第118話 魔法学校
「キルルじゃないか! どうしたの!?」
魔法学校へ向かうべく、ノースリタシティの街中を歩いていると、僕を呼ぶ声がした。振り返ると、ポールトーマスがいた。横にネルもいる。
「ポールトーマス! ネルも! なんでここに?」
僕にも、もしかしたら罪悪感があるのかもしれない。皆殺し行脚の最中に、学級委員に鉢合わせて少し動揺していた。
「なんでって、ここ僕の故郷だし、里帰り中だよ」
「ああ、そうだった!」
ポールトーマスはノースリタシティ出身だから、夏休み中はここにいてもなんら不思議はない。
「だけど、ネルは? ネルはここ出身じゃないよね?」
「うん、家族に紹介したくて連れてきたんだ」
「……家族に紹介って、もしかして結婚するの?」
「うん、そのつもりだよ。無事学校卒業したらね」
ポールトーマスはあっさり認めた。入学してから割とすぐ付き合いだして、卒業後は結婚ってすごいなあ。
「そうか、おめでとう」
「ありがとう。キルルは? リリイと付き合ってるでしょ? 卒業後結婚しないの?」
「え!? いや、僕たちは、まだそこまでは……」
リリイと結婚なんて、そこまで考えたことなかった。さすがの僕もこの皆殺しのことをリリイに隠して何食わぬ顔で結婚するのには抵抗がある。殺すことに対しては抵抗なくとも、それを隠すことには多少の後ろめたさはあるのだ。
「そっか。まあ、周りがとやかく言うことでもないよね。キルル達のペースで進めた方がいいよ。だけど、どうしてノースリタシティにいるの? その子は?」
「えっと、僕も、里帰りしてて、王都に帰る最中にここに寄り道してたんだ。この子はアレン。南の子だから、この地方に興味あったみたいで連れてきたんだ」
「そう。この街、気に入ってくれたなら嬉しいよ。ゆっくりしていって」
「うん、それじゃ」
ポールトーマス達と会話を終えた後、僕たちは慎重に魔法学校へ進んだ。やはり知り合いには会いたくないものだ。
夏休みも終盤に差し掛かり里帰りしていた魔法学校の生徒達も、ぼちぼち寮に帰ってきている。この学校に在席している元クラスメイト4人も、もう寮に帰ってきていた。ここの4人はいじめの主犯格だ。いじめっ子のリーダーもここにいる。いじめの主犯格のやつに限ってそこそこ魔法の素質があるとか、なんかむかつく。
夏休みも残り十日ほどだ。さっさと殺して王都に帰ろう。
元クラスメイトの寮の部屋を探りだし、一人ずつ殺すことにした。この学校もありがたいことに一人一部屋だ。寮の部屋の鍵はかけられない仕組みのようで、侵入しやすい。貴重品は学校が管理しているのだろう。
タドの部屋に忍びこむ。こっそり殺してやってもよかったが、やはり主犯格のやつには一言ぐらい言ってやりたい。
タドが部屋に帰ってきた。部屋に入るなり、僕の姿に気がついてぎょっとしている。
「お前、キルル……!?」
「そうだよ。久しぶり」
「なんの用だよ。なんだか魔道士らしい格好しているけど、もしかして魔法の素質あったのか?」
「その通りだよ。そして、魔法の素質がない無能だってさんざんいじめられたこと、忘れてないからね」
「ふん、その感じだと余程の素質だったのかよ。もしかして勝負しにきたとか? お前にしてはやるじゃねーか」
タドは相変わらず僕を見下した口調で言った。
「まあね。『即死魔法』って知ってる?」
「『即死魔法』……?」
「呪文一つで人を殺せる魔法だよ。僕が呪文言い終わったら、君はもう死ぬよ」
「な……」
さすが、そこそこの魔法学校の生徒だ。タド一般魔法の呪文を唱えて僕に応戦しようとした。しかし、タドが呪文を言い終えるより先に僕が即死魔法の呪文を唱えたので、タドは死んだ。一般魔法は詠唱に時間がかかる。レベルが低いと特に。
「ふん、雑魚が。草魔法レベル60で僕に勝てると思ってるの?……あ、アレン、ごめん。アレンが雑魚ってことじゃないから」
「この期に及んで僕に気使わなくていいですよ」
横にいたアレンが笑いながら言った。
タドの死体を蹴飛ばすと、僕は宿屋に戻った。
次の日、フィルを殺した。タドを殺した時と同じようなやりとりの末に殺した。次の日にはバートを殺した。こちらも先の二人と同じ感じだった。
そして、この学校で残っている元クラスメイトは、いじめっ子のリーダーを残すのみとなった。
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