第25話 終業式の日
次の日、僕はいつものようにホームルームが始まるのを教室で待っていた。そしていつものように、ポールトーマスがネルを教室に引き連れてきた。だけど、恋愛のことがさっぱりの僕が見てもわかるほどに、ポールトーマスとネルの関係はあからさまに変化していた。ほんの昨日まで、ポールトーマスは、ネルの手首をひっぱっていたのが、今日はネルがポールトーマスの腕に絡んでいる。絶対昨夜何かあっただろ!
「今日で前期の授業は終了です。前期は皆さんよく頑張りましたね。このあとは終業式ですよ」
という校長先生の言葉をそこそこに聞いて、
ホームルームが終わると数人でポールトーマスの周りを取り囲んだ。僕とトイとショウだ。カランドとキャサリンもこの様子に気がついて寄ってきた。逆に言うとこのメンツ以外はあまりクラスメイトの恋愛に興味ないタイプだと言える。リャとワープマンはとっとと終業式が行われる部屋に向かったし、リリイもゆっくりではあるが移動の準備をしていた。
「おいおいおい、一晩で何があったんだよお前ら」
トイが先陣を切って聞くと、
「やめてくれよ。わざわざ聞かないでくれ」
ポールトーマスは少し苦笑いしてみんなを追い返した。困っている感じではあるが、表情はどこかほころんでいる。いいことあったのが丸わかりだ。
「おい、ネル、何があったんだ」
トイが近くにいたネルに尋ねたが、ネルはいつの間にかちゃっかり10歳児まで若返っていて、
「わかんなーい」
と返事した。
「……クソ真面目学級委員のふりして、やるねえー」
みんなでポールトーマスを小突き回した。
「みんな、終業式遅れるから、ほら、ネルも行くよ」
ポールトーマスはネルの手を引くと、ネルはまたちゃっかり元の姿に戻った。僕たちはベタベタしている二人の後ろで茶化しながら歩き、終業式に向かった。
僕たちの近くをリリイも歩いていた。僕たちの様子を見て少しだけ笑っている。僕は少し話しかけてみた。
「リリイは、夏休みどうするの?故郷に帰るの?」
「ええ」
「リリイの故郷って、ここからどのぐらいかかるの?」
「馬車で10日ぐらいよ」
「結構遠いんだね」
「ええ。だけど、帰れて嬉しい」
リリイはまだ王都に馴染めないのか、故郷に帰る話をしだすと表情が明るくなった。僕は夏休みの間リリイに会えないのは寂しい限りだが、リリイは故郷のことで頭がいっぱいのようだ。僕と会えないことなんて、どうとも思っていないんだ。
ポールトーマスはどうやってネルとあんなに仲良くなったんだろう。全体的に能力が高くて彼女もいて、羨ましい限りだ。
リリイは、終業式が終わると、すぐに王都を出発して故郷に帰ってしまった。リリイに会えるのは一ヶ月後だろう。
北地方出身者の合同帰省は三日後だ。僕は、スーに会って少し話した。スーとも、夏休みの間会えないから、いろいろ話しておいた。
それと、帰省のときに魔法を使うから、少しでもレベルを上げたくて、王都のすぐ近くをうろうろしている小さなモンスターを殺して回った。帰省の日にはレベル12になっていた。
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