(1)入れ替わり
自分が読みたいものを書いてみました。
よろしくお願いします。
死力を尽くして戦った。
ここは魔王城。目の前には獅子の姿に似た魔物の王。
大切な仲間たちは一人をのぞいて全員、戦線の途中で失った。
戦う俺のそばで回復に徹する聖女アリア。
でももうそれも終わりだ。
俺は勇者ではなかった。
周りにのせられ囃し立てられてその気になっただけの
魔王に屈するただのいきがった若僧だったのだ。
霞む視界の中、力を失った腕は剣を取り落とし
最後の光景を焼き付ける。
暗く石づくりの王座を正面に
金色の光を放ち、両手を掲げるアリア。
光沢のある純白の聖衣を身にまとい
金色の長い髪をなびかせ潤んだ藍色の瞳で最大の力を集約させる姿は
とても美しく神々しい、まるで女神だ。
まさか、間もなく死を迎える俺に死者蘇生でも行うのだろうか。
すまなかった・・・アリ・・・ア
途切れる意識
・・・
輝く光が収まり視界がひらけてくる。
俺は・・・まだ生きている。一体・・・?!
先ほどより明るく感じる周囲に違和感を感じつつ
辺りを見渡すとアリアが離れた場所に倒れているのが目に入った。
「アリア!!」
急いで駆け寄る、音速で。
吹き飛ぶアリア、驚く俺。
それを助ける俺、が姿を現わす。
「お? おお?! うおぉおぉぉ?!」
明らかに俺。目の前には俺がいた。
アリアを両腕に抱いて、にやけてこちらを見る。
「よぉ、我の体に入った勇者だな?
その体の使い心地はどうだ?」
とりあえず 助けてくれてありがとう、という言葉を俺は飲み込んだ。