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白き聖女の下剋上  作者: 上村 俊貴
白雪姫(この章からが本編です)
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第2節「座学(1)」

誤字脱字含めいろいろ手直ししました。(2019年4月10日10時30分)


追記(2019年4月17日11時00分)

ツイッター等で読みにくい、というご指摘をいただきましたので、一行おきに変更しました。

内容は変えておりません。

「それで、まずは何から始めるんだ、師匠」


 翌朝、朝食を終えた満人は、再び床からせり出してきた椅子に腰掛けていた。


「その前に、何か言うことがあるんじゃないかな?」


「?」


 そう言って少しむっとしているステイシーだが、満人にはなんのことだかわからない。


「君には、戦闘技術の前にマナーを教えなくちゃけないみたいだね」


「何が言いたいんだ?」


 きょとんとしている満人を見て、ステイシーはやれやれとため息をつく。


「ご飯をごちそうしてもらったら、何か言うことがあるでしょ?」


「ああ、そういうことか」


 ここまで言われれば、どうやらごちそうさまを言っていないことに対して怒っているのだと、流石の満人でも気がついた。


「ごちそうさま、美味しかったよ」


 一人暮らしが長かったせいか、いつぶりかもわからないほど久しぶりに、ごちそうさまと言った気がする。


「はい、お粗末さまでした」


 改めて誰かにご飯を作ってもらうという事は、なかなか良いことなんだなあ、などど感慨に浸っている満人を横目に、満人がごちそうさまを言った事に満足した様子のステイシーは、先ほど満人の質問に答え始める。


「具体的に何をするかといえばね、これだよ、えいっ」


 満人から少し離れたところに立つステイシーは、昨日更衣室兼衣装部屋を出した時と同じように自分の上方に手を伸ばすと、虚空に手を突っ込み何かを引きずり下ろす。


「さっきといい今といい、もうちょっと静かに取り出せないのか……。それでこれは?」


 エドマンドは再び轟音とともに着地したそれを、いちいちうるさい取り出し方に文句を言いつつもしげしげと見る。


「知らないの?」


 白っぽい石とボロ布を手に持って、脚の付いた黒くて大きな板の前に立つステイシーは、意外そうにエドマンドの方を見る。


「ああ、何だその板は」


「これは、こうやって使うんだよ」


 ステイシーは手に持っていた白っぽい石を使い、黒い板こすりつける。すると石がこすりつけられた部分が白くなり、その軌跡が文字を描いていく。見た目はずいぶんとお粗末なものだが、どうやら黒板に近いものらしい。


「おお!」


「そして、この布でこすれば――」


 そう言ってステイシーは、ボロ布で文字のこすり始める。するとそこに書かれていた白い文字がみるみる消えていった。見た目に割にはっきりかける上にしっかり消える黒板のようなものに、素直に感心してしまう。


「おお!」


「ね? すごいでしょう?」


 満人が素直に感心しているのを見て、ステイシーは自慢げに胸を張る。


「でも、これが俺の修行と何の関係があるんだ?」


「これはね、人間の教育機関で使われてる道具で今は黒板とかって呼ばれてるみたい。君は気が付かなかっただろうけど、誰でも使えるように魔法は一切使われてないんだよ?」


 どうやら本当にこれは、こちらの世界の黒板らしかった。


「へー、どこの人間も考えることは同じなんだな」


「ん? どこの人間も? 何を言ってるの?」


「いや、気にしないでくれ」


「そう? って黒板のことはどうでもいいんだよ。それじゃあ始めるよ?」


 ステイシー満人の発言に引っかかりを覚えたようだったが、幸い追及されること無かった。


「何を?」


「さっき教育機関で使われてるって言ったでしょ? 勉強だよ、べ・ん・きょ・う!」


「座学からスタートか……」


「こら、嫌そうな顔しない! 知識が無ければ勝てる敵にも勝てないんだからね」


 早く戦ってみたい、という思いもあったが確かにステイシーが言うことにも一理ある。


 それに、満人は勉強が好きではないが、少々自信はあった。


「へーい」


「もう、真面目にやらないとおしおきしちゃうよ?」


 ステイシーが笑顔で凄む。


「いや、はいっ、本当すみませんでした!」


 現状ステイシーを捕捉することすらできない満人にとって、彼女のおしおきは恐怖でしかない。今まで見てきたステイシーの性格を考えると、大して厳しいおしおきではない気がするが、逆らわない越したことはないだろう。


