(2)歩み寄り
あらすじ***魔王と勇者、入れ替わったみたい!
「・・・っ!! ? お前は、ダレだ!」
「我は・・・
「俺は誰だ!勇者だったはずだぞ、なんだ俺はうおぉぉ?!」
パニクる俺。だってありえないだろう。
魔王になる勇者って それこそなんだか人類の敵だ。
「まぁ落ち着け、どうやら中身が入れ替わったようだな。
勇者、お前の体も悪くないぞ・・・」
ニヤニヤしながらアリアの体をまさぐる。
「アリアに何をっ
「待て、その体でこの小娘を奪い返そうとすれば引きちぎれるぞ。」
「だからといって、彼女を盾にするなこの外道が!!」
「クククッ その姿で怒鳴ると本当に悪役だな。」
たしかにそうだろう。全身黒色の毛に覆われ
いきり立つ様はまさに魔王。だがしかし
アリアを奪われてなるものか。
「殺す気はない。そもそもこの現状を生み出したのは
この小娘だとわかっているか?」
「なに?! 何故わかる!!」
「小娘が最後にはなった光を覚えているか?」
「ああ、金色の光を放ち俺を包み込んだから
てっきり蘇りの秘術かと・・・」
「確かに蘇りだが、方法を誤っている。
敵の生命力や魔力を奪い吸収するもののはずだ。
だがまさか中身まで入れ替えてくるとは思わなかったよ。」
苦笑するように言った後呟くように「好都合だが・・・」
ときこえた。
「お、おい!まさか・・・」
「まだ悪用はしない。ひとまず休戦しよう。
この姿で殺しあってもどちらにとっても得はないだろう。」
まだって言った!まだって!!
答えるのをためらう。勇者は魔王を倒すもの。
ただ今倒したら魔王が生き延びる、たぶん俺のまま。
「案内しよう、我が魔王城を。」
アリアを腕に抱いたまま魔王(俺の体)はスタスタと進む。
俺は黙って後ろをついていくことしかできなかった。