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第127話 最低

「ずいぶん落ち込んでくれますねえ。昨夜はあんなに楽しそうだったのに」

 先生はベッドに入ってきて僕に覆いかぶさった。

 スーが離れて行って、リリイともクラスのみんなとも気まずくなって、レベル上げという目的がなくなって、心が弱っているところをまんまと狙われてしまった。なんて情けないんだろう。

「先生、まだやるの?」

「そうしたいところですけど、ホームルーム行かないと」

 先生は僕の額に軽くキスした。

「この後に何食わぬ顔でホームルームに行くんだ? ピエロの格好で?」

「何食わぬ顔が嫌なら、みんなに何もかもぶっちゃけましょうか?」

「やめてください」

 僕はぷいとそっぽ向いた。

「先生って最低。生徒に手を出すのって駄目でしょ」

 僕が流されたのが悪いのはわかっていたけど、先生のせいにせずにはいられない。

「キルルくんはもう18歳で成人してるし、レベル100になってますからね。『先生』の役目はもう果たしましたもん。好きにしますよ。周りが駄目って言おうが知りません」

「先生、ほんとに最低」

 今度は心からそう思って言った。

「君こそ、最低ですよ。かわいい顔して殺人狂ですもの」

 僕は先生に向き直った。見上げると先生の綺麗な顔があった。

「最低同士、仲良くしましょう?」

 先生は今度は唇にキスしてきた。僕も今度は目を閉じて受け入れた。そうだ、たしか昨夜もこんな感じ。

「じゃあ先生ホームルーム行ってきますね。キルルくんはここで好きにしてていいですから。テーブルに軽食置いてあるのでお腹空いたら食べてくださいね」

「うん」

 先生が部屋から出ていくと、僕はベッドで一人うずくまった。これからどうしよう。リリイにどんな顔をすればいい?いやもうどんな顔もできない。リリイの元へは戻れない。そう思った。先生はああ言ったけど、僕としてはこれは大量殺人より大きな過ちだった。殺人は僕がやるって決めてやったからあれでいい。最低だけど過ちとは違う。強いて言えば殺すペースが早すぎた。

 ていうか、小説ではこういうの、朝起きたらやったと思ったけど実は違ったってオチじゃない?なんで僕の人生では事実として起こるの。本当に小説ってたいしたことない。現実の方がとんでもないことが起こると感じた。


 僕はまだ眠かったのでそのままベッドで眠った。もうどこか諦めの境地だった。夕方まで眠って過ごし、目が覚めると先生が帰ってきていて、またお酒を飲んで、そして昨夜と同じ流れになった。こうして、僕はぼんやりと先生の恋人になった。

 最低かつ、楽しい日々の幕開けだった。

 

 

 







 



 

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