第103話 お揃い
リリイが補習とテストが無事に終わった頃、王都は式典期に差し掛かっていた。今年も国中の15歳の少年少女が、式典と適正検査のために王都に集まってくる。
僕とリリイは二人で警備も兼ねて王都の街中にいた。去年もこんな感じで過ごしたけど、アレンの飛び降りを目撃して楽しい気分が削がれてしまった。だけど、今年は今のところ異常なく、王都は賑わっている。なにより、去年と違ってリリイは僕の彼女だし!今年は本当にデートだし!
王都の街中には、僕たちと同じような、学生カップルが多く見られた。学校の授業も一段落しているし、王都が賑わっている時期なので、この時期の王都は恋の季節なのだろう。
綺麗に舗装された石畳の道に、カラフルなテント露店がたくさん並んでいる。適正検査で王都にやってきた学生が観光土産を買うことが多く、売っているものは若者でも手が出るアクセサリーなどが多い。
アクセサリーなどには、今までほとんど興味を示さなかった僕だけど、今年は自然と目が行く。リリイに似合いそうな物があれば買ってあげようかなあ。モンスター退治した際に多少お金がもらえることがあるため、僕は学生の割にお小遣いを持っているほうだし。
「そういえばリリイって、誕生日いつ?」
品揃えがいい今買っておいて、リリイが誕生日の時に渡そうかな、なんて考えて尋ねてみた。リリイが答えた日付を聞いて僕は仰天した。
「僕と同じ!?」
「あら、キルル、お誕生日同じなの?」
僕は頷いた。リリイも驚いている。
誕生日が同じって、やっぱり対の魔道士だからだろうか。生まれる時は同じ、そして寿命もほぼ同じ……なんだか、恋人というより双子のようだ。
「なんだか、私とキルルって、双子みたいね」
リリイも同じことを考えていたようだ。
「僕もそう思うけど、双子だと恋人になれないじゃない。だから双子は少し嫌だな」
「ふふ、そうね」
リリイは、いつものように柔らかく笑う。
「そうだ、何かお揃いで買いましょうよ」
「お揃い!?」
「ええ、ほら、色違いのアクセサリーもたくさん売ってるし」
リリイの目線の先には、ペアのアクセサリーが並べてある露店があった。その露店では、僕たちのようなカップルが何組かアクセサリーを吟味している。
「キルルは男の子だし、アクセサリーは嫌かしら?」
「ううん! アクセサリーでも、なんでもつけるよ! 何か買おう!」
この状況でアクセサリーなんてとか言うわけない。リリイとお揃いならなんでもいい。とはいえ、もともとさほど着飾ることに興味のない僕は、いざアクセサリーを目の前にしても、どれがお洒落なのかよくわからない。
「リリイが気に入ったのがあればそれでいいよ。僕はこういうの疎いから」
「そう? じゃあ、これにしましょう」
リリイはさほど迷わず気に入ったものを手に取り露店の店主に声をかけた。僕が代金を支払うというとリリイは断ったが、説得して僕が支払った。
僕たちは、露店のある街道から少し離れて、人気のない公園に来た。木でできたベンチに腰掛け、先ほど買ったアクセサリーを改めて見る。
リリイが選んだのは、銀でできた翼の飾りがついたペンダントだった。片方は翼の端に黒色の石が埋めてあり、もう片方に白い石が埋めてある。
「キルルは、どっちがいい?」
「やっぱり、黒い方がいい」
僕がそう返事をすると、リリイは、僕の方のペンダントを手に取って、それを僕の首にかけた。リリイが腕を僕の首に回したとき、ものすごくどきどきした。
「とっても似合っていてよ」
ペンダントの飾りの位置を確かめながら、リリイが上目遣いで言った。ペンダントの飾りがある辺りから体が熱くなっていくのを感じる。
「僕も、リリイの分つけていい?」
リリイが頷いたので、リリイのペンダントを手に取り、リリイの首にペンダントをかけた。
恐ろしくどきどきしたのは言うまでもない。
そのあとは、王都の街道に戻った。一応王都の警備も兼ねているので、パトロールと言う名のデートをした。正直パトロールどころではない気分だったが、終日平和だったため、特に支障なく一日を終えた。
寝る前に、ペンダントの飾りを眺めて僕はにやにやした。ああ、がんばって好きって言ってよかった!それにしても、リリイはなんて可愛いんだろう!僕は枕を抱き締めてじたばたした。
そんな幸せな気分で式典期を過ごした後に、僕は三年生になった。即死魔法はレベル70になっていた。いよいよ最終学年、レベル100に向かう一年が始まる。
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