「うんうん、わかればいいんだよ」


「それで、何から教えていただけるんでしょうか!」


「いや、そこまでかしこまらなくてもいいけど……。そうだね――」


 ステイシーが黒板に文字を書き始め、満人はエドマンドとしては人生初の授業を受けたのだった。



「はあー、まさか君が読み書きもできないとは……」


 ステイシーは椅子の前にせり出してきたテーブルに突っ伏しながら大きなため息をつく。


「ごめん……」


 もちろん、満人が読み書きをできない、ということは流石にありえない。現代日本に生まれ育った人なら、たとえホームレスでも新聞が読めるほど日本の識字率は世界的に見て高い水準にあるのだ。その上、大学受験を経た大学生ならば、それこそ学術書の類以外はたいてい読みこなせる。


 ではなぜ満人は文字が読めないのか。それは至極単純な理由である。


 日本語ではないからだ。


 前日にステイシーからマニュアルを借りたときは、メニュー画面のログを使ってごまかしたのだが、今回はそうもいかなかった。


「いや、君は悪くないし別に読み書きできないのは珍しいことじゃないんだけど、冒険者で読み書きできない人には会ったこと無かったからね。でもそれじゃあ君、ダンジョン内の看板は読めていなかったってことなの?」


「あー、あのなんか書いてあった板か? もちろん読めてなかった」


 凝った仕様だった『リバース・デーモン』では、ゲーム内の看板等は日本語ではない文字が使われており、読むことができないようになっていた。ちなみに、第一のダンジョンをクリアした後に発生する文字習得イベントを終えると、日本語に変換されるようになるのだが、初回で死に続けていた満人がそんなことを知るはずもない。


「だから『魔獣大量発生につき侵入禁止』って看板を入り口に出しておいた日も君だけは入ってきたわけか……」


「あのやたら魔獣が多くて一歩入った瞬間にやられた日か。なんかいつもない看板が入り口にあるなとは思ってたが、まさかそんな内容が書いてあったとはな」


「なんかいつもない看板が入り口にあるなとは思ってた、じゃないよまったく。いちいち救助するこっちの身にもなってよね。とにかく、早急に読み書きを覚えること! いいね?」


「おう」


 その後、満人はステイシーのスパルタ教育のもと、驚くべきことに一週間で読み書きを習得したのだった。



「さて、ようやく君が読み書きを覚えてくれたから今日から本格的な冒険者として必要な知識の授業を始めるよ」


「おねがいします」


 いよいよ始まる冒険者向けの授業に満人は気合を入れる。


「まず、ダンジョンについてだけど、エドはどのくらいのことを知っているのかな?」


 最初に一方的に宣言して以来、ステイシーは満人、もといエドマンドをエドと呼ぶ。


 外見はエドマンド(ゲーム開始時に自分でデザインした)であり、いつ帰れるかもわからない以上、いい加減今の自分はエドマンドだと割り切った方が楽だろう、と考えた満人、もといエドマンドは、ステイシーの質問に答えることにした。


