第110話 独り言
僕はこの日ものすごく暇をしていた。大型モンスターを倒す話も見つからず、一般教養の授業も先生の都合で休講になってしまい、昼間から部屋のベッドでごろごろしていた。リリイは一般魔法に蘇生魔法に忙しく、外に出ている。
僕は、予定がなくなるととにかくぼんやりしてしまうのは本当にだめなところだと思う。ぶっちゃけ、僕は殺しとリリイ以外にはほとんど興味がなかった。それはあまり良くないこととわかってはいた。わかってはいたが、どうにもできなかったのだ。
「リリイ早く帰ってこないかなあ……」
リリイと付き合って早くも三ヶ月が経とうとしていた。三ヶ月付き合っていても、恋人らしいことはあんまりしていない。あんまりというかほとんどしていない。友達として過ごしていた時期とほぼ同じだ。理由はわかっている。この剥製部屋を見られたくない気持ちが心の奥底にあるあまり、距離を縮められないのだ。だいたい、この学校で付き合っていたら部屋の行き来ぐらい普通にする。ネルなんて、しょっちゅうポールトーマスの部屋に遊びに行っている。
リリイと付き合ってから、リリイは僕の部屋に来ていない。来客用の入口側の部屋にすら来ていない。理由は簡単で、僕が誘わないからだ。リリイは僕が誘いもしないのに理由もなく僕の部屋に押しかけてくるタイプでもないからだ。なので、どこかよそよそしいお付き合いをしている。レベル80になってしまったら、今まで通りの付き合いができるとは限らないとわかっているのにだ。
部屋に剥製がなかったらリリイを部屋に連れ込んでいるかというと、そうでもない気がする。僕は恋愛に関しては本当にぐずぐずしているタイプだと思う。告白までもあんなに時間がかかっているんだから、付き合ってからもそう簡単に変われないのだ。
「あー! 暇だ! 大型モンスター出没情報でないかなあ! 早くレベル80になって人を殺したい!」
誰も聞いていないことをいいことに、随分な独り言を言ってしまった。しかし、これは、新しい呪文を使える手前になるといつも起こる現象だった。今の、大型モンスターを倒せる呪文にも、そろそろ飽きてきて、新しい呪文を使いたくてしょうがなくなってくるのだ。「即死魔道士の性」だろう。いや、自分の最低さ加減を特殊魔法のせいにしているだけなのはわかっている。校長先生が、恋愛に関して節操がないのを「染色魔道士の性」と言ったのと同じだ。だけど、そう言いたくなる校長先生の気持ちもよくわかる。
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