プロローグ
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それでは、どうぞ!
桑摩市
人口約35万人が住んでるこの街は、今日―――日常が崩壊した。後に例の少ない大規模な進行と語り継がれることになる出来事によって......
◆◆◆
海沿いにある桑摩市に住んでいる、正しくは祖父母が住んでいるこの桑摩市に来ている少年の名前は天羽幸也六歳である。
満開の桜が咲いては散り、道路をピンクの花びらが舗装する頃に、幸也の進級を祝う為、幸也とその家族は祖父母の家に東京から里帰りしていた。お祝い事であるからして、幸也の好物と縁起物が振る舞われ、はしゃいだ疲れのせいかこの日は何時もより早く眠る幸也。未だ冷めぬ興奮を胸に眠った幸也。何時もより楽しかった今日。母親に父親、仲のいい兄、更には祖父母にも門出を祝って貰えた幸也は翌朝......
瓦礫の下敷きとなった状態で、鳴り響く爆発音、それにつられて聞こえてくる怒号と悲鳴により目を覚ます。
「い、痛......い」
手が痛い。足が痛い。ここは......?暗い......母さん......父さん......兄さん......おじいちゃん......おばあちゃん......どこ?
ぬらぬらとした赤い鮮血が流れ、幸也の体を伝い瓦礫に染み込む。箇所によっては時間が経過したからか、血が赤黒い塊となり出血を止めている。
「何が......起こって......る?」
寝ていたはずのベッドではなく目覚めたのは瓦礫の下という状況に混乱し、恐怖を通り越していることが不幸中の幸いとなり、パニックというパニックは起こしていない幸也。
やがて、時間もわからない状況で脱出する方法もなく、数時間が経過した。
「......?爆発音が......なくなった?」
瓦礫の中にまで木霊していた爆発音が消え、さっきまでの騒然とした様子が嘘と思えるほどに、何時も通りのような静けまでさとはいかなくても静かになった。時折建物が崩れるような音が聞こえ、その度に肩をびくつかせている幸也は、出血していたこともあり、また、幼いこともあり、その状態は良くなく、どんどん悪化している。
どれくらい経過したのか。それは幸也にはわかからない。ただ家族の無事を祈ることと、自分はどうなるのかを考えることだけが出来ることであるからだ。
延々と続く不安と暗闇、一人であり閉塞感に襲われる瓦礫の下で、幸也は瞼を閉じ、眠りにつく。生きる希望が見出だせず、泥のように眠った。
◆◆◆
布の擦れる僅かな音で、幸也は目を覚ます。それと同時に瞳を大きく剥き驚いた。瓦礫の重さが減り、昼頃だろうか、太陽の眩しい光が隙間から差し込んでいるからだ。更に驚くことに、瓦礫は軽く、幸也一人でも動かせるようで、幸也は瓦礫を下から押し上げ、体から退かす。
弱っていた体に鞭を打ち、弱々しく、ふらふらとしながらも立ち上がった幸也は......
目の前に広がる光景に絶望した。
昨日までそこにあった筈の家が。建ち並ぶ住宅街が。全て瓦礫に成り果て、楽しかった昨日の思い出を消し去るかのように眼前に広がっていた。
ふと、視線を落とすと、瓦礫が広がっているが、その中に、見覚えのあるものがあった。兄の靴だ。片方だけでもう片方は見当たらないが、その靴へとおぼつかない足取りで向かう。
たどり着き、その靴を手に持つ。辺りを見渡し、幸也は膝をついた。昨日まで笑っていた顔が、何時も優しく微笑んでくれた顔が。年老いてしわだらけとなった手が。足が。自分の体を軽々と持ちあげるそのたくましい腕が。
瓦礫の下に埋もれていた。
幸也は声を押し殺し、泣いた。目尻に溜まり、やがてこぼれたその雫は、この状況で尚照らし続ける太陽の光を反射し、頬を伝って一粒、また一粒と瓦礫に落ち、染み込んでいく。
ぼろぼろとなった手を弱さを感じさせないように握り、自分だけ置いていかれたことを恨み、悲しむ。
「......何で......俺だけおいて!」
声を張り上げ自分の悲しみをさらけ出した所で、幸也はポケットにある異物の存在に気付く。
「何......これ?」
ポケットに血と泥で汚れた手を突っ込み、ポケットにあった違和感の原因を取り出す。それは、カードと一枚の紙だった。
カードにはまだ知らない漢字も書かれていたが、何となく、理解する事が出来た。父親が持っているのを見たことがあったからだ。次に手紙を見る。そこには......
[やあ、はじめまして。君は今、どんな気持ちかな?悔しいかい?悲しいかい?それとも、恨んでいるかい?こんな状況にしたものを。どうかな?でも、君はやり直せる。ここからね。君は才能に恵まれた。今から努力を、死に物狂いで努力を重ねていけば、きっと......ね。そう遠くない未来、それが出来ていたなら、君にプレゼントをあげよう。頑張ったご褒美として。それじゃあ期待しているよ。――――]
手紙は光の粒となり、空へと消えていった。
最後は読めなかったが、幸也はそれはもうどうでも良かった。手紙の主が誰かも気にしていなかった。ただ、やり直せる。その言葉に引かれていた。手紙の通りに。死に物狂いで努力を重ねていけばそれが叶うならと、幸也は一人、心に渦巻いていた黒い感情を糧に、ある決意をした。
『全てを失ったここから、ゼロから!駆け上がってやる!』
その日が、一人の最強が生まれる原点となった。
その日から、一人東京へと交番等を駆使して帰還した幸也は、まさに死に物狂いで努力を重ねた。白い拳銃を持って......
そして、あの地獄から10年がたった......
お読みいただいた貴方に感謝を!ありがとうございました!
お読みいただいている皆さん!内容を結構変更しました......
これからお読みいただいている皆さんも宜しくお願いします!ブックマーク、評価、感想等宜しくお願いします!
それではまた、次回!