「詳しいことは何も。ただここのダンジョンが最初で、ここを含めて4つあるってことしか知らないな」


 エドマンドは、チュートリアルで得た知識で

わかる範囲のことを素直に答える。


「なるほどね、とりあえず、その知識は間違っていないから安心していいよ。そうだね~、どこから話せばいいかなあ……」


 ステイシーは首を傾げながら黒板に向かうと、ああでもないこうでもないとぶつぶつ言いながら何かの絵を書いていく。


 エドマンドの知識で推測する限り、黒板の絵はこの世界の地図か何かかもしれない。


「いいかい? これはこの世界の地図なんだけど、わかるかな?」


 わかるか、と問われても、正しいものを知らないエドマンドには、判断のしようがなかった。


「そうだよね、文字が読めなかったのに、地図を見たことがあるなんてことは無いよね」


 困り顔のエドマンドを見て、ステイシーは一人うんうんと頷く。


「正しい地図は後で買ってきて見せてあげるから、今はこれで我慢してね。とりあえず話を進めると、今私達がいる場所がここ」


 ステイシーは、黒板一面に書かれた地図の一番右端を指し示す。


 そこには確かに、こちらの世界の文字で「幼子の遊び場」と書いてあった。


「ずいぶんと端なんだな」


「そうだね、まあダンジョン四つと魔王城がわかりやすい様に拡大して書いたから、この地図の右端よりさらに右側もあるし、人間が主に住んでるのはそっちなんだけど」


「なるほどな、じゃあこの地図に範囲以外には何があるんだ?」


「そうだねえ……、人間の町や国は、ほとんどこの地図の外側かな。後は、これ以外のダンジョンがいくつかあるくらいだね」


「これ以外のダンジョン? ダンジョンはこの四つだけじゃないのか?」


 少なくとも、エドマンドが今知る限り、ダンジョンはこの四つしかないはずだ。


「確かに、魔王城に行くために乗り越えなければならないダンジョンはこの四つだから、主なダンジョンはこの四つってことになるんだけど、それ以外にはダンジョンがない、ってわけでもないんだよ」


「と、いうと?」


「例えば、そうだね、俗に森林系と言われる「エルフの森」「ウェアウルフの森」「ヴァンパイアの森」。洞窟系と言われる「ゴブリンの洞窟」「蛮神の祠」「邪神の巣窟」。他にもたくさんあるし、難易度もいろいろだね」


「「エルフの森」? どこかで……」


 ステイシーが説明してくれた中で、唯一「エルフの森」という名前に、エドマンドは見覚えがあった。


 それもあちらにいた頃にゲームで見た、などではなくつい最近見た覚えがあったのだ。


「エド? どうしたの?」


「え? あ、いや、なんでもない」


 考えこんでいたエドマンドは、ステイシーに顔を覗き込まれ我に返った。


「そう? ならいいけど。それで、続けていいかな?」


「ああ、頼む」


 結局エドマンドは「エルフの森」という名前をどこで見たのか思い出せなかったが、今は一旦考えないことにした。


「それで、さっきも言った通り、魔王城に行くために越えなければならないダンジョンはこの四つなんだけど、この四つにはそれぞれ主がいてね」


 先程の地図が書かれた黒板を叩きながら、ステイシーは話し始める。


「主? ステイシーみたいなやつが他にもいるのか?」


「ううん、私は管理人だからね。主って言うのは、一番奥にいるボスのこと」


「ボスって、もしかしてここにもいるのか?」


「そりゃいるよ。この子」


 そう言うと、ステイシーはなんでもないことのように虚空に手を突っ込んでワンドを取り出し、一振りする。


 地面に魔法陣が浮かび、エドマンド達がいる空間が光りに包まれた後、エドマンドの目の前に、仁王立ちする牛頭の怪物が現れた。


「うわっ、なんだよこいつ」


「こいつとは失礼だね、こんなに可愛いのに、ねー?」


「もー?」


 牛頭の怪物がステイシーの可愛らしい動きに合せて体を傾ける、という非常にシュール事態に、エドマンドは呆然としてしまう。


「よーし、よしよし、いい子だねー」


「もー♪」


 呆然としているエドマンドのよそに、ステイシーは牛頭の怪物の肩に乗り、頭の撫でて戯れている。


「おーい、エドー? だいじょーぶ?」


「あ、ああ、大丈夫だ。大丈夫だからその子?をしまってくれないか?」


 実際のところは全然大丈夫でもなんでもないエドマンドだったが、どうにか平静を保ち、ステイシーに言葉を返す。


「しょうがないなー。それっ」


 ステイシーが再びワンドを一振りすると、牛頭の怪物は、静かに地面へと吸い込まれていった。


「あの子はミノタウロスのミノ君。ここのボス、ってやつだね」


 牛頭の怪物、もといミノタウロスのミノ君が消えたことで地面へと降り立ったステイシーが、今更ながら説明した。


「そ、そうなのか……」


「基本的には、最後まで辿り着いた冒険者が、ミノ君に一定のダメージを与えると、ミノ君が倒れる演技をしながら地面に、消えていくの。そして、その時ミノ君が置いていくのがこれ」


