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第126話 新しい過ち

「これとかどうです? キルルくん好きそうじゃないですか?」

 校長先生は、蛇がまるごと一匹入った大きな酒瓶を持ってきた。

 僕の目の前の大きなテーブルには、たくさんのお酒が並んでいた。チーズや干物などのつまみも大皿に盛られ置かれている。

 校長室って、二つあるらしい。一つは僕が以前入ったスペースで、来客用だ。もう一つは先生が寝起きするスペース。僕は今先生が寝起きしている方の部屋にいる。この部屋は、大きなソファーの前に大きなテーブルがあって、奥に大きなベッドがある。壁は来客用と同じく赤色だ。本棚には難しそうな分厚い本が並んでいた。

 校長先生は、いつの間にか着替えて、素顔にシャツとズボンにガウンを羽織り部屋着姿になって、どんどんお酒を運んでくる。僕はソファーに座って飲んでいた。

「先生、こんなにいっぱい飲めません」

 僕はまだ果実酒を少し飲んでいるだけで、酔っていなかった。

「全部飲まなくていいですから。気になるのがあったら遠慮せず飲んでください」

 先生は僕の横に座り、ウイスキーの水割りを飲んでいた。煙草も吸っている。

 校長室の向こうからノックの音がした。はいはいと言って校長先生が応対しに隣の来客用の部屋に行く。

 それにしても、校長先生の部屋の豪奢なこと。しばし一人になった僕は部屋を見渡した。

 渋い茶色のソファーは王宮で座った椅子並にふかふかしていて体が沈みそうだし、目の前のテーブルは、ピカピカ光っていて、脚の部分に植物のような繊細な柄が彫られている。壁には本棚の他に絵画が数点、そして後ろのベッドは天蓋がついている。天蓋のベッドなんて小説の中のお姫様が寝てるやつじゃないか。先生ってば普段あんなところで寝てるのか。結構変わった人だなあ、と思いながらソファーに膝を乗せ、逆向きに座ってベッドを観察していると、背後から先生の声がした。

「キルルくん、ご飯ですよ」

 振り返ると、両手に料理が盛られた皿を持った先生が立っていた。


「夕食の時間に、いろいろ料理持ってきてもらうように食堂に頼んでおいたんですよ」

 テーブルに置かれた料理はどれも美味しそうだった。

「好きなだけ食べてください」

「はい、じゃあいただきます」

 美味しい料理のおかげで僕のお酒も進みだした。ふわふわした楽しい気分になってくる。

「えへへ、おいしー」

 気がつけば僕はすっかり上機嫌になっていた。レベル100になってから、こんなに楽しい気分になったのは初めてだ。

「楽しそうでなりより」

 先生は僕の髪を触り始めた。先生も少し酔っているのかもしれない。

「せんせー、誰か悪い人いないですか? 元クラスメイトもう全員殺しちゃってつまんない」

「キルルくん、もしかして最近塞いでたのそれが原因ですか?」

「うん。それだけじゃないけど、さっき話してたことも本当にだけどさ。だけど殺す相手がいないのが一番辛いの。魔法使えないなんてつまんない」

 僕はお酒の影響で本音が思わず出てしまった。

「そうですねえ。あまり大きな声じゃ言えませんが、先生のお友達に殺し屋がいるので、その人達に紹介してもらいましょうか。本来夏休み終わった後のレベル上げのためにキルルくんにこの話するつもりだったんですよ。夏休み中にレベル100になっててびっくりしましたけど」

「ほんと! ありがとうせんせー!」

 自分でも最低だなと思う発言をしているのに、先生はにこやかに僕を眺めている。僕の髪を触り、頭を撫でている。

「先生は、僕のこと、きらいじゃないの?」

「嫌いどころか、好きですよ」

「好き……? 恋愛的な?」

「はい。私に友情なんて概念はありません」

 唐突に唇を塞がれ、ソファーに押し倒された。

 僕は、今頃になって旧即死魔道士と先生がデキていたことを思い出した。もしかして僕のことも……と考えたことがないわけじゃなかったが、自意識過剰な気がして考えずにいた。だけどやっぱりそうだったのか。

「先生、待って、僕にはリリイが……」

 リリイと同じ色をした先生の綺麗な顔を見て、リリイを思い出さないはずがない。

「リリイさんと今後どうやっていくんです? あんな状態で。君もわかっているでしょう。この先ずっと殺し好きの本性を隠してリリイさんと付き合い続けるなんてできませんよ。一時的に付き合えただけでも奇跡みたいなものです」

「う……」

 先生は僕の唇から首筋を指でなぞりながら言った。

「先生なら君のすべてを愛してあげられる。先生の方にいらっしゃい」

 もう一度キスされた。舌の柔らかい感触が心地よかった。


「んー? ここどこ?」

 朝、目が覚めると、知らない天井が目の前に……いや、これは天井じゃなくて天蓋……ベッドの上だ。服は着てない……

「あああああ!!!!」

 思わず叫ぶと、天蓋のカーテンが外から開いた。先生だ。薄手の白いローブを着ている。

「キルルくん、どうしたんですか!? まさか、昨夜のこと何も覚えてませんか?」

「覚えているから叫んでるんじゃないですか ああああ!!!」

「よかった、覚えてるんですね。楽しかったですねえ」

 うん、全部覚えている。ソファーでキスされたあと、先生になんか上手いこと言われてベッドまで連れ込まれて、ベッドまで来て先生が大人しく寝るわけもなくいろいろと……

「うわー! どうしよう! リリイがいながら完全に浮気だし! ていうか先生とだし先生男だし! こんなの元クラスメイト皆殺しよりまずいよー!」

「いやいや元クラスメイト皆殺しよりかはマシじゃないですか? キルルくんは本当に狂ってますね。あははは!」

 先生は笑ってるけど、笑いごとじゃないー!!






 




 




 

 

 

 







 



 

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