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第120話 アレンの絶望

 僕とアレンは馬車を使い一日かけて王都に戻った。僕は、少し不機嫌だったため、あまり馬車では話さなかった。

 王都に着くと、僕は、一旦学校に行って即死魔法のレベルを調べることにした。僕の推測通り、即死魔法はレベル99になっていた。

「キルルさん、どうでした?」

 学校の外で待っていたアレンは僕に聞いた。

「ああ、やっぱり今レベル99だったよ。一人殺すごとにレベルが1上がっているみたい」

 元クラスメイトはあと7人いるが、遠くの街にいたり、所在不明だったりで、レベル100にならないと殺すのが難しい。今のレベルで殺せる相手は……

「キルルさん、わかってますよ。記念すべきレベル100になるために、僕のこと、殺してくれていいですから」

 アレンはそう言った。

「……ありがとう、助かるよ。場所は、どこにする?」

「僕の寮の部屋にします」

「わかった」


 アレンの寮の部屋に向かった。アレンの部屋は、誰も使っていないかのように物がなく、空っぽだった。もう身辺整理してしまったのだろう。

 何もない部屋に、夕日だけが差していた。

「さあ、どうぞ。殺してください」

 夕日が映る窓の前に立ったアレンは静かにそう言った。

「なにか、言い残すこととか、心残り、ない?」

 アレンのことだろうから、もう心残りなんかないだろうとは思ったけど、念のため聞くと、思わぬ答えが来た。

 アレンがいきなり近づいて来て、キスしてきた。

「すみません、最期なので、お許しを」

「え? なに? 今の……」

「キルルさん、鈍いんですね。前に好きだって言ったでしょう」

「あれ、そういう意味だったの?」

「ええ」

「なんで、僕のことなんか」

「強い魔道士が好きなので」

「……なるほど」

 そういえば、アレンって、リリイのこと嫌いって言ってたっけ。あれって、そういうことだったんだ。

「そろそろ殺してください。待っているのも辛いのです」

「ああ。アレン、今までありがとう。さよなら」

 即死魔法を唱えると、アレンは静かに死んだ。とても安らかな死に顔で、寝ているようだった。

「アレン……」

 アレンを思うと、自然と涙が出た。魔法に憧れて、なのに魔法は使えなくて、そして好きになったのが僕なんて。何もかもが不憫で仕方なかった。

 アレンは、あまりにも芯が強すぎた。出会ったときから、価値観を一切変えず、終始一貫していた。魔道士として優れているかどうか。それがアレンのすべてだった。出会ったころから柔軟に変化し成長したスーとは、全く違う気質だ。そして、多分僕もアレンと同じ気質だろう。

「アレン、あの世で幸せになって。あの世はきっと、魔法なんて関係ない世界だよ」

 僕はアレンの死体に軽くキスして、アレンの部屋を出た。


 レベル80になってから、20人殺した。これでレベル100だ。


 

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