 そう言ってステイシーはエドマンドの前に手を出す。


 小柄なステイシーらしいエドマンドものより一回り小さい手の上には、さらにステイシーの手のひらより小さな角のようなものがあった。


「これは?」


「これは「ミノタウロスの幼角」って言ってね、これを触媒にして召喚術を行うと、ミノタウロスの子供が召喚できるから、そのミノタウロスを仲間にすることもできたりするんだけど、それとは別の使われ方をすることの方がが多いかな」


「他にはどんな用途があるんだ?」


「用途っていうか、普通は使わないんだよね、これ」


「使わない?」


「そう、使わない。これは触媒にしてミノタウロスの子供を召喚すると消えちゃうの。もちろん、召喚する人もいるけど、育てるのが大変だからあんまり召喚する人はいないし、特別なアイテムだから譲渡することもできない。その代わり、このアイテムは証明になるの」


「証明? なんの?」


「第一のダンジョン「幼子の遊び場」をクリアしたっていう証明だよ。このアイテムはここでしか入手できないからね」


「そんなことを証明してどうするんだよ」


 第一のダンジョンをクリアしたことが証明できると、なんの役に立つというのか。


「このアイテムのかざすと、第二のダンジョン「冒険者の修行場」の入り口を開けることができるんだよ」


「なるほどな、だから順番にクリアしていかないといけないってことか」


「そういうこと。それ以降も同じように、第二のダンジョンの主を倒した時に手に入るアイテムをかざすと第三のダンジョンの入り口が開くって仕組みになってるからね」


「じゃあ、兎にも角にも、ここのクリアしないことには始まらない、ってことか」


「そういうことだね」


 ステイシーは黒板に向かうと、布でこすり地図を消し始めたが、途中で面倒になったのか、先程出してそのままにしていたワンドを一振りし、黒板上のすべてを消した。


「じゃあ次にいくけど、その前に何か質問はあるかな?」


 再びこちらに向き直ったステイシーに、エドマンドは先程から気になっていた事を尋ねることにした。


「ダンジョンの基本的なシステムついての説明はよくわかったんだが、そうなってくると、ステイシーは何者なんだ? 管理人とか言ってたが、さっきの説明にも管理人ってのは出てこなかったし、ワンド一振りでボス呼び出すし」


「そういえば、管理人については特に話してなかったね」


 そう言うとステイシーは、黒板に四つの棒人間を描いた。


「四つのダンジョンにはね、それぞれに私みたいな管理人がいるの」


「全部にか?」


「うん、全部に」


 ステイシーは棒人間それぞれの上に、数字を振り、その上で別々の文字を書いていく。


「まず一人目が私、ステイシー=マレット。得意分野は魔法で特に回復が得意。このダンジョンで死人が出ていないのは、ただ難易度が低いってだけじゃなくて、私のおかげでもあるんだよ。死んでさえいなければ大抵の怪我は治せるからね。二人目は、アルセリア=ティッチマーシュ。得意分野は魔法で特に呪いが得意。三人目はベネット=ヘヴィサイド。得意分野は近接格闘で特に剣術が得意。四人目がアナスタシオス=リンドリー。得意分野は戦闘指揮で特に小隊運用が得意。ざっとこんな感じかな」


「なるほどな。それで、管理人がいるのはわかったんだが、何をするのが仕事なんだ? みんながみんなステイシーが俺の指導をしてるみたく、冒険者の指導をしてるってわけでもないんだろう?」


