第121話 レベル100
僕は多分もうレベル100になっている。だけど、夏休みのたった一ヶ月でレベルがこんなに上がってしまったという事実は、なかなか表沙汰にしづらいものがあった。夏休みに相当な数の人を殺したことが感づかれてしまう。リリイにも、校長先生にも、クラスメイトにも不審がられそうだ。さっきレベルを測ったとき、誰も見ていなかったし、とりあえず、まだレベル82ということにしておこうか……と考えながら、学校への道を歩いていた。
「あれ……?」
学校の横に、見かけない店があることに気がついた。煉瓦でできた、黄色い屋根の可愛らしい一軒家。
夏休みの間に出来たのだろうか。けどさっき学校に来たとき気づかなかったのはなぜだろう。
「特殊魔道士喫茶店」
という小さな文字が、扉のところに書かれていた。よく見ると、さらに説明が書いてある。
「特殊魔道士だけが利用できる喫茶店です」
「へえ……?」
じゃあ僕も入っていいんだよね……気になった僕は、木の扉を開いた。
カランカランと、喫茶店らしい音が響いた。
中は、壁が煉瓦で、カウンター席のみの小さな店だった。
カウンター席に一人、客が座っていた。
「校長先生……」
校長先生だった。素顔だ。髪は白くて、今日のコートは赤かった。煙草を吸っていて、いつもとは少し雰囲気が違った。校長先生は席から立ち、僕のところに歩いてきた。
「キルルくん、いらっしゃい。よくここまで来ましたね。レベル100到達おめでとう」
「え……?」
「この喫茶店、レベル100の特殊魔道士にしか見えないんです。なので、ここに入って来たということは、君はもうレベル100ですよ」
「あ……」
僕がレベル100になったことはもう隠しようがなかった。まさかこんな施設があるとは。
「……夏休みに入るとき、レベル82でしたね。夏休みが終わる前のこの段階でレベル100とは、夏休みに一体何があったのですか」
「あ……えっと……」
「大丈夫、責めませんから、教えて下さい」
「殺しました……昔、僕のこといじめていた中学の同級生を、17人……それと、どうしても死にたいと言っていた友達を1人、殺しました……」
話した途端、僕はぼろぼろ泣いた。なんで泣いてしまったのかわからない。話を聞く先生の目にも、涙が溜まっていた。
「そう……」
先生は静かに僕を抱きしめた。僕は先生の腕の中でさらに泣いた。
学年で一番最初にレベル100になったのは、僕だった。学校生活をあと半年も残してレベル100になるのは、異例の早さだった。
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