第131話 非難
「いや、こう言っちゃなんだけど……爆弾二つも落とされると、リアクションに困るもんだな……もうどっちから突っ込んでいいやら……」
トイが静かに言った。
「ノースリタの事件のことは知ってたし、キルルが夏休みにノースリタにいたから、もしかしたらとは思ってたけど……」
そう言ったのはポールトーマスだ。
「そうだな。入学する前かな? キルルの親御さんが、俺らと遊んでたの見て、ずいぶんびっくりしてたし、キルルって地元に友達いなかったのかな? と思ったんだよね。それでキルルの地元の人間が連続死して、キルルの即死魔法がレベル100になるってことは、そういうことかもとは思ってたよ」
トイが続けた。やっぱりみんな、うすうす気がついていたようだ。
「即死魔法は誰か殺さなきゃレベル上がらないんでしょ。怖い話だけど理解できなくはないわ。それより……校長先生とってどういうことなの。リリイはどうしたの」
キャサリンが言った。みんな思いの外冷静でびっくりする。
「まあまあ皆さん、キルルくんももう大人だし、誰と付き合おうがいいじゃないですか!」
これを言ったのは、他でもない校長先生である。
ロビーが静まりかえった。僕ですら凍りついた。
「校長先生がそれ言う!? 当事者っしょ!」
リャが突っ込んだのを期に、みんなが無責任なピエロに向かって非難を始めた。
「そうよ! リリイが可哀想だわ!」
ショウも怒り出した。
「『生徒と先生』の組み合わせはどう考えても先生が悪いだろ!」
ワープマンまで怒り出した。
「せめて卒業まで待ってくださいよ先生!」
ポールトーマスが言った。ネルも怒っている。
「ホームルームに来るように言ってあげてくださいよ! みんな心配してたのに!」
あの穏やかなカランドも続いた。
校長先生をみんながタコ殴り……いや、タコ魔法攻撃をした。
「みんな! 待って! やめてよ!」
僕は先生に抱きついて思わずかばってしまった。
「キルル……」
「みんな、僕が悪いんだよ。さっきの人型モンスターが言った通り、僕が愚かだったから……即死魔法使いたさに夢中でどんどん人殺して、そのくせそれがみんなにバレるのが怖くて、唯一事情知ってる先生に流されちゃったんだ。嫌なら『即死魔法』で先生殺して身を守れるもん! 全部僕が選んだことなんだよ!」
気がつけば僕はぼろぼろ泣いていた。みんな静まりかえった。
「たしかに、先生がキルルを無理矢理……ってのはありえないわな……」
トイが言った。
「だけど、リリイは……あれ? リリイは?」
ショウがリリイがいないことに気づいた。
「さっき自室に入って行ったよ。そりゃ、キルルのこんな話、聞きたくないでしょ……」
キャサリンが言った。
「僕、行ってくる」
僕は、リリイの部屋に向かった。
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