「まあ、そうだね。基本的には今の私みたいに、付きっきりで教えるってよりは、先輩冒険者のフリをしてアドバイスしたりする程度かな。それ以外の仕事もあるしね」


「それ以外の仕事?」


「そう、それ以外の仕事。例えばエドみたいにダンジョン内でやられた冒険者を入り口まで運んだり、魔物を配置したり」


「俺がやられる度に外に運んでたから、俺がいなければ特に仕事が無いって言ってたのか」


「まあ、そういうことになるね。魔物の配置も仕事としてあるにはあるけど、こんな感じで一瞬で終わるから」


 言葉とともに振られたステイシーのワンドから光が溢れ、収まった時には決して狭くはないこの部屋を埋め尽くさんばかりの魔物が現れていた。


「なっ!」


 エドマンドは思わず身構えるが、一向に襲ってくる気配がない。


「そんなに身構えなくても大丈夫だよ〜。ほらみんな、行っておいで!」


 ステイシーの言葉に反応した魔物たちは、それぞれいつの間にやら壁に開いていた通路を通って消えていった。


「あいつらは、どこに行ったんだ?」


 今日何度目かわからない様な理解を超えた出来事に、驚き半分呆れ半分といった様子でエドマンドはステイシーに尋ねる。


「それぞれの持ち場だね。今いる子がやられたらすぐに入っていけるように近くの壁の中で待機してるんだよ」


 そんな、バイトのシフトみたいな……、と思ったエドマンドだが、通じないだろうから黙っておくことにした。


「これで魔物の配置は終わり。手動でやってもこの程度の手間だし、自動化もできるからいつもはそっちで済ませちゃうの。だからエドがいないならやることは無いってわけ」


「管理人って意外と暇なんだな」


「まあね。君がいなければ、だけど?」


 エドマンドの嫌味とも取れる発言に、ステイシーはいたずらっぽく返す。


「いや、それは悪かったけど」


「別にいいけどね。エドがやられてるの見るの好きだったし」


「それはひどいな……」


「いいじゃん、毎回回復して入り口まで運んであげてたんだからさ」


 エドマンドとしては、そこを突かれると何も言い返せない。


 黙るしかななくなったエドマンドを見て満足したのか、ステイシーは次の質問を促した。


「それはそれとして、これ以外になにか質問は?」


「そうだな……、いや、今のところはもうないかな」


「りょーかい。じゃあ次の話に……」


 ステイシーが黒板に向き、話を再開させようとしたとき、どこからともなくお腹の音がした。


「…………〜〜〜っっ!?」


 自分のものではないことがわかっているエドマンドがステイシーに目を向けると、案の定耳まで真っ赤になり、うずくまってお腹を抑えているステイシーの姿があった。


「お腹、空いたのか?」


「……っっ。いや、べ、別に大丈夫だよ? ホントだよ?」


 今までどこか超然とした雰囲気を纏っていたステイシーだったが、お腹の音を恥ずかしがっている今の姿には、見た目にふさわしい微笑ましさがある。


「昼ご飯にするか?」


「別に私は大丈夫だよ? でも? でも、エドがお腹空いたって言うなら、昼ごはんにしてもいいけどっ」


「いや、俺はまだだ……」


「エドがどうしてもお腹空いたって言うなら、昼ごはんにしてもいいけどっっ!」


(うわー、これめんどくさいやつだー)


 エドマンドににじり寄りながら、繰り返すステイシーは、断固として自分が空腹であることを認める気はないらしい。


「ステイシー、腹が減ったから昼ごはんにしないか?」


 観念して昼食を提案したエドマンドに、ステイシーはぱっと顔を輝かせるが、慌てて取り繕うと、わざとらしくやれやれ、といった雰囲気を醸し出す。


「ふ、ふーん、エドがそう言うなら昼ごはんにしようか?」


「ああ、頼む」


 こうしてエドマンドとステイシーは昼食を食べることにしたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

今回から3回分(3日分?)は、タイトル通りステイシーによる座学がメインの話です。

楽しんでいただけていれば良いのですが……。

重ねてになりますが、今回も読んでい頂いてありがとうございました。

明日も読んで頂けるとうれしいです。


追記(2019年4月10日10時30分)

誤字脱字含めいろいろ手直ししました。

適当な確認のまま投稿してしまいます、すみませんでした。


追記(2019年4月17日11時00分)

ツイッター等で読みにくい、というご指摘をいただきましたので、一行おきに変更しました。

内容は変えておりません。

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