(16)宿にて
あらすじ***魔王と勇者入れ替わり。勇者(IN魔王)は『くっ、殺せ』キャラを入手。
魔王(IN勇者)は街で屋台巡り後の宿。
★魔王(IN勇者)サイド★
財布にある大量の金から
豪華な部屋を選ぶと思っていた面々は驚いていたが
マリーだけは倹約家だと褒めてくれた。
三人の部屋は上の方の階にある複数人用の大部屋らしい。
一旦荷物を置いてから夕食のため下の階で待ち合わせるように言われた。
両手には買ったばかりの土産品が大量にある。
クリスタルや残ったわずかな魔物やクリスタルが管理する人間への土産だ。
アイテムボックスに入れられるものは入れたが
手にもっていたいものもたくさんあったのだ。
1人部屋に案内され入ってみると魔王部屋と同様に安い部屋だけあって
小さなベットと正面に窓、それから作り付けのクローゼットがついていた。
今は外にも出ないため上着を放り込んでみた。
一階受付の隣では宿屋の料理が食べられる。
人間とは不思議なものだ。昼にはあれほどもう食えぬと思ったのに
夜には腹が減っている。なんということだ。食べ物を求める気持ちが
早々に理解できてしまった。大変な生き物だな。
料理屋では今後の方針が話し合われた。
・仲間が戻るまでパーティとして参加してほしいこと
もちろんその後も都合がよければ継続も視野に入れるそうだ。
・どれほどの力か見せて欲しいので今回のクエストを一緒にこなして欲しいこと
我1人でも十分なレベルの仕事だ。森のウルフ5体。
何故先ほど失敗したかは説明できないそうだ。アスナが顔を赤くして視線を逸らした。
我からも提案をした。
普通の人間として相応しい振る舞いを覚えたいことと
慣れたら王都へ向かいたいこと。
実はずっと前から王都に行ってみたかったのだ。
三人から了承の返事をもらい、解散となる。
宿の飯も昼間ほどのものではないが満足のいく、どこか優しい味の食事だった。
ただ必ず草はついてくるようだ。愚かな文化だな。
しかし酒というものがまたスゴイ。攻撃でもないのによろける。
普通の冒険者の男は、エールを頼んで一気飲みをするものだというので
しぶしぶ腹が減ってるにも関わらず食べ物より早く出てくるため三杯も飲んだ。
部屋に戻り、ベットへ横たわる。これほど小さいのにのっても大丈夫だ。
あの小娘くらいなら100人のっても大丈夫かもしれない。
人間というのは軽くて小さいのだ。
寝支度を済ませ、部屋を暗くして目を閉じる。
・・・ー屋台に来れた。人間と友達になれた。何故か冒険者になった。
充実感というものを生まれて初めて感じた。
あの勇者、聖女らには感謝しよう。
ウツラウツラし始めた頃、部屋をノックする音。
何度か音がして気のせいではないとわかる。
眠い時に邪魔をされることがこれほど苛立つこととは知らなかった。
「なんだ!!我は眠るのだ!!」
開けはなつ扉、そこに立つのは昼間会った受付嬢だった。
「あれれー?起こしちゃいましたー?」
腕を背中に組み、上目遣いでこちらを見てくる。
そこで気づいた。昼間は帽子で隠れており見えなかったがこの娘は獣人か。
毛の色に紛れてわかりづらいピンと立った耳。体の後ろに大きな尾。
キツネ獣人…だな。魔物で作り出すともっと戦闘的な外見になるが
人間寄りの獣人はだいぶ違う。
人間たちは得てして受付嬢は可愛いと言っていたが基準がよくわからない。
我の尾の方が遥かに見事だったが、今この体の尻には生えていない。
「お話があるのでー、お部屋に入れてくださいな♪」
魔王の時なら無視しただろうが、今は普通の人間なのだ。
魔物のモスキートンたちに諜報させていた時に
人間たちは言っていた。
女の誘いは断ってはいけない。
眠さと酔いがあっても我は魔王である。
立派に普通の人間をこなしてみせよう!!




