第128話 堕落
僕はどんどん堕落していった。校長室に入り浸り、ホームルームにも出ずに校長先生が仕事のときは寝て、校長先生が帰ってきたらお酒飲んでセックスして、最低な日々が続いた。
「『殺し屋』って毎日毎日人殺してるわけじゃないんだね」
僕はいつものごとくベッドで先生と戯れていた。
「そうですね。物足らないですか?」
「うん。殺し屋を手伝ってもせいぜい一週間に一人しか殺せないもん。それ以外の日やることないよ。モンスター退治は、他の人のレベル上げのために譲るように言われちゃうし」
「先生とこうやって遊べばいいじゃないですか
。これはこれで楽しいでしょう?」
「うん、楽しーい! えへへ」
僕は先生にしがみついた。先生は僕をとことん甘やかした。何を言っても何をしても、受け入れてくれた。セックスの合間にたまに外に出れば人殺しという最低生活を送っていたというのに、それでも可愛がってくれた。このときの僕は、レベル上げが終わり、ここの学生としてはもうやることもなし、やりたい人殺しもせいぜい週一で、その間の空虚な時間は先生とのセックスでしか埋められない状態だった。僕はゲイではないから、先生とのセックスが全面的に好きなわけじゃなかったし、不快な部分もあった。だけどだからこそ刺激も強くて、僕の殺意の紛らわすのにちょうど良かったのだ。
最低なのはわかっていたけど、好きなように過ごし、今まで表に出せなかった感情を垂れ流す生活は楽しくて、やめられなかった。
「先生、なんで僕のこと好きなの? 僕、最低だよ。本当は自分でもわかってるよ。『旧即死魔道士』の代わり? 『旧即死魔道士』が死んじゃってさみしいの?」
「そうじゃありませんよ。そもそも『旧即死魔道士』は、君とは全然似てません。代わりになりませんよ」
「そうなんだ? どう違うの?」
「何もかも、違いますよ。見た目も性格も」
「ふーん? じゃあ僕の、何が好き? どこが好きなの?」
「君は、危なっかしい」
先生は、上に乗っている僕を抱き寄せた。
「少し目を離すと、心配でたまらなくなるよ。いつも君のことばかり考えてしまう。恋人として、側に置いておく方が、どんなに楽か。『旧即死魔道士』は、不良だったけど、『こうありたい』という信条はしっかりしていた。15歳のころからね。君はそれがないから危うい」
「信条?」
「はい。君は、優しい両親の期待に応えたいのか、いい子でいようとする。両親の『こうあってほしい』という姿を演じてるんだね。そして、自分自身は本当はどうありたいか、まだ向き合っていない。自分のことがわかっていないというか、受け入れきれていないのさ。だから急にタガが外れたように突拍子もないことをしてしまう」
先生は、僕の顔を両手で包んで、僕を見つめる。
「君は、どうありたい? どう生きたい? 例えその答えが『セックスと殺しだけしていたい』でもいいから、ちゃんと考えてごらん。どんな生き方をしても受け入れてくれる人がいることは、もうわかっているだろう?」
「せんせー……急にどうしたの? 先生みたいなこと言っちゃって」
「私、先生ですってば」
先生は笑っていた。
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