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月の落ちる都から  作者: 秋豊
第一章 「城主と従者 ~冷たい灰の谷 イクステンキュア」
2/10

1-1.退屈な城主

 冷たい灰の静かに降る谷。

そこに残された廃城に住む主は、今日もただ過ぎる時間に退屈していた。

そんな時はいつも、従者に難題を与えては、奮闘する姿を見て悦に浸るのだ。


「あぁー、相変わらず暇……書庫の本もあらかた読み倒しちゃったし……

 そうだ、エルドラー!エルドラー!」


すると渋々とした表情で従者は現れた。


「はいはい、私は相変わらず忙しいで御座いますよ、ジルエール様」

「エルドラ、何かおもしろいもの出して! もしくは何か本貰ってきて!」


 この廃城に住む主、ジルエールと従者エルドラは、

数年前からこの城に住んでいる。それ以前については記憶が無い。

住むというよりは囚われの身のようなもので、

正門の扉は灰が降り積もり、窓は全て埋められてしまっていた。

始めこそ外へ出ようと尽力したが、この地に降る灰のおかげで

魔力は僅かしか生まれず、遂に諦めることとなり、

それ以降、外に出るという発想もなくなってしまった。

 しかし、いかに囚われとはいえ、娯楽は欲しいもので、

エルドラはジルエールの戯れに付き合う事にした。


「お暇、ですからね。

 ではここで恥ずかしながら、ジルエール様のご要望にお応えして……

 私が先日、書庫の魔導書から見出した<魔術>を、披露させて頂きましょう」

「お? いいねぇ。いつもは乗り気じゃないのに」

「ええ、正直なところ、意に介しませんが……

 まぁいいでしょう。では特とご覧下さい。これが……


 ―――<世界中の片鱗>!」


エルドラが精神を集中させたかと思えばどうだろう、

辺り一面に魔力のうねりが生まれ、

それは次第に加速し、肥大し、空間が捻じ曲がっていく!


「すごい……すごいぞ、エルドラ!やれば出来るじゃないか!」

「はぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」


気合の入った雄叫びを上げると、うねりは一点に集中し

そこから眩い光が溢れたかと思えば…



   ズシャアァア!!



ジルエールには鈍い音が聞こえ、光が収まるとそこには、


―――1人の、喚ばれた者が、血に塗れた姿で立っていた。

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