第27話 合同帰省の旅2
合同帰省の旅二日目が始まった。昨日と同じように歩きだす。道のりは、昨日とさほど変わらないので、出てきたモンスターは昨日のように一般魔法で倒されてゆく。二日目も僕の出番がなかった。
夜は、道中にあった小さな村の宿に泊まることになった。男女別に一部屋ずつ部屋を取り、雑魚寝することになった。男子は8人だ。横に広い部屋だったので8人横並びになった。
「なんだか修学旅行みたいだね」
横で寝ているカランドは嬉しそうだが、僕は修学旅行にろくな思い出がない。部屋の一番端にこれたからよかった。他の生徒に囲まれるなんて嫌だった。
今の学校は寮が一人部屋だからなんとかなっているのであって、こんな部屋だったら多分発狂していたと思う。一般魔法クラスの生徒は二人部屋なんだそうだ。そう思うと僕たち特殊魔道士はかなり優遇されているのがわかる。まあ皆能力がばらけているから同じ部屋だと確実に支障が出るから、一人部屋にせざるを得ないのだろう。
次の日出発し、歩いていると、道端にある草むらの中から女の子の声がした。
声の方を見ると、草むらから女の子の頭だけ見えた。草むらは、腰ぐらいまでの高さだから、あの女の子は10歳ぐらいだろうか。
「おい、君、どうしたの」
ポールトーマスが叫んで女の子に声をかける。みんな、女の子の方に近づこうとしたが、
草むらの草は棘だらけで、なかなか進めない。
こんな草むらの中にいたらあの女の子は傷だらけじゃなかろうか。一体なにをしているんだろう。
「妹が、この辺にいるはずなの」
「え?」
「一緒に遊んでたんだけど、いつの間にかいなくなっちゃったの。だけどさっき、この辺から妹の声が聞こえたの」
「草が邪魔だな。これじゃあの女の子も妹も棘でケガしてしまう。火魔法で燃やすのは危険だし、よし、キルル、この辺の草、枯らせるか?」
「任せて!」
僕は草を枯らす呪文を唱えた。周りの草が一気に生気を失い、茶色くなると同時に地面に倒れてゆく。即死魔法を始めて目の当たりにした一般魔法クラスの生徒の歓声があがる。そのあとにポールトーマスが風魔法を唱えると、枯れた草が吹き飛び、一気に視界が開けた。僕たちの先にさっき話した女の子が立っていた。そのさらに向こうに、もう一人3歳ぐらいの小さな女の子がいた。あの子が妹だろう。
「あっ! ユリア!」
姉が妹に気づき、近づこうとしたが
「待て! 近づいちゃ駄目だ!」
ポールトーマスが叫んだ。よく見ると、妹の近くにモンスターがいる。見た目はリスのようで小さくかわいいモンスターなのだが、実は凶暴というたちの悪いモンスターだ。妹はモンスターと遊んでいるつもりのようで、モンスターを撫でている。早くモンスターを倒さないと危ない。
「あのモンスターも殺そうか?」
僕が言うと、ポールトーマスが頷いたので呪文を唱えた。モンスターはパタリと地面に倒れた。妹がモンスターが急に死んだのにびっくりして泣き出した。姉が妹の方に駆け寄る。僕たちも姉妹に駆け寄った。姉も妹も、棘で怪我をしていたが無事だ。他のみんなが水魔法で姉妹の怪我を直した。
「ありがとう」
姉の方がお礼を言った。この姉妹は僕たちが昨日泊まった村の子で、姉妹を村に連れて行くととても感謝された。僕はさっきの魔法でかなり消耗してしまったので、その村にもう一泊させてもらった。この日の宿泊費はただにしてもらえて、夕飯もごちそうしてもらえた。
「キルル、ありがとう。助かったよ」 「おかげでおいしいもの食べられたよ」
村の人と仲間から礼を言われ、僕はこの旅でようやく魔道士らしいことができて満足した。
そして、翌日無事にノースリタシティに到着した。
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