第105話 心配
リリイの蘇生魔法がレベル80に到達した。これから人を生き返せるということだ。僕は即死魔法ばかりやっているのに、まだレベル72だ。リリイは一般魔法もすべてレベル80になっているし、本当にすごい。即死魔法ばかりやっていてもレベル上げの面でリリイに追いつけないのは少し複雑だったが、よく考えたら僕が先にレベル80になる方が問題だ。僕が即死魔法を失敗したときに蘇生してくれる人がいなくて困ってしまう。即死魔道士より蘇生魔道士の方がレベル上げが早いのは、必然なのだろう。
「リリイ、リリイって、生き返す人どうやって探すの?」
最近の僕はリリイとよく二人で過ごしている。今日は校庭の端で花を眺めて過ごしていた。リリイが側にいると花を枯らす気分にならないから不思議だ。先日レベル80になったリリイは人を生き返す機会は一度ぐらいあっただろう。どんな感じなのか気になる。
「国が決めて連れてきてくださるわ。どうしても私個人が生き返したい人がいれば、それも聞き入れてくださるそうだけど。どこの誰を生き返したのかは、誰にも話さない決まりなの」
「そっか」
要するに、あまり詳しくは話せない決まりらしい。たしかに、国が誰を生き返すように依頼してきたかなんて、あまり表沙汰にできないだろう。『蘇生魔道士』の存在自体、あまり知られないようにしたいだろうし。
あれ?ということは、即死魔法で人を殺すことについても、「国に依頼されてやっていて、誰を殺したかは話せない」でまかり通るんじゃないか?僕はそう思った。もしかしたら、レベル80になろうがレベル100になろうが、リリイとこのまま過ごせるんじゃないか?と僕は淡い期待を抱いた。
「キルルは? レベル80になったら、もしかして国の依頼で誰か殺すことになるの?」
リリイが尋ねて来た。
「あ、ああ。一応依頼は来てるよ」
死刑執行の依頼は来てるし、この部分は嘘ではない。
「まあ……」
リリイの表情が急に曇った。
「いくら『即死魔道士』とはいえ、人を殺さないといけないなんて……キルル、大丈夫なの?」
「大丈夫って?」
「人を殺すなんて辛いでしょうに。国から依頼が来た人物ならよっぽど悪人なんでしょうけど、それでも……」
「悪人を殺すのに辛いもなにもないよ。大丈夫だって」
「え?」
リリイは怪訝そうな顔をした。しまった。僕何かまたまずい発言したかも。心臓がひやりとした。
「キルル、あまり無理してはだめよ。レベル上げは大事かもしれないけど、キルルにとって辛いことは無理してやっちゃだめよ」
「うん」
リリイが僕のことを思いやってくれているのが伝わってきて嬉しかったが、リリイが何を思いやってくれているのかは今ひとつわからなかった。
とりあえず、リリイとは「即死魔法」の話はしないでおこう。僕は少しこの辺の感覚はズレているらしいし、変なこと言いかねない。
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