第36話 バトルロワイヤル後日談
「バトルロワイヤル優勝。特殊クラス、即死魔道士キルルさん。おめでとうございます」
僕はホールで表彰された。金一封とトロフィーと、「武器屋でロッドを無料で一個オーダーメイドできる券」をもらった。
続いて二位のショウと三位のワープマンが表彰される。
二人が表彰されたのを横目に見ながら僕は悩んでいた。優勝したのはいいけど、ここからどうしよう。僕の非人道的な部分を晒してしまい、僕は焦っていた。ショウとリリイは仲がいい。僕がやったことをリリイが知るのは時間の問題だ。ていうかもう知っているかもしれない。表彰式の壇上の上からリリイを見た。リリイ穏やかな顔では今表彰されているショウに拍手を送っていた。
「続いて優勝者予想を当てた人の発表です。まず優勝者予想ですが、キルルくんを優勝予想した人は十名いますね。こちらは正解者で賞金山分けになります」
僕はまずこれにびっくりした。僕が一位予想をしていた人間が十人もいたとは。やっぱり『即死魔道士』という強そうな肩書きからなんかやるんじゃないか、と期待してくれた一般魔法クラスの生徒が結構いたようだ。特殊クラスからは変身魔道士キャサリンが票を入れてくれていた。キャサリンとは普段あまり関わらないだけに意外だった。
「それから、一位二位三位全ての順位を当てた人も一名いますね。特殊クラス、変身魔道士キャサリンさんです」
しかも、キャサリンは、三位までの予想も的中させていた。キャサリンが表彰されに壇上に上がってくる。そのとき、隣にいたショウが、
「あーっ!」と叫んだ。僕はびっくりしてショウを見た。
「あの、文化祭実行委員のエリーゼって、キャサリンでしょー!」
「正解。よくわかったわね」
校長先生から金一封を受け取りながら、キャサリンがこちらを見た。少しずつ顔が変わる。エリーゼだ。変身魔法を使って実行委員になりすまし、特殊クラスの生徒の動向を探っていたのか!と察したが、キャサリンの行動はさらにその斜め上を行っていた。
「ワープマン辺りが優勝しても、予想者は賞金山分けになってたいして賞金もらえないわ。キルルやショウ辺りのダークフォースに勝ってもらわないと……」
なんとキャサリンは、賞金を独占するため、期待度の低い僕とショウが善戦するように誘導していたのだ!キャサリンがこんなに計算高い性質だとは、知らなかった。
「なーるほど、キルルが勝つのに必死だったのも、キャサリンになんか言われたからなんだ?」
ショウは僕に聞いてきた。
「言われたというか、文化祭実行委員の予想で『案外弱い』って書かれたのが悔しくて、つい……」
「そう……」
「ショウ、ごめん。勝つためとはいえ、不快な思いさせて」
「いいよ。キルルの気持ち、ちょっとわかるもん」
「え?」
「私のことも、『笑わせ魔道士』っていう響きだけで勝手に弱いと思う人が多いの。弱いと思うだけならまだましで、うちのお母さんなんて『笑わせ魔法』をくだらないと思ってるわ。私もバトルロワイヤルで、『笑わせ魔法』の凄さ、示したかったの」
「そっか……」
ショウも僕と似たようなところがあるんだな、と思った。
「ショウ、猫の首のこと、リリイに言った?」
「ううん。言われたくないの?」
「うん。印象悪くなるでしょ」
「うん、わかったわ!じゃあ『下半身露出されてびっくりした』ことにしておくわ」
「いや待って! それもっとダメなやつ!」
ショウはやっぱりズレている……僕とショウの会話を横で聞いていたワープマンが笑うのをこらえていた。
結局、バトルロワイヤルの細かい戦況は、後に発行された文化祭実行委員の新聞で伝えられたが、僕は飛び道具でショウを弾き飛ばしたことになっていた。ショウがキャサリンに言って、キャサリンが情報操作してくれたのだ。
ワープマンを陥れたことについては、「僕は草木のみを枯らす魔法陣を書いたのを、ワープマンが鳥が死ぬ魔法陣と誤解したのであり、実際は何も傷つけていない」という理屈で乗り切った。本当はあの魔法陣は、鳥も死ぬやつだったけど、実際何も殺していないからまあいいだろう。
こうして僕はまずいことをうまく隠蔽した。なにかを得た代わりに、なにかを失っている感じがするのは、気のせいだろうか。
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