第十二話 私と授業①
麗らかな日差しが、窓から教室に射し込む。
……昼過ぎの授業って、どうしてこうも眠くなるのだろうか……。
「――三貴神様が邪神を封じてくださったので、世界に平穏が齎されたのです。この邪神を封じた場所が、王国西部のフィーネ地方と呼ばれております。さて、このフィーネ地方にある歴史的に有名な遺跡を二箇所答えてください。キャメロンさん?」
先生の説明を子守唄として聞きながら、私はうつらうつらと夢の世界に漕ぎ出そうとしていた。
「はい。フォルナ遺跡とダエル遺跡です」
「フォルナ遺跡は正解ですが、ダエル遺跡は不正解です。ダエル遺跡はヴォシュマ地方にあるものですから。……では、クレアさん。お答えください」
ここで私を指名するか……でも、座学は唯一の点数稼ぎの場だから、答えない訳にはいかない。そう思って、私は立ち上がる。
「はい。フォルナ遺跡とダエルエラ遺跡です」
「二つの遺跡にはどのような言い伝えがあるのかも、合わせて答えてください」
「フォルナ遺跡は、初代三貴神の方々が邪神を封じるために祈りを捧げた場所です。一方、ダエルエラ遺跡は同時期に建立されたことから邪神が封じられた場所ではないかとの推測がありますが、教典にはそのようなことは一切書かれておりません」
「……結構。良く勉強していますね。クレアさんの言う通り、邪神が封じられたという記載は教典には一切なく、人々が邪神の存在を忘れないようにと建立されたものです。このダエルエラ遺跡はテストに出ますから、正確な位置と歴史は覚えておいた方が良いでしょう。では、次のページに進みます」
席についた私に刺さる視線を感じると思えば、私の前に指名されていた生徒……キャメロンさんが私のことを睨んでいた。
こうなるから、答えたくなかったんだよなあ……と、内心息を吐く。
また、盛大に陰口をたたかれるのだろう。
それを想像して、更に気が滅入った。
今は午後一番の授業で、内容は宗教学。
教典を読み合わせ、その解釈や関連する歴史と地理が問われる。
教典は日本神話のような物語となっていて、村にいた時に普通に本を読む感覚で読めるほどに中々興味深い。
とはいえ、だ。
やっぱり午後一番の授業は眠い。
柔らかな先生の口調もあって、まるで子守唄を聞いているかのよう。
……けれども、眠る訳にはいかない。
進級するには試験に合格しなければならないのだけど、実技の点が望めないのだから、せめて座学だけでも満点を取る勢いで勉強をしなければ……!
たとえ、他の生徒に睨まれようとも。
キリキリ痛む胃を抑えながら、私は眠気を抑えるべく目に力を入れて黒板に集中した。




