるし、紹介しようか? 国立魔道士養成学校に通ってるってだけでも多分モテるよ」
「ありがたいけど、そういうのはいいよ、その、僕は今好きな子がいるから、その子と仲良くなりたいし」
「へえ! 好きな子いたんだ!? クラスメイト?」
「うん」
「そうだったんだ。キルルってばそういう話しないんだから。どんな子なの?」
「色白でかわいいよ」
「あはは、見た目が好きなの? その子も『特殊魔道士』?」
「うん、『蘇生魔道士』だよ。僕と真反対の魔道士」
「『蘇生魔道士』までいたの! 死んだ人生き返せるってことだよね?」
「そうだよ」
「……てことはさ、キルルが殺したものをその子が蘇生して、キルルまた殺してそれをまた生き返して……を繰り返したら、二人ともすぐレベルアップしない?」
「それ僕も考えことあるんだけど、それはまずいんだよ。その子さ、自然も動物も好きな子で、レベルアップのために殺して生き返してなんて、惨たらしいことできないよ。そんなこと考えてるって知られるだけで嫌われそう」
「そうか、『蘇生魔道士』だから、キルルと性格逆なのか! わあこりゃたいへんだ!」
「でしょ? 仲良くなるっていうか、嫌われないようにするのでもう精一杯なの……あ!」
「どうしたの?」
「その子、王都にまだ馴染めてなくてさ、未だにホームシックなんだ。王都でどこかいいところに案内したいんだった! スー、何かいいところ知らない?」
「おお、そうきたか、たしかにこれで上手く行けばその子のホームシックも治って仲良くもなれるし一石二鳥だね。そうだな……」
スーが教えてくれたのは、「王都花鳥園」だった。下見を兼ねて、スーと二人でやってきた。
「ここは、エリアが四つに別れてて、この国の東西南北の花鳥が集まってるんだ」
「へえ……」
花鳥園の門と塀は高く、入口にいるときは中が見えなかった。
中に入ると、こじんまりした空間に、それはそれは色とりどりの花が咲き、綺麗な小鳥が飛び交っていた……。
「や、やばい!」
「どうしたの? キルル」
「全部綺麗すぎる! 全部枯らしたい! 殺したい! 剥製にして持って帰りたい……!」
「ええー!? だめだよ! 怒られるって!」
「だ、だよね! ここは出よう!」
僕とスーは慌てて外に出た。もう花鳥園には行かない。
「もしかして、リリイが好きな場所は僕が嫌いな場所なんじゃないかな。どうしよう。デートもままならないかも……」
「まあまあ、下見しといてよかったじゃない。また探しとくよ」
スーは僕を慰めた。
「うん……」
僕はしょんぼりしながら寮に帰った。ロビーに行くと、
「キルル、待ってたよ」
カランドが話しかけてきた。
「今度、音楽学校の文化祭で、演奏会やるんだ。よかったら、見に来ない?無料だし」
「キルル、一緒に行こうよ、リリイも誘ったし」
ショウが言ってきた。
なるほど、別に二人きりじゃなくてもいいか、みんなでどこかに行くだけでも楽しいかもしれない。
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