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見習い魔女と異界の騎士  作者: 豊穣 マツリ
2/11

プロローグ下

 第一次作戦において最大の障害となった重力場の壁。

長距離攻撃の弾道が大きく逸らされるほか、近距離においては全てを押し潰す最大の障害であった。

 これを踏まえ考案されたのが高々度からの降下作戦である。



 ウラノスは大気圏まで上昇、空中拠点として地上を制圧することを目的として作られた。

 それ故に地上制圧の為に武装は機体下部へ集中、大気圏で安全を保障される上方が手薄となっていた。


 本来であるなら降下作戦は大気圏まで上昇するウラノスには使えない作戦ではあったが、度重なる戦闘とドーラの高質量攻撃を重力制御で防いだ負荷により、上昇速度、高度共に足りていなかった。


 とはいえ、多くの武器を搭載したウラノスへ地上からやみくもに登ろうとするのは自殺行為でしかない。

 そこでウラノスの射程外から輸送用ロケットで作戦部隊を頭上まで飛ばし、投下させる運びとなった。


 そして、その主戦力として人型凡庸戦術機甲兵器AS(アーマードスーツ)が挙げられたのだった。



 AS

 全高は10m。

 武装やパーツの換装に重点を置き、凡ゆる環境への対応を目指した人型兵器である。






「遅いぞ、国連軍(ユニオン)‼︎」


 ウラノスへの降下が無事に成功した直後にいきなり罵声を浴びせられるとは思いもよらなかった。

 まぁ、第一陣で降下したヨーロッパ連合軍のおかげで砲台はほぼ制圧済み。

 国連軍は甲板を目指し降下するだけだったのだから敬えと言うのだあれば少しばかり理解出来ることではある。

 しかし、部隊の壊滅を招いたのは第一陣の見通しの甘さが招いた結果ではないのか?


 そんなことを思いながらウラノスの甲板にて連合軍と戦闘を繰り広げる異形の相手に視線を移した。




 なるほど、今回ウラノス暴走の原因はテロリストではなく《捕食者》か。


 捕食者。

 世界大戦の最中に突如現れ、生物、無機物関係なく貪り、驚異の増殖力と成長力を持つ。

 隕石に乗ってきた地球外生命体、争いを続ける人間を罰する為に神が送った使者など様々に言われる。

 実際は大きな害虫のようなものだ。


 生き物の形状を模倣していることからカテゴリー合成獣(キメラ)

 警備網に掛からずウラノスに現れたことから転移が使える上位種だろう。

 高出力なエネルギーに釣られて現れ、ウラノスを取り込んだという辺りだろうか?



 白いライオンのような形状をし、本来なら目がある部位には何もない。

 一見すると哺乳類のよう見えるが、細かい鱗が結合した体表で覆われている。

 その鱗で出来た鬣は全てを防ぐ鋼鉄の楯であり、同じく牙は全てを貫く刃である。

 頭には一本の角。

 そして、尻尾の代わりに複数のケーブルが屋内へと続く搬入口の奥に伸びていた。



 搬入口周辺に味方の残骸が多い。

 第二陣の国連軍到着を待たずに内部に侵入し、機密情報の漏洩を阻止しようとしたのだろう。

 事を急いだ挙げ句に状況確認が疎かになり、奇襲で一網打尽ということらしい。



 第一陣は劣勢。

 状況確認をしながら残存部隊への援護射撃を行う。



 弾幕の効果が薄い。

 生物型なのにかなりの硬度。

 多少傷が出来ても即座に修復される。

 さすがは上位種というべきだろうか。

 なら効果が薄い弾幕より、近接武器での短期決戦の方が有効だろう。



 弾数が半分を切ったマガジンを新しい物へと交換する。

 近接戦闘で邪魔になるので砲台制圧用に持ってきた背部のマイクロミサイルを全弾発…してもいいのだが、敵に密着されている味方諸共になるので素直にパージしておいた。

 今回の作戦はウラノスの破壊だが恩をたくさん売るなら破壊はせずに済むに越したことはないし、損傷も最小限に限る。

 目視範囲で生きている砲台は皆無。流れ弾の心配はしなくていい。

 戦闘不能になったASのパイロットも戦闘範囲からの徹底も完了している。

 なら———



 メインブースター、脱出降下用サブブースター点火、味方への合図と共に目標へと突撃開始した。



 爆発的に距離を詰めつつマシンガンで頭の角を———捕食者の目を潰す。

 捕食者の目。

 それは身体から出ている角状機関であり、そこで何らかの視覚情報を得ているらしい。

 マシンガンでは目を壊すには至らないが一時的に怯ませるにはそれで十分だ。

 僅かな硬直の合間を縫って捕食者の横を抜けようとする。

 目指すは捕食者とウラノスを繋ぐケーブルが溢れる搬入———



 激しい衝撃がASを襲う。

 甲板を転がり、大破させられた連合軍ASにぶつかりようやく止まった。

 システムチェック。

 左側面にダメージが集中、脱出用ブースターが破損し安全装置により機能停止、肩装甲脱落。

 煩く鳴り響く非常警告アラームを切る。


 ケーブルを切られれば捕食者によるウラノスのコントロールは失われる。

 だからこそ搬入口を目指す自分に焦って食い付いて来たのだが、片手の一振りで半壊は冗談ではない。

 そんな悪態を吐きながら機体を起き上がらせると視界に影が落ちる。

 味方の援護射撃も物ともせずにとどめを刺そうと捕食者が飛び掛かっていた。

 だが、決着をつけようとしているのは自分も同じ、すぐさま銃を構え引き金を引く。


 周囲が爆発に呑まれた———。



 狙ったのは破壊された味方機の脱出用ブースター。

 燃料が満タンなだけあり、凄まじい爆発が互いを飲み込んだ。

 射撃体勢で突き出していた腕の肘から先が脱落。

 胸部追加装甲が吹き飛び、コクピット装甲にも大きな損傷。

 頭部フルフェイス型のカメラも粉々に砕けた。

 敵も同様の衝撃をまともに受けたがこれで捕食者を倒せるとは思っていない。

 それでも反撃の隙には十分だろう。


 メインカメラが壊れた影響でモニターが一瞬ブラックアウトするが、即座にサブカメラに切り替わる。

 モニターが復帰するのと同時、ボロボロの身体で起ち上がろうとする捕食者に向かい駆け出す。

 腰裏に備え付けてあるマチェットを逆手に引き抜き、ブースターの勢い任せに一気に頭部を切り上げた。



 浅い。

 片腕では絶命させるには足りなかった。

 武器も尽きた。

 時間を与えるとすぐさま蓄積したダメージを回復されるだろう。

 これを倒すには———。


 押し込んでいたラチェットを引き抜き、捕食者の身体から生えるケーブルへと叩きつける。

 先程の爆発での破損で楽に切断出来た。

 捕食者によるコントロールが切れたことによりウラノスが傾き始める。

 切断の返し刃で再び捕食者へと刃を深く突き立て、全てのブースターを全開にした。

 甲板の傾きに添い全力で捕食者を押し込む。

 そして———。



 大地を目指して空へ身を投げ出した。





ようやくプロローグオワタ_(:3 」∠)_

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