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【澪亜】見習い聖女の憂鬱  作者: 澪亜【N-Star】
第二章 入学編
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第十九話 試験結果

「クレア、テスト結果が発表されてるよ! 来て来て!」


「ああ、そう言えば今日張り出されるのでしたよね。アビー、何をそんなに慌てているのです?」


「見た方が早い!」


 レベッカの問いかけに答えることなく、アビーは私の手を引っ張ると早歩きをした。

 突然のことに足がもつれそうになりながら、彼女の後をついて行く。


 廊下に張り出されたのは、成績上位者の名前。


一位:クレア・ソール


二位:ヘレン・ソレイユ


二位:ケリー・リューニュ


二位:セラフィーナ・テラ


「……嘘」


 あまりの出来事に、唖然としてしまった。

 筆記試験の出来は良いだろう、とは思っていた。

 でも、まさか三貴神の方たちを抑えて首位を取っているとは思いもしなかったのだ。


「初めてだよ、こういう結果は……」


 ポツリと、アビーが呟く。

 その横で、レベッカは言葉を失っていた。


 同じように試験結果を見に来ていた他の生徒たちが、私を見てヒソヒソと何かを囁く。

 ……居心地が悪いな、と思わず身を縮こまらせる。

 俯いていたら、俄かに廊下が騒がしくなったことに気がついて顔を上げた。

 騒ぎの元は、思った通り三貴神の方々。


「おめでとうございます、クレアさん」


 そう言って私に手を差し伸べたのは、ヘレン様だ。


「ヘレン様……」


「貴女と共に同じ学び舎で学ぶことができることを、喜ばしく思います。これからも、是非共に頑張りましょう」


 何を言われるかと戦々恐々としていたら、まさかの祝福の言葉だった。

 恐る恐る、その手を取って握手をする。

 手を離すと、ヘレン様はニコリと微笑みを浮かべ去って行った。


「……本当に、ヘレン様は素晴らしい方ね」


 そっと横を見れば、レベッカが唖然としつつもポツリと呟く。


「確かに、そうだね。良いなー、クレアは。ヘレン様に名前を覚えていただいていて」


 不名誉な理由だとは言えず、私はアビーの言葉に苦笑いを返すことしかできない。


「ま、何はともあれ……おめでとう、クレア。本当に凄いことだよ」


「そ、そうね。おめでとう……クレア。お祝いの言葉が遅くなってしまって、ごめんなさい」


「ううん……ありがとう、アビー、レベッカ」


 三貴神の方々が現れた騒ぎに紛れて、私たちはその後そそくさとその場を離れた。

 まさかの出来事に唖然としっ放しだったけども、教室に戻って少しは冷静になれた気がする。

 そして、それと同時に思わず息が漏れた。


 三貴神の方々の登場で一時は私から意識がそれたらしい他の生徒たちも、再びあの成績表に話題が移っているらしい。

 時折クラスメイトたちが私の方を見ては、何やらヒソヒソと話している。

 それが悪意の込められた言葉だというのは、彼女たちの表情や雰囲気で聞こえずとも分かる。

 ……本当に、息苦しい。


 ふと、イザベル先生の言葉が頭に浮かんだ。


『貴女が神力を上手く扱えようが扱えなかろうが、この学園の生徒は『身内』以外には厳しいという訳よ。貴女が思っているよりも、ずっとね』


 多分、先生は今のこの状況を予見して言った訳ではなかったはずだ。

 けれども、つい考えてしまう。

 私に悪意を向ける生徒たちは、私が“実技が学科に伴っていない成績”だからなのか、それとも“学科の成績が良過ぎるから”なのか。

 前者であれば実技の腕を磨くことで見返すことができるかもしれないけれども、後者であれば何をしても無駄だ。

 ただ、目立たないように息を潜めるしかない。

 ……既にやらかしてしまっているので、その唯一の対応策も実行は無理だけれども。


 ……本当に、本当に息苦しい。

 なりたくもない神官になれと学園に入学をさせられたかと思えば、できないことを笑われて、挙句に大人たちの権力争いの延長戦のようなものに巻き込まれて。

 ほとほと、嫌気がさす。


 好成績を収めたとは思えないほどの暗い気持ちでその後の授業を受けると、私は手早く荷物を片付けて一目散に教室を出た。

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