第119話 リーダー
とうとうこの時がやってきた。いちばん憎かった、いじめっ子のリーダーであるブライアンを殺す時が。僕は、この時のために即死魔法のレベルを上げて来たと言っても過言ではない。
精霊が見えないとかで、「魔法の素質がない無能」と僕に言って絶望させ、さんざんいじめたこと、絶対に許さない。「素質がないかもしれない」という余計な恐怖を植え付けられた恨み、死をもって返してやる。
ブライアンは、どうも他の同級生が立て続けに死亡したことが気にかかっていたようで、校内をうろうろしていて、なかなか自室に帰ってこない。自室で皆死亡しているから警戒しているのかもしれない。
僕達はしばらくブライアンの自室に潜んでいたが、一旦外に出た。
校庭に出たところで、
「おい!」
という声が聞こえた。振り向くとブライアンが立っていた。
「見かけねえ服装のやつがいると思ったら、お前かよ、キルル」
僕はブライアンに向き直った。ブライアンをこれ以上ない力で睨みつけた。
「周りでばたばたと同級生が死ぬと思ったら、お前の仕業だったか」
ブライアンは冷静にそう言った。
「そうだよ。よくわかったね」
こいつのことは大っ嫌いだが、僕が犯人であることを察する早さと、犯人である僕を目の当たりにしてこの冷静さはたいしたものだ。腐ってもリーダー的立ち位置にいただけある。
「……ふん、お前昔から頭おかしかったもんな。いつかなにかやらかすと思ってたよ」
「どういうこと?」
ブライアンから思いがけない言葉が出てきて、僕は少し戸惑った。
「お前さ、昔、道端で死んだ猫拾って帰ろうとしたよな。家で飼うって言って。あのあたりから気持ち悪いやつだなと思ってたよ」
今、ここで言われるまですっかり忘れていた。そういえばそんなことあった。持ち帰った猫は母さんに説得されて土に埋めたんだった。
「で? どうやって殺したんだよ、あいつらを」
「僕は、『即死魔法』が使えるんだ」
「『即死魔法』? 聞いたことないな」
「名前のまま、呪文を唱えれば相手が一瞬で死ぬ魔法だよ」
「ふん、うすうす感じてたけどこんな恐ろしいやつだったとは。もっと本気で町から追い出せばよかった。というか殺しておくんだったな」
「……だからいじめてたの?」
「ああ」
「冗談じゃないよ。僕はめちゃくちゃ苦しんだのに! 死ねよ!」
僕は怒りで即死魔法が暴発した。足元の草木が枯れ、校庭の木々が枯れ、空を飛んでいた鳥が死んでぼたぼたと地に落ちてきた。その中で即死魔法の呪文を唱えた。ブライアンは、抵抗するわけでも、怯えるわけでもなく、静かに死んで、地面に転がった。
くそ、もっと怯え震えるところが見たかった。妙に肝が座っているブライアンに心底腹が立って、僕はブライアンの死体を何度も何度も蹴飛ばした。なんだよ、こいつ。僕が悪者みたいに言いやがって。僕をここまでさせたのはお前だろ!
「キルルさん、そろそろ行かないと人が来ます」
アレンにそう言われて僕はその場を後にした。せっかく殺したのにどこか後味が悪いまま――
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